神速艦隊

西太平洋戦争

海兵隊反転

攻撃隊はとにもかくにも空母を優先して攻撃した。
だが、10隻の戦艦は突貫工事ではあるものの対空火器を増設しておりその弾幕は苛烈を極めた。
攻撃前に艦爆6機と艦攻9機が撃墜され、艦爆2機、艦攻1機が攻撃不可となった。
それでも対空砲火だけですべての攻撃隊を撃墜することは出来ず、空母への攻撃を許した。
まずレンジャー級の2隻が飛行甲板に爆弾が命中し炎上した。
レンジャー級はやはり防御力に難があり、たちどころに戦闘力を喪失。
既に各所で火災が発生しており先にカウペンスが総員退艦を決定し、ボノム・リシャールも後に続いた。
ただエセックス級の2隻に関してはもちろん攻撃を受けたものの、沈むような気配は見せなかった。
ここで攻撃隊は全弾を撃ち尽くし、撤退した。


第1次攻撃隊の予想外の苦戦はすぐに第1航空艦隊司令部に報告された。
「…決して敗北ではないがしてやられたな」
南雲は悔しそうに言った。
もし相手の空母に攻撃能力がほとんどないと分かっていたならばもう50機程度は攻撃隊の直掩に付けれたはずであり、そうすれば20機以上の攻撃機が救われていたと南雲は考えてしまった。
南雲の表情から察したのか草鹿が慰めの言葉を言う。
「はい。ですが長官や我々の判断が間違っていたとは到底思いません。確かに事前に情報があればこのようなことにならなかったかもしれませんが、それは無理な相談です。ひとえにこの結果は運です」
南雲は少し救われた気がした。


一方スプールアンス艦隊司令部も暗い雰囲気が漂っていた。
「報告によりますと、不時着水した4機を除いて無事空母に着艦できたのはF4F65機とSBD23機の計88機です。ですがこのほとんどが修理が必要でありすぐに運用できるのはF4F23機とSBD6機だけです」
スプールアンスの顔は暗かった。
確かに航空隊は飛来した日本軍機を100機以上撃墜した。
だがその代償として味方航空隊は242機ものF4F並びにSBDを失った。
またレンジャー級の2隻はあえなく撃沈され、エセックスとラングレーは何とか踏ん張ったが速力は両艦とも20ノット前後にまで落ち込んでいた。
「ハワイまであと何海里だ」
スプールアンスの問いにバークは答えた。
「現在、450海里です」
20ノットで航行を続けた場合、丸1日かかる。
もはやハワイへの海兵隊の上陸は不可能になった。
「海兵隊に反転を命じろ。我々はそのままハワイに進撃しハルゼー艦隊を救出する」
これにバークは頷いて海兵隊に反転を命じた。