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第四十六話悪役令嬢はキスを仕込まれる
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ゼノアは戻らない、という言葉にエリオットは少しホッとした。
一緒に過ごすのが同性のセシリアならば、そんなに気を使わなくても済む。
「こちらにいらっしゃらない? セシリアさん」
そう言ってエリオットは天蓋付きのベッドに腰かけ、
その隣をポンポンと手で叩いた。
「嬉しい。エリオットお姉さま」
そういってセシリアが、その隣に腰かけた。
「こちらのほうが楽にお話できてよ」
エリオットがそういうと、寄り添ったセシリアが
その頭をエリオットの肩口にもたせかける。
「兄はいつも留守がちですので、
わたくしはいつもこの館で一人きりの留守番なのですわ。
だけど、エリオットお姉さまがいらしてくれて
わたくし、本当に嬉しいの」
そう言ってセシリアが、エリオットの手にその手を重ねた。
指が絡められるとエリオットが赤面し、下を向いた。
「私もね、国元にとても仲の良い妹がいて、
あなたを見ていると思い出すわ」
そういってエリオットが、優しくセシリアに微笑む。
「ねえ、エリオットお姉さま……。
わたくしエリオットお姉さまにお願いがあるの」
セシリアが熱っぽい視線をエリオットに向ける。
「なあに? セシリアさん」
エリオットがセシリアに向き合うと、
「わたくしのお姉さまになって」
そういってセシリアが、エリオットの胸に顔を埋めた。
「まあ、セシリアさんたら」
エリオットはセシリアをその胸に抱きしめて、
優しく髪を撫でてやる。
「可愛いセシリアさん……」
その髪に優しくキスを落とすと
「お前……胸は最高だな」
今、とても低い、くぐもった囁きが聞こえたような……。
ん? 聞き間違いかしら?
「ど……どうかなさって? セシリアさん」
エリオットが、二三目を瞬かせた。
「いえ、なんでもないの。
それよりも、わたくしのことはセシリアと
呼んでくださいくださらない?
エリオットお姉さまにはわたくしを
本当の妹のように思っていただきたいの」
セシリアが頬を赤らめて、にっこりと笑った。
そして立ち上がると、応接セットのテーブルの上にある
切子の小瓶に手を伸ばした。
小瓶の中には、色とりどりのボンボンが入っている。
「ねえ、エリオットお姉さま
ボンボンはお好き?」
「ええ、好きよ」
「良かった、このボンボンはね、サイファリアの銘菓なのよ。
とっても美味しいの。
是非お召し上がりになって」
そう言ってセシリアは小瓶の中から、
鮮やかな赤色のボンボンを一つ取り出した。
「はい、あ~ん」
そういってエリオットの口元にもっていく。
「まあ、恥ずかしいわ」
そう言いながらエリオットが、躊躇いがちに小さく口を開くと、
唾液に濡れた淫らな桃色の舌が覗く。
その様を見やりながら、悦楽の微笑を浮かべたセシリアが
ボンボンを自分の口へと含んだ。
「まあ、セシリアったら、意地悪なのね」
そういって、エリオットが笑いながら軽く睨むと、
セシリアはエリオットに向き直り、口づける。
「んっんんん……」
いきなりの口付けにエリオットは戸惑う。
軽く唇を啄まれたあとに、
口腔にボンボンが侵入してくる。
ハスカップの酸味と、
加工された砂糖の甘味が、
お互いの唾液と共に口の中に混ざり合う。
「んっ……う……ん」
洋酒の香りとともに、甘やかな吐息が漏れると、
セシリアの舌がボンボンを絡めとる。
お互いに緩やかなリズムを刻みながら、ボンボンと唇を啄む。
その濃厚な口付けに、エリオットは蕩けそうになった。
お互いの唇のやわらかな温もりを、
気が付けば夢中で求めてしまっていた。
「んっ……んっんっん……ぅっふぅ……」
甘やかな吐息だけが、二人きりの夕暮れの部屋に漏れる。
