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46.ウォルフに戻る日
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「ウォルフ……なの?」
ユウラの問いに、
オリビアは寂し気な笑みを浮かべた。
「ああ、そうだ。
やっと気づいたのかよ」
ユウラの鳶色の瞳が驚きに見開かれて、
食い入るようにオリビアを見つめている。
「うそ……。でもだけど声は……」
栗色の肩のあたりで軽くカールした髪も、
透き通るエメラルドの瞳も、
自分のよく知る、ウォルフとは異なる。
しかしこの声は紛れもなくウォルフのものだ。
聞きなれたオリビアのものではない。
「声帯っていうのは、筋肉でできてるんだ。
だから少し鍛えれば、声色を使い分けることは
そう難しいことではない」
オリビアはユウラを自身の部屋に伴い、
人を払った。
◇◇◇
ウォルフは自身を制するために、大きく息を吐くと、
ユウラに向き直った。
「オリビア第一皇女、それが俺の戸籍上の名前だ。
オリビアっていうのは、
もともとは俺の双子の姉に与えられた名前だった」
その瞳が、悲しみに沈む。
「オリビアは18年前に俺たちが生まれた日の夜、
王妃であった俺の母シャルロット諸共、
何者かによって惨殺されたんだ」
ウォルフの言葉にユウラが青ざめ、震えた。
「俺はお前の父であるハルマ様の機転によって、
逃がされて事なきを得たんだけど、
その標的は明らかにレッドロラインの
第一王子として生まれた俺だった」
ユウラの頬に涙が伝う。
「父王は俺を守るために、
密かに死んだ姉オリビアと俺をすり替え、
その養育を母の実家である
アルフォード家に託したんだ」
ウォルフはそういってユウラを抱き寄せた。
「泣かなくていい、ユウラ。
それは悲しい出来事ではあったが、
アルフォードの両親はお前も知っている通り、
有り余る愛情で俺を育ててくれた。
二人が俺の両親であることに変わりはない。
それに俺にはお前がいた。
かけがえのない妹のような存在で、
婚約者のお前がな」
ウォルフは愛おしそうに、ユウラの額に口付けた。
「どうして今まで言ってくれなかったの?」
ユウラが涙に濡れた瞳をウォルフに向けた。
「この恰好を好きな人に
見られたいと思うか?」
ウォルフは少しげんなりとした表情をする。
「だけどそんな大事なこと、
黙っているなんてひどいっ!」
そういって口を尖らせたユウラに、
ウォルフは溜息を吐いた。
「ごめん。お前に黙っていたのは悪かったと思う。
でもできれば俺はお前を関わらせたくなかったんだ。
お前がもし騎士になりたいと言わなければ、
ただのウォルフ・フォン・アルフォードの妻になってくれれば、
オリビアの名前は捨てようと思っていた」
ユウラが目を瞬かせる。
「お前が騎士になってしまったら、
エドガーや他の王族がこぞって
お前を専属騎士にしたがるだろう。
それだけは嫌だったんだ。
だから俺も腹を括った」
ウォルフの瞳がユウラを真っすぐに映し出す。
「ユウラ、俺は全部話したぜ?
お前も腹を括ってくれるか?」
ウォルフの掌がユウラの頬を包んだ。
「俺をオリビアから
ウォルフに戻して欲しいんだ」
ウォルフの頬に涙が伝った。
「俺はウォルフとして生きて、
お前の隣に……立ちたい」
ウォルフがその場に泣き崩れた。
「どうすればいいの?」
ユウラがその胸にそっとウォルフを抱き留めた。
「専属騎士として、スールとして、婚約者として、
この俺に生涯の愛を誓って」
ウォルフは苦し気に言葉を吐き出した。
「私、ユウラ・エルドレッドは
命ある限り、ウォルフ・フォン・アルフォードを
いえ、ウォルフ・レッドロラインを愛することを、誓います」
ユウラはウォルフを真っすぐに見つめて、
静かに言葉を紡いだ。
「ユウラ、服脱いで」
ウォルフの言葉に、ユウラが赤面する。
「は……はあ?」
ユウラが動揺のあまり涙目になる。
「そして俺の服も脱がせて」
ウォルフの闇色の瞳が、
涙に濡れて、ユウラを見つめている。
「後ろを……向いていて」
震える声でそう言うとユウラは、
上着のホックを外していく。
衣擦れの音に、ウォルフ
が目を細めた。
ユウラは生まれたままの姿でウォルフに向き合い、
ウォルフの服を脱がせていく。
◇◇◇
オリビア皇女の部屋の浴室にて、
ウォルフとユウラがジャグジーで睨み合う。
「こっちへ来いと言っている」
ウォルフが半眼になる。
「む……むむむむ無理っ!」
ユウラが真っ赤になりながら、全力で首を横に振る。
「なんなんだよ、お前のその中途半端な覚悟は。
これじゃあ、かえって蛇の生殺しになっちまうじゃねぇか」
ウォルフが盛大に溜息を吐いた。
「お前、俺に生涯の愛を誓ったんじゃねぇのか?」
ウォルフが頬杖をついて、投げやりに言った。
「誓ったけど……それとこれとは……」
ユウラが口ごもる。
「別じゃねぇぞ?
