神速艦隊

西太平洋戦争

撤退

4隻の戦艦は一三試艦爆に滅多打ちにされ、海底に沈んだ。
800㎏爆弾による緩降下爆撃は効果的であり、まだ練度が低い第5航空艦隊でもこの成果を出せた。
撃沈したのは戦艦テネシー、カリフォルニア、新型のアイオワ（2代目）、ニュージャージー（2代目）だった。
これを持って日本軍は撤退を決定しパナマ作戦は成功裏に終わったのである。


このパナマ運河の破壊はアメリカ国民に厭戦気分を与えたものの同時に恐怖感をを与えた。
恐怖感から国民を次々に戦争へ協力していった。
これに後押しされて”44年の秋口までには日本海軍に伍する艦隊を建造できる”としてそれまでアメリカ軍は日本軍の攻勢を押しとどめることとした。


「もはや総力戦は避けられない」
山本はいつもの3人の会合で重々しく言い放った。
これに2人も頷く。
アメリカの世論は3人が考えていた方とは真逆に到達してしまったからだ。
「この分だとアメリカ本土を叩くことは愚策だな」
「あぁ、彼らが出てくるのを持つしかないだろう」
ただすでに決戦の時は分かっていた。
1944年11月7日にアメリカでは大統領選挙が予定されている。
現在の所、ルーズベルトの支持率は下がり続けていた。
いくら国民が戦争に協力するからと言っても負け続きの大統領は少しづつ愛想をつかされていったのである。
だがルーズベルトは異例の4選を狙っており、支持率を上昇させるためには”確固たる戦果”が必要だった。
その戦果は言わずもがなハワイの奪還と日本海軍の殲滅である。
「すでにマル急計画に追加で鳳翔型8隻、大鷹型8隻を追加した。その代わりに民間船も建造は制限されることになる」
堀は少しくらい顔をした。
「国民には耐えてもらうしかない」
山本は自分に言い聞かせるように締めくくった。


山本が言った通りもはや総力戦を行うしか日本がこの戦争を終わらせる方法は無くなった。
マル急計画で建造される空母は鳳翔型20隻、大鷹型16隻の計36隻となっていた。
また鳳翔型と言ってもエレベーターは3基から2基に減らされていたりと徹底的に簡略化した。
そのおかげで工期は1年半ほどまでに圧縮された。
これは大鷹型も同じだった。
また同時に航空機の開発、量産を加速させ搭乗員の育成も並行して行っていた。
そしてこれ以上兵力を失わないために連合艦隊司令部は攻勢作戦を事実上凍結。
アメリカ海軍が出てくるその時まで真珠湾に釘付けとなった。
「我が国は道を踏み外してしまったのではないか？」
塩沢は勝ったばかりだというのに顔は暗かった。