やがてボンボンが溶けると、
ハスカップの洋酒の味が、お互いの口の中に広がった。
程よい甘みと酸味。
それはお互いの初恋にも似た切ない味だった。
「ね、美味しいでしょう?」
口付けの後で、セシリアがエリオットの耳元に囁いた。
セシリアが無垢な笑顔でエリオットを見つめた。
「え? ええ……」
エリオットは赤面する。
身体の芯が熱をもっている。
(こんなのっ……はじめて……)
その熱にエリオットの瞳が潤んだのをみて、
セシリアが満足そうな微笑を浮かべた。
「いいこと? これはわたくしと
エリオットお姉さまの二人きりの秘め事なのよ
決して口外なさらないで」
セシリアはベッドから立ち上がり、
その人差し指でエリオットの唇をなぞった。
エリオットはその感触に甘やかな疼きを覚える。
同時に同性の少女に抱く、その劣情に罪悪感を覚えた。
「そんな……いけないわ。
こんな女同士で、恋人とするようなことを……」
エリオットは戸惑い、口ごもる。
「いいえ、私とお姉さまは秘密の恋人同士なのだわ。
そして今のキスは、恋人同士の誓いなの」
セシリアは夢みるような眼差しをエリオットに向けた。
「わたくしはエリオットお姉さまが好きよ、
お姉さまはわたくしのことをどう思っていて?」
熱に潤んだその瞳が、きらきらと輝いている。
エリオットの中にこの少女を愛しいと思う心が、すでに芽生えていた。
「私もセシリアのことが好きよ。
今日初めて会ったはずなのに。
だぜだか胸がどきどきしてしまって止まらないの」
そういって、エリオットの胸に当てた手を、セシリアが取った。
「嬉しい、エリオットお姉さま。
ねぇ、エリオットお姉さまは、わたくしのどこが好き?」
エリオットには、この少女が輝く金の髪を持つ天使に見えた。
もし彼女に羽が生えていたとしても、
エリオットは不思議に思わなかっただろう。
「そうね、誰よりも清らかで、愛らしい所かしら
穢れを知らぬ聖女のような、崇高な美しさ」
セシリアの表情が変わる。
天使から堕天使へと。
「ふ~ん、そうなんだ。
チ〇ポ生えてっけど、よろしくな!」
一緒に過ごすのが同性のセシリアならば、そんなに気を使わなくても済む。
「こちらにいらっしゃらない? セシリアさん」
そう言ってエリオットは天蓋付きのベッドに腰かけ、
その隣をポンポンと手で叩いた。
「嬉しい。エリオットお姉さま」
そういってセシリアが、その隣に腰かけた。
「こちらのほうが楽にお話できてよ」
エリオットがそういうと、寄り添ったセシリアが
その頭をエリオットの肩口にもたせかける。
「兄はいつも留守がちですので、
わたくしはいつもこの館で一人きりの留守番なのですわ。
だけど、エリオットお姉さまがいらしてくれて
わたくし、本当に嬉しいの」
そう言ってセシリアが、エリオットの手にその手を重ねた。
指が絡められるとエリオットが赤面し、下を向いた。
「私もね、国元にとても仲の良い妹がいて、
あなたを見ていると思い出すわ」
そういってエリオットが、優しくセシリアに微笑む。
「ねえ、エリオットお姉さま……。
わたくしエリオットお姉さまにお願いがあるの」
セシリアが熱っぽい視線をエリオットに向ける。
「なあに? セシリアさん」
エリオットがセシリアに向き合うと、
「わたくしのお姉さまになって」
そういってセシリアが、エリオットの胸に顔を埋めた。
「まあ、セシリアさんたら」
エリオットはセシリアをその胸に抱きしめて、
優しく髪を撫でてやる。
「可愛いセシリアさん……」
その髪に優しくキスを落とすと
「お前……胸は最高だな」
今、とても低い、くぐもった囁きが聞こえたような……。
ん? 聞き間違いかしら?
「ど……どうかなさって? セシリアさん」
エリオットが、二三目を瞬かせた。
「いえ、なんでもないの。
それよりも、わたくしのことはセシリアと
呼んでくださいくださらない?
