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リリーシェ王国・婚約編
伝えたかったこと
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「二人とも、大丈夫だった?」
「うん。助かったよ」
「ありがとうね」
ドルードが見えなくなるくらい遠くに行って、私もアリアもほっと一安心。パーティ会場で話し込むのもな、ということで私達はバルコニーの方に出ることになった。
「うーん涼しい」
「中は熱気がこもっていたものね」
確かに涼しい。目を瞑ると吹き抜けていく夜風を感じた。
「そういえばなんであんなのに絡まれてたの……」
いつのまにか隣に立っていたトールは呆れ顔でそう言ってくる。
「あはは…… 元々婚約者がいたときからなのよ。あそこまで大っぴらにじゃなかったけれど、やけに話しかけてきてたの。ね、アリア」
「そうそう、前からよくティアに話しかけてたよね。やんわりティアが注意しても近づいてきてたっけ」
「確かに見たことがあったような気がする。随分としつこいやつなんだね」
「そうなのよね……」
肩を落とすのを見てトールは可哀想に、と言って肩をポンポンと叩いてくる。
「あ! そうだ、お二人さん。私、飲み物取ってくるね。ちょっとしたら戻ってくるから!」
「え?」
「ティア。話すこと、あるんじゃないの?」
アリアはそう耳元で囁いてから、じゃあ取ってくる、と駆けていってしまった。
どうやら気を遣われたらしい。
「……ねぇ、トール」
もっとしっかりと話そうと思っていたのに、喉から出てきたのは、自分でも驚くほどに小さくてか細い声。
それでも私達以外に誰もいないバルコニーでは十分に彼に聞こえたらしい。目を細めて、こちらに顔を向けてくれた。
「どうしたの?」
「……好き。トールのことが、好き、なの。たぶん、ずっと前から。……婚約者がいなくなって、いっぱい考えて、そうだって、思ったの」
夜風がヒュ、と吹いて髪を揺らす。寒いはずなのに、やけに体が火照って暑い。意図していないのに指先がカタカタと小刻みに震えている。……言えた、けど。ここからどうすればいいんだろう。恋愛経験がゼロで、恋人とかそういうアレコレは小説で読んでちょっと人並みに知っている程度。だから、考えても考えても頭の中がぐちゃぐちゃになっていくばかり。
あぁ、どうしよう。彼の方も向けなくなって、立ちんぼになって、俯いてしまう。
「ありがとう。とっても、とっても嬉しい」
顔、上げてよ、と言われて恐る恐る首を上に動かす。
「ふふ、顔真っ赤」
「……トールの意地悪」
頬を少し膨らませて精一杯不満を示すものの、クククッと喉を鳴らして笑うのを彼は止めない。
「なんで笑うの……」
「いや、ね。だって、フィティアがそこまで慌ててたり焦ってたりするのなんてあんまり見ないから」
あはは、と目に涙を浮かばせるほどにひとしきり笑ってから、彼は私の頭を撫でる。髪が崩れないようにか、だいぶゆるゆると。
「じゃあ、改めて。フィティア・ヴィアテール公爵令嬢、僕と結婚を前提に婚約してください」
「喜んで」
ふふふ、と顔を見合わせて破顔する。
「嬉しいなぁ」
「これから、よろしくね」
「うん。助かったよ」
「ありがとうね」
ドルードが見えなくなるくらい遠くに行って、私もアリアもほっと一安心。パーティ会場で話し込むのもな、ということで私達はバルコニーの方に出ることになった。
「うーん涼しい」
「中は熱気がこもっていたものね」
確かに涼しい。目を瞑ると吹き抜けていく夜風を感じた。
「そういえばなんであんなのに絡まれてたの……」
いつのまにか隣に立っていたトールは呆れ顔でそう言ってくる。
「あはは…… 元々婚約者がいたときからなのよ。あそこまで大っぴらにじゃなかったけれど、やけに話しかけてきてたの。ね、アリア」
「そうそう、前からよくティアに話しかけてたよね。やんわりティアが注意しても近づいてきてたっけ」
「確かに見たことがあったような気がする。随分としつこいやつなんだね」
「そうなのよね……」
肩を落とすのを見てトールは可哀想に、と言って肩をポンポンと叩いてくる。
「あ! そうだ、お二人さん。私、飲み物取ってくるね。ちょっとしたら戻ってくるから!」
「え?」
「ティア。話すこと、あるんじゃないの?」
アリアはそう耳元で囁いてから、じゃあ取ってくる、と駆けていってしまった。
どうやら気を遣われたらしい。
「……ねぇ、トール」
もっとしっかりと話そうと思っていたのに、喉から出てきたのは、自分でも驚くほどに小さくてか細い声。
それでも私達以外に誰もいないバルコニーでは十分に彼に聞こえたらしい。目を細めて、こちらに顔を向けてくれた。
「どうしたの?」
「……好き。トールのことが、好き、なの。たぶん、ずっと前から。……婚約者がいなくなって、いっぱい考えて、そうだって、思ったの」
夜風がヒュ、と吹いて髪を揺らす。寒いはずなのに、やけに体が火照って暑い。意図していないのに指先がカタカタと小刻みに震えている。……言えた、けど。ここからどうすればいいんだろう。恋愛経験がゼロで、恋人とかそういうアレコレは小説で読んでちょっと人並みに知っている程度。だから、考えても考えても頭の中がぐちゃぐちゃになっていくばかり。
あぁ、どうしよう。彼の方も向けなくなって、立ちんぼになって、俯いてしまう。
「ありがとう。とっても、とっても嬉しい」
顔、上げてよ、と言われて恐る恐る首を上に動かす。
「ふふ、顔真っ赤」
「……トールの意地悪」
頬を少し膨らませて精一杯不満を示すものの、クククッと喉を鳴らして笑うのを彼は止めない。
「なんで笑うの……」
「いや、ね。だって、フィティアがそこまで慌ててたり焦ってたりするのなんてあんまり見ないから」
あはは、と目に涙を浮かばせるほどにひとしきり笑ってから、彼は私の頭を撫でる。髪が崩れないようにか、だいぶゆるゆると。
「じゃあ、改めて。フィティア・ヴィアテール公爵令嬢、僕と結婚を前提に婚約してください」
「喜んで」
ふふふ、と顔を見合わせて破顔する。
「嬉しいなぁ」
「これから、よろしくね」
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