誓ったのならちゃんと態度で示せ」
ウォルフが腕を組んで、ユウラを半眼で見つめる。
「うううっ……」
ユウラは悔し気に唸り、ズズ……ズズっとウォルフのもとに少しずつ近づくと、
「まだるっこしい」
といってウォルフに強引に抱き寄せられた。
素肌の感覚にユウラは戸惑う。
「ウォルフ……あのね……裸……なんですけど」
ユウラは少し泣きの入った顔で、ウォルフに訴えた。
「風呂に入っているんだから当たり前だろうが」
ウォルフがしれっと言う。
「死ぬほど恥ずかしいんですが……」
ユウラが赤面し、下を向く。
「慣れろ!」
ウォルフが少し低い声色で言った。
「ウォルフは平気なの? 恥ずかしくないの?」
ユウラが問うと、ウォルフは遠い目をした。
「お前に女装を見られた後で、
この俺に何を恥ずかしがれと?」
ちょっぴりその眦に涙が浮かぶ。
「ウォルフの女装はすごく綺麗だったし、
全然恥ずかしくないと思う」
ユウラが口を尖らせる。
「だったら俺も言わせてもらうが、お前の裸、すげえ綺麗。
口付けて、触れて、俺だけのものにしてしまいたい」
ウォルフの闇色の瞳に欲情の焔が揺らめく。
ユウラの問いに、
オリビアは寂し気な笑みを浮かべた。
「ああ、そうだ。
やっと気づいたのかよ」
ユウラの鳶色の瞳が驚きに見開かれて、
食い入るようにオリビアを見つめている。
「うそ……。でもだけど声は……」
栗色の肩のあたりで軽くカールした髪も、
透き通るエメラルドの瞳も、
自分のよく知る、ウォルフとは異なる。
しかしこの声は紛れもなくウォルフのものだ。
聞きなれたオリビアのものではない。
「声帯っていうのは、筋肉でできてるんだ。
だから少し鍛えれば、声色を使い分けることは
そう難しいことではない」
オリビアはユウラを自身の部屋に伴い、
人を払った。
◇◇◇
ウォルフは自身を制するために、大きく息を吐くと、
ユウラに向き直った。
「オリビア第一皇女、それが俺の戸籍上の名前だ。
オリビアっていうのは、
もともとは俺の双子の姉に与えられた名前だった」
その瞳が、悲しみに沈む。
「オリビアは18年前に俺たちが生まれた日の夜、
王妃であった俺の母シャルロット諸共、
何者かによって惨殺されたんだ」
ウォルフの言葉にユウラが青ざめ、震えた。
「俺はお前の父であるハルマ様の機転によって、
逃がされて事なきを得たんだけど、
その標的は明らかにレッドロラインの
第一王子として生まれた俺だった」
ユウラの頬に涙が伝う。
「父王は俺を守るために、
密かに死んだ姉オリビアと俺をすり替え、
その養育を母の実家である
アルフォード家に託したんだ」
ウォルフはそういってユウラを抱き寄せた。
「泣かなくていい、ユウラ。
それは悲しい出来事ではあったが、
アルフォードの両親はお前も知っている通り、
有り余る愛情で俺を育ててくれた。
二人が俺の両親であることに変わりはない。
それに俺にはお前がいた。
かけがえのない妹のような存在で、
婚約者のお前がな」
ウォルフは愛おしそうに、ユウラの額に口付けた。
「どうして今まで言ってくれなかったの?」
ユウラが涙に濡れた瞳をウォルフに向けた。
「この恰好を好きな人に
見られたいと思うか?」
ウォルフは少しげんなりとした表情をする。
「だけどそんな大事なこと、
黙っているなんてひどいっ!」
そういって口を尖らせたユウラに、
ウォルフは溜息を吐いた。
「ごめん。お前に黙っていたのは悪かったと思う。
でもできれば俺はお前を関わらせたくなかったんだ。
お前がもし騎士になりたいと言わなければ、
ただのウォルフ・フォン・アルフォードの妻になってくれれば、
オリビアの名前は捨てようと思っていた」
ユウラが目を瞬かせる。
「お前が騎士になってしまったら、
エドガーや他の王族がこぞって
お前を専属騎士にしたがるだろう。
それだけは嫌だったんだ。
だから俺も腹を括った」
ウォルフの瞳がユウラを真っすぐに映し出す。
「ユウラ、俺は全部話したぜ?
