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第四十七話悪役令嬢は覇王に告られる。
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「ギィイヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤーーーーーーーーー!!!」
黄昏のサイファリア国の東宮殿に絶叫が響き渡った。
「羽の生えた天使じゃなくて、
チ〇ポの生えた堕天使なんていらないっ!」
エリオットが絶叫する。
「黙れ! 雌豚。
この俺様の足元にひれ伏して、この足を舐めろ」
「嫌よ! 変態っ!!!」
あまりの事にエリオットが、立ち眩みを起こした。
足がよろけたところを、ゼノアが支える。
「大丈夫か?」
「え? ええ、ごめんなさい。
少し立ち眩みを起こしてしまったみたい」
ゼノアの対応に、エリオットは少し驚いた。
「夕食までには少し時間がある。横になっていろ」
先程までとは打って変わって、
真剣に自分を心配してくれているのが伝わる。
「秘薬を飲んだとはいえ、かなりの出血量だったんだ。
身体が完全に回復したわけではない。
こっちこそ無理をさせてしまったな。許せ」
エリオットがベッドに身体を横たえると、その端にゼノアが腰かけた。
エリオットの額に手を当てる。
「あなたはゼノアなのよね」
エリオットが問うた。
ゼノアは金色の美しい髪を背に流し、
ベージュのAラインワンピースを着ている。
その首元と手首からは黒のレースのインナーが覗き、
スカートの左側にはリボンが揺れている。
外見は聖女そのものの美少女だ。
「ああ、そうだ」
ゼノアが頷いた。
この美少女が、自分をペテンにかけた
少年と同一人物なのだという。
「でも私がライネル公国で見た
ゼノアとは違うのよね」
エリオットは月明かりの下で、
セレナーデを踊っていた少年の面影を思い出した。
確かに同じ顔で、しかし雰囲気は全然違う。
「あれは妹のセシリアだ」
「え?」
セシリアの名に、エリオットが敏感に反応してしまう。
ゼノアの言葉に、エリオットが頬を赤らめると、
ゼノアの目つきが剣呑になった。
「この雌豚がっ!
なに人の妹にときめいていやがる?」
「べっ、別にそんなこと……」
エリオットが口ごもる。
「いや、違う。お前はセシリアの
フリをしたこの俺を好きなんだ」
ゼノアが意地悪そうな笑みを浮かべた。
「は、はあ? そんなわけないじゃない、
何を勝手に自惚れているの?」
ゼノアがセシリアのフリをする。
「ひどいっ! エリオットお姉さま。
わたくしのことを好きだとおっしゃったのは
嘘だったというの?」
そういってゼノアがエリオットの手を取ると、
「ああ、セシリア……」
エリオットが条件反射で身体を起こし、涙ぐむ。
「な、認めろよ。
お前俺のことが好きなんだよ」
ゼノアがそういって
ポンポンとエリオットの肩に手を置いた。
「ひどいわ。私の純情を弄んだのね。
この堕天使が……」
エリオットが顔を手で覆った。
「弄んでねぇし」
ゼノアが少し膨れ気味にソッポを向いた。
意外な反応だ。
「じゃあ、なんで私を助けたの?
偽装結婚とか、やっぱり政治的な絡みなの?」
エリオットが問うと
ゼノアがじっとエリオットを見つめた。
「それもなくはない、だがそれだけでもない。
俺はこう見えて結構純情だぞ?」
エリオットはゼノアの言葉に目を瞬かせる。
「は? どういうこと」
エリオットの言葉にゼノアが顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お前っ超絶鈍いなっ! だから悪役令嬢のくせに
クッソ間抜けで、お人良しで、
いっつもメソメソしやがって」
ゼノアの言葉に、更にエリオットの瞬きの回数が増えた。
「なんで知っているのよ?」
エリオットがそう問うと、
ゼノアが吐き捨てるように言った。
「ずっと見てたからだろ……。
お前、似合わない黒いドレス着て、
サイファリアの国境沿いにある古城に陣をはっていただろう。
それを俺の部隊が見張ってたんだ」
ゼノアが少し怒ったように言った。
「最初はどんくさい悪役令嬢だと思ってた。
ああ、物語中盤でよく出てくる感じの
噛ませ犬だと思って見ていたら、
なんか目が離せなくなってだな……。
俺だったら、お前のこと絶対泣かせないのにっ……とか」
ゼノアは視線を窓の外に移した。
「俺がお前にさっき言ったこと、あれはセシリアじゃなくって、
俺の気持ちだから」
そう言ってゼノアはエリオットを真っすぐに見つめた。
「え……えっと……それは……つまり」
エリオットの顔が夕焼けに染まる。
「ああ、もう、お前頭悪いな。
全部言わせんなよなっ!
俺はお前のことが……好きってこと!」
泣き出す前の子供のように、ゼノアが顔を真っ赤にしている。
そしてエリオットを睨みつけた。
「お前は? お前は俺のことどう思う?」
ゼノアは挑むような目線をエリオットに向けた。
「いや、あの……あなたは私のこと
知っててくれたようなんだけど、
私はあなたに今日会ったばっかりっていうか、
実際よくわからなくって」
エリオットが視線を泳がせる。
「お前、セシリアのフリをしてたら、
俺のこと好きって言ったじゃんっ!
