帝国航空決戦

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プロローグ

1945年2月3日・東京上空

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どこまでも蒼い空。
そこを99機の巨竜が東京を目指して飛んでいく。
B29スーパーフォートレス。
敵国の生産能力を根こそぎ撃滅するための兵器である。
そんなものが99機の編隊を組んで飛行する様はまさに圧巻だった。
「機長、ジャップの奴らの戦闘機は上がってくるのでしょうか?」
副操縦士はそんなことを聞く。
「北九州を爆撃した奴らは高度が低かったから大損害を出したが、我々は高度33000フィート(約高度11000m)を飛んでいる。ドイツ軍機ならまだしも、日本軍機は上がって来んだろう」
これは一種の油断でもあり、願望でもあった。
現在、彼らには護衛の戦闘機隊は存在しない。
今だ硫黄島などが陥落しておらず、護衛戦闘機であるP51の航続距離が足らなかったのである。
もし、ここで日本の戦闘機に襲撃されば無傷では済まない。
「何事も無ければそれでいい」
機長はそう言って操縦に集中した。


『敵重爆隊を下方に発見。数は100機程度』
隊長機からの無線で迎撃隊であるキ94、またの名を天翔。
防空戦を意識して開発された本機は金星エンジンを18気筒化したハ-44ルを搭載している。
ハ-44は不調続きの誉と比べても信頼性が高く、またその馬力も2450馬力と強力だった。
これに排気タービンを装備している。
加えてTH翼という翼形状を採用したおかげで最高時速は高度10000mで720㎞。
カタログスペックのため実際は少し劣るが、それでも時速650㎞を下回ることは無い。
立川飛行機が開発したこの天翔は昨年の6月頃から量産体制に入っており、海軍の局地戦闘機や陸軍の重戦闘機と代替されていった。
そして、ここ東京には122機の天翔が配備されており出撃したのは奇しくも99機。
これは進撃中のB29と同数だった。
『全機、かかるぞ!』
隊長機の無線によって戦いの火ぶたは切られた。


99機の天翔は二手に分かれてB29の群れに襲い掛かっていった。
B29側は接近に気付いたが、手遅れであり一撃を喰らってしまった。
これが零戦などであったなら致命傷にはならなかったかもしれなかったが、彼らが戦っているのは天翔である。
天翔には対重爆用として30㎜機関砲が2門、20㎜機銃が2挺装備されていた。
どちらも大口径であり、その重たい一撃はB29をも爆砕せしめた。
最初の一撃で21機ものB29が叩き落され、12機がエンジンや胴体に深刻な損傷を負い帰投していく。
ここで銃座などが反撃を行い、天翔も被撃墜機が出るがそれも3機であった。
逆に彼らは再攻撃として下方からの突き上げを敢行。
機動性が劣悪な重爆ではこの攻撃を避けることは出来ず、今度は19機が叩き落され8機が帰投していく。
すでに隊長機は撃墜されており、数も半減したB29隊は海上に爆弾を投棄し撤退を開始。
だが、天翔隊は簡単には逃がしてくれず最後の一撃を繰り出した。
この一撃でさらに13機が撃墜され、2機が大破し高度を下げていった。
こうして日本にとって初の本格的な本土防空戦は勝利に終わった。
天翔は7機が失われ、32機が損傷したが、B29を53機撃墜し残りを退散させていった。
だが、帝国本土航空決戦は始まったばかりであった。
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