エリオットお姉さまにはわたくしを
本当の妹のように思っていただきたいの」
セシリアが頬を赤らめて、にっこりと笑った。
そして立ち上がると、応接セットのテーブルの上にある
切子の小瓶に手を伸ばした。
小瓶の中には、色とりどりのボンボンが入っている。
「ねえ、エリオットお姉さま
ボンボンはお好き?」
「ええ、好きよ」
「良かった、このボンボンはね、サイファリアの銘菓なのよ。
とっても美味しいの。
是非お召し上がりになって」
そう言ってセシリアは小瓶の中から、
鮮やかな赤色のボンボンを一つ取り出した。
「はい、あ~ん」
そういってエリオットの口元にもっていく。
「まあ、恥ずかしいわ」
そう言いながらエリオットが、躊躇いがちに小さく口を開くと、
唾液に濡れた淫らな桃色の舌が覗く。
その様を見やりながら、悦楽の微笑を浮かべたセシリアが
ボンボンを自分の口へと含んだ。
「まあ、セシリアったら、意地悪なのね」
そういって、エリオットが笑いながら軽く睨むと、
セシリアはエリオットに向き直り、口づける。
「んっんんん……」
いきなりの口付けにエリオットは戸惑う。
軽く唇を啄まれたあとに、
口腔にボンボンが侵入してくる。
ハスカップの酸味と、
加工された砂糖の甘味が、
お互いの唾液と共に口の中に混ざり合う。
「んっ……う……ん」
洋酒の香りとともに、甘やかな吐息が漏れると、
セシリアの舌がボンボンを絡めとる。
お互いに緩やかなリズムを刻みながら、ボンボンと唇を啄む。
その濃厚な口付けに、エリオットは蕩けそうになった。
お互いの唇のやわらかな温もりを、
気が付けば夢中で求めてしまっていた。
「んっ……んっんっん……ぅっふぅ……」
甘やかな吐息だけが、二人きりの夕暮れの部屋に漏れる。
やがてボンボンが溶けると、
ハスカップの洋酒の味が、お互いの口の中に広がった。
程よい甘みと酸味。
それはお互いの初恋にも似た切ない味だった。
「ね、美味しいでしょう?」
口付けの後で、セシリアがエリオットの耳元に囁いた。
セシリアが無垢な笑顔でエリオットを見つめた。
「え? ええ……」
エリオットは赤面する。
身体の芯が熱をもっている。
(こんなのっ……はじめて……)
その熱にエリオットの瞳が潤んだのをみて、
セシリアが満足そうな微笑を浮かべた。
「いいこと? これはわたくしと
エリオットお姉さまの二人きりの秘め事なのよ
決して口外なさらないで」
セシリアはベッドから立ち上がり、
その人差し指でエリオットの唇をなぞった。
エリオットはその感触に甘やかな疼きを覚える。
同時に同性の少女に抱く、その劣情に罪悪感を覚えた。
「そんな……いけないわ。
こんな女同士で、恋人とするようなことを……」
エリオットは戸惑い、口ごもる。
「いいえ、私とお姉さまは秘密の恋人同士なのだわ。
そして今のキスは、恋人同士の誓いなの」
セシリアは夢みるような眼差しをエリオットに向けた。
「わたくしはエリオットお姉さまが好きよ、
お姉さまはわたくしのことをどう思っていて?」
熱に潤んだその瞳が、きらきらと輝いている。
エリオットの中にこの少女を愛しいと思う心が、すでに芽生えていた。
「私もセシリアのことが好きよ。
今日初めて会ったはずなのに。
だぜだか胸がどきどきしてしまって止まらないの」
そういって、エリオットの胸に当てた手を、セシリアが取った。
「嬉しい、エリオットお姉さま。
ねぇ、エリオットお姉さまは、わたくしのどこが好き?」
エリオットには、この少女が輝く金の髪を持つ天使に見えた。
もし彼女に羽が生えていたとしても、
エリオットは不思議に思わなかっただろう。
「そうね、誰よりも清らかで、愛らしい所かしら
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