なに? 百合なの? 女しか愛せないの?」
ゼノアがエリオットに詰め寄った。
「ひぃぃぃ、ごめんなさい。
百合の気があることは否定しませんが、
小、中、高校とずっと女子校だったもので、
免疫がないんですぅぅぅ。
男の人が怖いんですぅぅぅ」
泣きの入ったエリオットに、ゼノアが舌打ちした。
「使えねぇな、まあいい。
それなら意地でも俺を好きにさせてやるまでだ」
黄昏のサイファリア国の東宮殿に絶叫が響き渡った。
「羽の生えた天使じゃなくて、
チ〇ポの生えた堕天使なんていらないっ!」
エリオットが絶叫する。
「黙れ! 雌豚。
この俺様の足元にひれ伏して、この足を舐めろ」
「嫌よ! 変態っ!!!」
あまりの事にエリオットが、立ち眩みを起こした。
足がよろけたところを、ゼノアが支える。
「大丈夫か?」
「え? ええ、ごめんなさい。
少し立ち眩みを起こしてしまったみたい」
ゼノアの対応に、エリオットは少し驚いた。
「夕食までには少し時間がある。横になっていろ」
先程までとは打って変わって、
真剣に自分を心配してくれているのが伝わる。
「秘薬を飲んだとはいえ、かなりの出血量だったんだ。
身体が完全に回復したわけではない。
こっちこそ無理をさせてしまったな。許せ」
エリオットがベッドに身体を横たえると、その端にゼノアが腰かけた。
エリオットの額に手を当てる。
「あなたはゼノアなのよね」
エリオットが問うた。
ゼノアは金色の美しい髪を背に流し、
ベージュのAラインワンピースを着ている。
その首元と手首からは黒のレースのインナーが覗き、
スカートの左側にはリボンが揺れている。
外見は聖女そのものの美少女だ。
「ああ、そうだ」
ゼノアが頷いた。
この美少女が、自分をペテンにかけた
少年と同一人物なのだという。
「でも私がライネル公国で見た
ゼノアとは違うのよね」
エリオットは月明かりの下で、
セレナーデを踊っていた少年の面影を思い出した。
確かに同じ顔で、しかし雰囲気は全然違う。
「あれは妹のセシリアだ」
「え?」
セシリアの名に、エリオットが敏感に反応してしまう。
ゼノアの言葉に、エリオットが頬を赤らめると、
ゼノアの目つきが剣呑になった。
「この雌豚がっ!
なに人の妹にときめいていやがる?」
「べっ、別にそんなこと……」
エリオットが口ごもる。
「いや、違う。お前はセシリアの
フリをしたこの俺を好きなんだ」
ゼノアが意地悪そうな笑みを浮かべた。
「は、はあ? そんなわけないじゃない、
何を勝手に自惚れているの?」
ゼノアがセシリアのフリをする。
「ひどいっ! エリオットお姉さま。
わたくしのことを好きだとおっしゃったのは
嘘だったというの?」
そういってゼノアがエリオットの手を取ると、
「ああ、セシリア……」
エリオットが条件反射で身体を起こし、涙ぐむ。
「な、認めろよ。
お前俺のことが好きなんだよ」
ゼノアがそういって
ポンポンとエリオットの肩に手を置いた。
「ひどいわ。私の純情を弄んだのね。
この堕天使が……」
エリオットが顔を手で覆った。
「弄んでねぇし」
ゼノアが少し膨れ気味にソッポを向いた。
意外な反応だ。
「じゃあ、なんで私を助けたの?
偽装結婚とか、やっぱり政治的な絡みなの?」
エリオットが問うと
ゼノアがじっとエリオットを見つめた。
「それもなくはない、だがそれだけでもない。
俺はこう見えて結構純情だぞ?」
エリオットはゼノアの言葉に目を瞬かせる。
「は? どういうこと」
エリオットの言葉にゼノアが顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お前っ超絶鈍いなっ! だから悪役令嬢のくせに
クッソ間抜けで、お人良しで、
いっつもメソメソしやがって」
ゼノアの言葉に、更にエリオットの瞬きの回数が増えた。
「なんで知っているのよ?」
エリオットがそう問うと、
ゼノアが吐き捨てるように言った。
「ずっと見てたからだろ……。
お前、似合わない黒いドレス着て、
サイファリアの国境沿いにある古城に陣をはっていただろう。
それを俺の部隊が見張ってたんだ」
ゼノアが少し怒ったように言った。
「最初はどんくさい悪役令嬢だと思ってた。
ああ、物語中盤でよく出てくる感じの
噛ませ犬だと思って見ていたら、
なんか目が離せなくなってだな……。
俺だったら、お前のこと絶対泣かせないのにっ……とか」
ゼノアは視線を窓の外に移した。
「俺がお前にさっき言ったこと、あれはセシリアじゃなくって、
俺の気持ちだから」
そう言ってゼノアはエリオットを真っすぐに見つめた。
「え……えっと……それは……つまり」
エリオットの顔が夕焼けに染まる。
「ああ、もう、お前頭悪いな。
全部言わせんなよなっ!
俺はお前のことが……好きってこと!」
泣き出す前の子供のように、ゼノアが顔を真っ赤にしている。
そしてエリオットを睨みつけた。
「お前は? お前は俺のことどう思う?」
ゼノアは挑むような目線をエリオットに向けた。
「いや、あの……あなたは私のこと
知っててくれたようなんだけど、
私はあなたに今日会ったばっかりっていうか、
実際よくわからなくって」
エリオットが視線を泳がせる。
「お前、セシリアのフリをしてたら、
俺のこと好きって言ったじゃんっ!
なに? 百合なの? 女しか愛せないの?」
ゼノアがエリオットに詰め寄った。
「ひぃぃぃ、ごめんなさい。
百合の気があることは否定しませんが、
小、中、高校とずっと女子校だったもので、
免疫がないんですぅぅぅ。
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