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リリーシェ王国・婚約編
これから
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「わー豪華」
隣でアリアが気の抜けた声でそう呟き、目を丸くしている。
まぁ、それもそのはず。
金細工の施された馬車本体、その中心に描かれたフェルシアの印章である竜の瞳には全属性の魔石が嵌められている。それも、そんなのが3台。一番前にあるのが一番豪華で比較的小さく、後ろの2台が割と大きめで少し簡素な作りだが、それでも公爵位程度の貴族くらいならば載せられるレベルのものだ。大方、一番前が私達で、後の2つが使用人や騎士、あとは荷物のためといったところだろうが、いかんせん豪華だ。ここまでのは私でも今まで見たことがない。……さすがは大国。リリーシェもフェルシアに引けを取らない程度だが、海沿いにあり交易が盛んなフェルシアはやはり裕福な国家なのだろう。うちは魔法で他の国と交渉したり戦ったりしてきた国家なのでそこまで贅沢はできないから、やはりここまで贅を尽くしたものを見ると驚かされる。
「トール様、フィティア様、アリア様。こちらにお乗りください」
「ありがとう。……行こうか、二人共」
手招きされて、歩いていくトールの後ろに私達は付き従い、そのまま一番前の馬車に乗った。
「…………え、トール。ちょっと待って。ティアは分かるんだけど、私は同じ馬車でいいの!?」
「もちろん。僕がそれだけ君を優先していて、後ろ盾になっているっていうアピールにもなるしね。それに、どっちにしてももう一人載せなきゃなんないんだよ。婚約者とはいえども、年頃の男女を二人で馬車に密室でっていうのは人聞きが悪いからね。それなら気兼ねなく話せるアリアの方が僕らにとっても助かるから、安心して」
そうトールにフォローされるものの、アリアは周りをキョロキョロと見回して不安そうに落ち着きなくソワソワしている。
「ふふっ」
「あ、ちょっとー! 今笑ったでしょ!」
「そんなことないわよ」
つい零れた笑みを目敏く捉えたアリアは私をポカポカと膨れ顔で軽く叩く。
「ま、向こうに行ったらすぐアリアも慣れるよ。フィティアと僕の指名でお付きの専属魔術師にゆくゆくはなって貰う予定だから、これからはしょっちゅう一緒に乗ることになると思うし」
「え、それ本当? 慣れる気しないんだけど……」
そう苦い顔を浮かべるのを見て、私とトールはつい顔を見合わせてまた笑ってしまう。
……あぁ、楽しいな。昔はこんなに幸せになれるだなんて、思いもしなかった。自分が本当に好きな人と結婚して、大切な友達が隣にいて。夢なんじゃないかと思うくらいだ。
そう考えると少し不安がよぎって、すん、と黙り込んでしまう。
「フィティア、どうかした?」
「何かあったの? 急に黙り込んで……」
「……あ、ううん、まるで夢みたいだなって。驚くほど幸せだから、つい、ね」
そう、つい本音を零すと、二人共が意外そうに目を瞬かせた。
「何言ってるの。これからもっと幸せになるんでしょー?」
「そうだよ。夢なんかじゃないし、これからも僕らはずっと一緒なんだから。むしろこれからが本番だからね?」
これから。ずっと一緒。温かい、優しい言葉で、心が温かくなる。
「うん、たしかにそうね。ずっと一緒なんだから。これからが楽しみ」
「だね」
「ね、楽しみ」
希望に満ちているに違いないこれからの未来に思いを馳せて、私達は顔を見合わせて微笑んだ。
隣でアリアが気の抜けた声でそう呟き、目を丸くしている。
まぁ、それもそのはず。
金細工の施された馬車本体、その中心に描かれたフェルシアの印章である竜の瞳には全属性の魔石が嵌められている。それも、そんなのが3台。一番前にあるのが一番豪華で比較的小さく、後ろの2台が割と大きめで少し簡素な作りだが、それでも公爵位程度の貴族くらいならば載せられるレベルのものだ。大方、一番前が私達で、後の2つが使用人や騎士、あとは荷物のためといったところだろうが、いかんせん豪華だ。ここまでのは私でも今まで見たことがない。……さすがは大国。リリーシェもフェルシアに引けを取らない程度だが、海沿いにあり交易が盛んなフェルシアはやはり裕福な国家なのだろう。うちは魔法で他の国と交渉したり戦ったりしてきた国家なのでそこまで贅沢はできないから、やはりここまで贅を尽くしたものを見ると驚かされる。
「トール様、フィティア様、アリア様。こちらにお乗りください」
「ありがとう。……行こうか、二人共」
手招きされて、歩いていくトールの後ろに私達は付き従い、そのまま一番前の馬車に乗った。
「…………え、トール。ちょっと待って。ティアは分かるんだけど、私は同じ馬車でいいの!?」
「もちろん。僕がそれだけ君を優先していて、後ろ盾になっているっていうアピールにもなるしね。それに、どっちにしてももう一人載せなきゃなんないんだよ。婚約者とはいえども、年頃の男女を二人で馬車に密室でっていうのは人聞きが悪いからね。それなら気兼ねなく話せるアリアの方が僕らにとっても助かるから、安心して」
そうトールにフォローされるものの、アリアは周りをキョロキョロと見回して不安そうに落ち着きなくソワソワしている。
「ふふっ」
「あ、ちょっとー! 今笑ったでしょ!」
「そんなことないわよ」
つい零れた笑みを目敏く捉えたアリアは私をポカポカと膨れ顔で軽く叩く。
「ま、向こうに行ったらすぐアリアも慣れるよ。フィティアと僕の指名でお付きの専属魔術師にゆくゆくはなって貰う予定だから、これからはしょっちゅう一緒に乗ることになると思うし」
「え、それ本当? 慣れる気しないんだけど……」
そう苦い顔を浮かべるのを見て、私とトールはつい顔を見合わせてまた笑ってしまう。
……あぁ、楽しいな。昔はこんなに幸せになれるだなんて、思いもしなかった。自分が本当に好きな人と結婚して、大切な友達が隣にいて。夢なんじゃないかと思うくらいだ。
そう考えると少し不安がよぎって、すん、と黙り込んでしまう。
「フィティア、どうかした?」
「何かあったの? 急に黙り込んで……」
「……あ、ううん、まるで夢みたいだなって。驚くほど幸せだから、つい、ね」
そう、つい本音を零すと、二人共が意外そうに目を瞬かせた。
「何言ってるの。これからもっと幸せになるんでしょー?」
「そうだよ。夢なんかじゃないし、これからも僕らはずっと一緒なんだから。むしろこれからが本番だからね?」
これから。ずっと一緒。温かい、優しい言葉で、心が温かくなる。
「うん、たしかにそうね。ずっと一緒なんだから。これからが楽しみ」
「だね」
「ね、楽しみ」
希望に満ちているに違いないこれからの未来に思いを馳せて、私達は顔を見合わせて微笑んだ。
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