お前も腹を括ってくれるか?」
ウォルフの掌がユウラの頬を包んだ。
「俺をオリビアから
ウォルフに戻して欲しいんだ」
ウォルフの頬に涙が伝った。
「俺はウォルフとして生きて、
お前の隣に……立ちたい」
ウォルフがその場に泣き崩れた。
「どうすればいいの?」
ユウラがその胸にそっとウォルフを抱き留めた。
「専属騎士として、スールとして、婚約者として、
この俺に生涯の愛を誓って」
ウォルフは苦し気に言葉を吐き出した。
「私、ユウラ・エルドレッドは
命ある限り、ウォルフ・フォン・アルフォードを
いえ、ウォルフ・レッドロラインを愛することを、誓います」
ユウラはウォルフを真っすぐに見つめて、
静かに言葉を紡いだ。
「ユウラ、服脱いで」
ウォルフの言葉に、ユウラが赤面する。
「は……はあ?」
ユウラが動揺のあまり涙目になる。
「そして俺の服も脱がせて」
ウォルフの闇色の瞳が、
涙に濡れて、ユウラを見つめている。
「後ろを……向いていて」
震える声でそう言うとユウラは、
上着のホックを外していく。
衣擦れの音に、ウォルフ
が目を細めた。
ユウラは生まれたままの姿でウォルフに向き合い、
ウォルフの服を脱がせていく。
◇◇◇
オリビア皇女の部屋の浴室にて、
ウォルフとユウラがジャグジーで睨み合う。
「こっちへ来いと言っている」
ウォルフが半眼になる。
「む……むむむむ無理っ!」
ユウラが真っ赤になりながら、全力で首を横に振る。
「なんなんだよ、お前のその中途半端な覚悟は。
これじゃあ、かえって蛇の生殺しになっちまうじゃねぇか」
ウォルフが盛大に溜息を吐いた。
「お前、俺に生涯の愛を誓ったんじゃねぇのか?」
ウォルフが頬杖をついて、投げやりに言った。
「誓ったけど……それとこれとは……」
ユウラが口ごもる。
「別じゃねぇぞ?
誓ったのならちゃんと態度で示せ」
ウォルフが腕を組んで、ユウラを半眼で見つめる。
「うううっ……」
ユウラは悔し気に唸り、ズズ……ズズっとウォルフのもとに少しずつ近づくと、
「まだるっこしい」
といってウォルフに強引に抱き寄せられた。
素肌の感覚にユウラは戸惑う。
「ウォルフ……あのね……裸……なんですけど」
ユウラは少し泣きの入った顔で、ウォルフに訴えた。
「風呂に入っているんだから当たり前だろうが」
ウォルフがしれっと言う。
「死ぬほど恥ずかしいんですが……」
ユウラが赤面し、下を向く。
「慣れろ!」
ウォルフが少し低い声色で言った。
「ウォルフは平気なの? 恥ずかしくないの?」
ユウラが問うと、ウォルフは遠い目をした。
「お前に女装を見られた後で、
この俺に何を恥ずかしがれと?」
ちょっぴりその眦に涙が浮かぶ。
「ウォルフの女装はすごく綺麗だったし、
全然恥ずかしくないと思う」
ユウラが口を尖らせる。
「だったら俺も言わせてもらうが、お前の裸、すげえ綺麗。
口付けて、触れて、俺だけのものにしてしまいたい」
ウォルフの闇色の瞳に欲情の焔が揺らめく。
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