俺が王子で男が嫁で!

萌菜加あん

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第三十一話 受胎の夜

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重ねられた唇の柔らかさに、紫龍が目を見開いた。

「お前っ……何をっ!」

そんな紫龍の抗議の声を、クラウドは再び口づけで塞ぐ。

緩く啄むような感触から、やがてそれは激しさを増して、
紫龍の口腔を犯していく。

愛しい人と交わす口付けの甘さに、
紫龍の理性が溶けていく。

知らず、その腕がクラウドの背に回されると、
クラウドが満足そうに、微笑を浮かべる。

「紫龍……お前、すっげぇ可愛い……」

クラウドが少し掠れた声色で、紫龍の耳元に囁くと、
紫龍は赤面し、下を向いた。

身体が熱い。

身体の中心がひどく熱を帯びて、苦しいのだ。

紫龍の眼差しに涙が滲むと、クラウドが唇でそれを拭った。

「紫龍、苦しい?」

クラウドにそう問われると、紫龍は小さく頷いた。

「俺も苦しいんだ。触って、紫龍」

そういってクラウドは自身の下腹部に紫龍の掌を導いた。
その感覚に紫龍は赤面した。

「お……俺の初めては、お前にしてもらったから、
 今度は俺が、お前を開放してやるっていうか……」

そう言って紫龍が泣きそうな顔をして、クラウドを見つめる。

「だけど……俺は初めてだから、
どうやったらいいか、よくわかんなくて……。
だから、教えてくれないか? 
お前はどうやったら気持ちいいのか」

紫龍を見つめる、クラウドがその瞳を少し細めた。

「お前の中に入りたいんだ。抱きたい、紫龍」

紫龍は目を伏せて、小さく頷いた。

クラウドは紫龍を抱き上げて、
バスルームを出て寝室の寝台に横たえる。

「なんせお前は初めてなんだから、
 ちゃんとここ、ほぐしておかなきゃなな」

そういってクラウドが紫龍の秘所に口づけると、
紫龍がピクリとその身体を震わせた。

「や……やめ……て、クラウド……。
 こんなの恥ずかしい」

羞恥に紫龍が嫌々をするように小さく首を横にふって懇願する。

しかしクラウドは許しはしない。

意地悪く紫龍の花芯に舌先を這わしては、
時折わざと淫らな音を立ててそこを吸ってやる。

「や……やだっ! クラウド……」

高ぶりと羞恥に紫龍が涙を流す。

「そうか? だが、お前のここは悦んでいるようだぞ?
 その証拠にこんなにも俺を求めて愛液を滴らせているのだから」

そういって、クラウドは紫龍の愛液を指で掬って見せる。

紫龍の愛液は、クラウドの指を濡らしてぬめぬめと光を反射させている。
クラウドは赤い舌を覗かせて、その愛液を口に含む。

「ばかっ! お前やめろ」

たまらず、身体を起こしてやめさせようとする紫龍を、
クラウドが組み敷いた。

「やめねぇよ。つうか、やめらんねぇ。
 お前は?」

クラウドは自身の唾液に濡れた中指を、紫龍の秘所に這わせて奥へと進める。

「ひぅっ!」

その感覚に紫龍が小さく悲鳴を上げた。

「エロイな。お前のここ、俺の指を咥えこんでひくひくしてる」

自身の身体に侵入してきた異物のリアル感に、紫龍は瞳を閉じる。

クラウドの指はゆっくりと抽送を繰り返し、
やがて紫龍のその場所を探り当てる。

「いやっ! ダメだ。抜いて、クラウド」

その場所に触れられるや否や、紫龍は電流が走ったかのように
身体を強張らせた。

「なんで? 感じてるんだろう?」

クラウドが不服そうに唇を尖らせる。

「だから、ダメなんだよ。
 初めてなのに、こんなに感じてしまったら、
 俺……排卵してしまうかも……」

熱に浮かされたような、そして少し戸惑った表情をして、
紫龍が呟いた。

「いいじゃねぇか、紫龍。
 排卵しろよ、そして俺の子を孕めよ」

クラウドの瞳に欲情の焔が灯る。

「ばかかっ! しかも今夜は満月じゃねぇか。
 マジでやばいっつうの! 俺は龍の一族で……満月の日に……」

シャレにならないと、紫龍はクラウドを睨みつけるが、
そんな紫龍をクラウドが抱き上げて、バルコニーへと連れて行く。

「こらっ! ばかクラウド! 離せってば。
 お前、何を考えて……」

ちょうどバルコニーの真上を、満月が照らしている。

クラウドはそこに紫龍を下して、柵を握らせる。

「えっ? ちょ……、本当に、お前……何を考えて……」

紫龍がすごい速さで目を瞬かせる。

そんな紫龍を背後から抱きしめて、
その秘所にクラウドが張りつめた自身を宛がう。

「や……やだっ! 熱いっ! クラウド!」

紫龍が小さく首を横に振る。

「俺の子を産んで。紫龍」

ゆっくりと紫龍の中に、クラウドのそれが穿たれていく。
熱く太いものが、自身の膣をこじ開けては侵入してくると、
同時に身体を引き裂かれるかのような痛みが走った。

「痛っ……! 痛いってば……クラウド……」

紫龍の瞳に涙が盛り上がり、
秘所から鮮血が滴り、紫龍の白い太ももを這う。

痛みを堪えるために、柵をきつく握りしめた紫龍の爪には、
白い筋が立っている。

「今、お前の処女膜が破れた。
 お前の初めては、確かに俺がもらったぞ」

静かな声色で、しかしそこには深い満足感と、
紫龍と生涯を共にするという覚悟を滲ませている。

「恋愛っちゅうのは、確かに綺麗ごとだけでは成立しないな。
 お前にとっては初めての行為なのに、優しくしてやれなくてごめん。
 俺もお前を前にして、生憎余裕がなくて、切羽詰まってちまってる」

そういってクラウドは自嘲する。

「人を好きになることも、この行為も、それこそ命懸けだ。
 涙を流し、血を流して、それでようやく一つになれる」

クラウドはそういって、深く紫龍に自身を穿った。
その息が上がる。

「俺は王族に生まれて、ずっとそんな剥き出しの感情に蓋をして生きてきた。
 いずれは親や国が決めた相手と、政略結婚をするのだから、
 そんな感情を持つだけ無駄だと、自身に言い聞かせて、
 ずっと冷めた目で、この行為を見続けてきた。
 情けないが性処理、という以上の感情をもって、この行為をしたことがない」

そういって、クラウドは寂しげに視線を彷徨わせる。
そこには深い孤独が漂う。

「だがな、お前に会って初めて俺は、俺自身の中にある強烈なその剥き出しの感情と
 嫌が応にも向き合わざるを得なかった。
 生まれて初めて人を好きになったんだ」

クラウドがきつく紫龍を抱きしめた。

「好きだっ! 紫龍。愛してる」

低くくぐもった声色で、紫龍に囁いて寄越す。

「だから、拒むな、紫龍。
 痛くても、苦しくても、俺を拒むな」

少し癖のある空色の髪から同じ色の瞳が、
真っすぐに紫龍を捉えて離さない。

月明かりの下で、紫龍は瞳を閉じる。

その視線を恐らくは、初めて出会った日から、
自分がひりつくほどに求めていたことに気づく。

「拒まねぇよ。だから安心しろ。
 てめぇに引き裂かれるなら本望だ。
 もっと煽ってみせろよ、そしてこの俺を食らいつくせばいい」

二人の吐息が絡み合い、やがてのぼりつめ、
白濁の液が、紫龍の中に吐き出される。

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