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それが、確か5年前の話。
「マジ恋」はとても主人公死亡率の高いゲキムズ乙女ゲーだったらしい。
例の神様とやらに渡されたのは、そのマジ恋のゲーム攻略本。有志のマジ恋ファンがこれからのプレイヤーのためにとまとめたものらしい。
それによると、私はこの世界の悪役令嬢だったようで、はじまりがあの謎の平原にいたのは、私がこれから入る魔法学園のために素材採集に行っていたからだったみたいだ。神様が困る私を見兼ねて、例の天の声形式で教えてくれた。(なんで令嬢がこんなとこにいたんだよ、と護衛が迎えに来たときに思ったのでそれを知ってとても納得した)
それから数ヶ月、私は学園に入学した。そして、件のヒロイン、リリアナさんとの対面も果たした。私の婚約者であり、神様にリリアナさんと結ばせろとのご指示を受けた相手である王子様とも。
5年制のこの学園の卒業とともに、ストーリーはエンディングを迎え、完結する。度々助言をしてくれる神様によると、ゲームでいうハッピーエンドでそれを迎えられたら私は元の世界に、彼のいる世界に戻れるのだ。
苦しかった日々もあと一日。今日を乗り切れば、終わるのだ。
あと、私と王子の婚約破棄を穏便に終えられさえしたら。
神様の条件としてはこうらしい。
『さすがに死んじゃった魂をそのまま異世界から異世界へ移動させるのは骨が折れるし、ちょっと無理があるから、君が死なずにストーリーをハッピーエンドに持っていってもらわないといけないからね』
初めて聞いたときは、え、それだけ? と思ったものだった。が、現実はそう甘くなかった。わざわざ警告されるだけある。
私はこの世界で、ハッピーエンドの場合、攻略本の中の王子ルートでは全ルートで死に至っているのだ。
処刑、刺し違え、自殺……などとバラエティ豊かに死んでいく。
主人公が穏便に結ばれるためには、王子の婚約者の座が私がいなくなることで空くのが一番自然だからだろう。
主人公に嫌われず、王子にも嫌われず、婚約破棄。とってもとっても難しかった。私に非がないのに婚約破棄なんてしたら、王家の評判が下がってしまう。かといって、私に非があると判断されるには、それこそ処刑級の悪事を仕出かすことが必要。そうなると元も子もない。
一度は八方塞がりで、もう無理かと思った。諦めかけていた。でも、一つだけ抜け道があったのだ。私が死なずに、穏便に、誰も被害を被ることなく婚約破棄する方法が。
「ギルバード様、少し、宜しいでしょうか」
今日は、今は、卒業パーティの真っ最中。ここでなら、国の貴族がたくさん集まったここでなら、私からの婚約破棄を握りつぶされずに公的な事実として受け入れさせることができる。
王家側としては、聖女であるリリアナよりも私の方を婚約者とすることで、うちの公爵家との繋がりをさらに強めておきたいらしい。あくまで元は平民のリリアナは第2候補。
最優先は私なのだ。だから、婚約解消の申し立ての握り潰しなんて簡単に一瞬で行われる。この貴族社会で、伊達に5年過ごしていない。それくらい分かる。
「どうしたんだ? 何か、緊急のことがあったのか?」
「ええ、緊急ですの」
「分かった、聞こう」
「わたくしとの、婚約を破棄してくださいませ」
ざわり、と空気が揺れた。
「マジ恋」はとても主人公死亡率の高いゲキムズ乙女ゲーだったらしい。
例の神様とやらに渡されたのは、そのマジ恋のゲーム攻略本。有志のマジ恋ファンがこれからのプレイヤーのためにとまとめたものらしい。
それによると、私はこの世界の悪役令嬢だったようで、はじまりがあの謎の平原にいたのは、私がこれから入る魔法学園のために素材採集に行っていたからだったみたいだ。神様が困る私を見兼ねて、例の天の声形式で教えてくれた。(なんで令嬢がこんなとこにいたんだよ、と護衛が迎えに来たときに思ったのでそれを知ってとても納得した)
それから数ヶ月、私は学園に入学した。そして、件のヒロイン、リリアナさんとの対面も果たした。私の婚約者であり、神様にリリアナさんと結ばせろとのご指示を受けた相手である王子様とも。
5年制のこの学園の卒業とともに、ストーリーはエンディングを迎え、完結する。度々助言をしてくれる神様によると、ゲームでいうハッピーエンドでそれを迎えられたら私は元の世界に、彼のいる世界に戻れるのだ。
苦しかった日々もあと一日。今日を乗り切れば、終わるのだ。
あと、私と王子の婚約破棄を穏便に終えられさえしたら。
神様の条件としてはこうらしい。
『さすがに死んじゃった魂をそのまま異世界から異世界へ移動させるのは骨が折れるし、ちょっと無理があるから、君が死なずにストーリーをハッピーエンドに持っていってもらわないといけないからね』
初めて聞いたときは、え、それだけ? と思ったものだった。が、現実はそう甘くなかった。わざわざ警告されるだけある。
私はこの世界で、ハッピーエンドの場合、攻略本の中の王子ルートでは全ルートで死に至っているのだ。
処刑、刺し違え、自殺……などとバラエティ豊かに死んでいく。
主人公が穏便に結ばれるためには、王子の婚約者の座が私がいなくなることで空くのが一番自然だからだろう。
主人公に嫌われず、王子にも嫌われず、婚約破棄。とってもとっても難しかった。私に非がないのに婚約破棄なんてしたら、王家の評判が下がってしまう。かといって、私に非があると判断されるには、それこそ処刑級の悪事を仕出かすことが必要。そうなると元も子もない。
一度は八方塞がりで、もう無理かと思った。諦めかけていた。でも、一つだけ抜け道があったのだ。私が死なずに、穏便に、誰も被害を被ることなく婚約破棄する方法が。
「ギルバード様、少し、宜しいでしょうか」
今日は、今は、卒業パーティの真っ最中。ここでなら、国の貴族がたくさん集まったここでなら、私からの婚約破棄を握りつぶされずに公的な事実として受け入れさせることができる。
王家側としては、聖女であるリリアナよりも私の方を婚約者とすることで、うちの公爵家との繋がりをさらに強めておきたいらしい。あくまで元は平民のリリアナは第2候補。
最優先は私なのだ。だから、婚約解消の申し立ての握り潰しなんて簡単に一瞬で行われる。この貴族社会で、伊達に5年過ごしていない。それくらい分かる。
「どうしたんだ? 何か、緊急のことがあったのか?」
「ええ、緊急ですの」
「分かった、聞こう」
「わたくしとの、婚約を破棄してくださいませ」
ざわり、と空気が揺れた。
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