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第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)
14、ソロキャンパー、海を目指す。
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脳内愛称「栗さん」ことギルド長にモモ肉を二本分渡すと大層喜んでくれた。
ここ最近、メロウボアの討伐が少なかったらしい。
職権乱用じゃないのか?と尋ねると、「これ位の役得が無けりゃ、荒くれ者の纏め役なんてやってられるか」と笑っていた。
その後、是非等級のランクアップをと追いすがる栗さんとプルエさんを「マクサーンから帰ってきたら考えます」と丁重に(適当に?)あしらいギルドを後にした。
さて、僕は今一人で武器屋へと向かっている。
流石に手斧だけではこの先厳しいかもしれないと考えたのだ。
つなみに他の三人は特に買い揃える物は無い様で、先に王宮に戻っていった。
「あ、ここだ」
栗さんに教えて貰った武器屋に、これまた栗さんに書いて貰った地図を頼りに辿りつく。栗さんには紹介状まで書いて貰っている。ありがたや。
『good Vibes with ARMS』と看板の出されたその店は、隠れた老舗といった感じの渋い店構えだった。
「ごめん下さい」と声を掛けながら店に入る。店の中は少しだけ薄暗く、お客さんはいない様だ。返事が無いのでもう一度呼びかけてみる。
「ごめんくださーい」
「はいよー!」
店の奥から威勢のいい声が聞こえる。
「今手が離せないからこっち来てくれるー?」
店の奥では、店主だろうか、少し小柄な女性がこちらに背を向けて刃物を研いでいる様子だった。
見た目は、金髪をショートにした・・・、
「ごめんね。丁度研ぎの最中だったからさ!」
・・・黒ギャル??
****
「確かにマロンの旦那から書いて貰ったようだね。ただ6等級でここの紹介状貰えるってのは・・・、君、何やった?」
「ん~、クラウンマンティスとゴラオンスパイダーを倒したとか?ですかね?」
「それだ!」と笑いながら僕の肩を叩く彼女は、紹介状を手に奥のカウンターへ向かう。
「6等級でその2種類を倒したっては・・・、ここの紹介状貰うのも無理ないかな!」
どうやらこの店は、実力と信頼がある人間しか相手にしない「一見さんお断り」の店の様で、6等級の駆け出しギルダーがおいそれとは来れない所らしい。
「にしても、レベル512か、会ってみたいね!その姉さん!あ、適当に座ってくれる?」
「あ、ありがとうございます、・・・その」
「ああ!まだ名乗ってなかったね!あたしは『アイ』、『アイ・バンズロート』この辺じゃ『レッドアイ』で通ってる!」
ああ、成程。確かに瞳の片方が赤い。
「あたしは人族と魔族の混血なんだ。だから瞳が片方赤いのさ。魔族の血が濃いせいか肌の色もそうなんだけどね」
黒ギャルは日焼けのせいじゃないってことか、でも肌がテカテカしてるのは何でじゃ?
ついついレッドアイさんを見てしまう。
なんというか、露出度が高いのだ、彼女は。
タンクトップの様な上着の上半身に、ホットパンツの様な下半身。・・・やっぱり黒ギャルじゃないか。グヘヘ。
と、思わずキャラが崩れてしまうような煽情的な格好をした彼女は、もちろんナイスなボディでやっぱり凝視してしまう。
「何?魔族が珍しいの?そんなにじっと見て」
「い、いや、そういう訳じゃ・・・」
「あ、この肌?これはね、研ぎや鍛冶で肌を傷つけない様にように肌薬を塗ってるんだ!」
「ああ。そういうことでしたか」
・・・ローションやオイルでは無かったみたいだ。
「それで、どんな武器が欲しいの?大剣?ショートソード?それとも槍?あ、斧かな?」
「それなんですが・・・」
僕は紙とペンを借りて、その武器を描いて見せる。
「こんな武器ははありませんかね?刀っていうんですが」
レッドアイは紙を一瞥すると「・・・ちょっと待ってて」と店の奥に引っ込んでいく。
少しして細長い布の包みを手に戻ってきた。
「見てみて」とレッドアイが包みを開く。
それは二振りの、まさに見た目は、刀だった。
目の前に置かれた二振りの刀。
一振りは黒い鞘に包まれている。もう一振りは深い緑の鞘だ。柄巻は共に黒く、鍔は鈍色に光っている。
「あたしがまだ武器屋を目指す前に爺ちゃんから受け継いだんだ。爺ちゃんの話じゃ代々家に伝わっているもので、なんでもはぐれ人が世話になったからって置いていったみたい。何本もあるからって」
「・・・抜いてみても?」
「どうぞ」と促され、まずは緑の刀の鯉口を切る。剣道をやっていた時に真剣に触れる機会があったので抜き方はわかる。
刀特有の鞘が擦れる音を聞きながら抜いたその身を眺める。
刀身は濡れたような輝きを放ち、刃紋は滑らかに波打っている。
すこし変わっているのは鎬の切っ先側に何やら文字が彫り込んであるぐらいだろうか。
「漢字・・・、払?、祓か」
もう1本を抜く。
「こっちは、刀というより太刀かな?」
全体が幾分大きな黒い刀、同じようにそれを抜くと、刀身は緑に比べるとその輝きを随分と失っていた。
艶すら見えないがやはり同じように漢字が彫ってある。
「殲・・・、物騒な字だね」
「ねえ・・・、その字が分かるってことは、君もしかしてはぐれ人?」
****
レッドアイのお爺さん、いやそれ以前の話だろう。【神々の収穫】の為に呼び出された何代か前のはぐれ人。
彼はやはり異世界に興味が沸いたのか【収穫】の後旅を続け、その途中で資金が尽きたのだそうだ。そこをレッドアイの御先祖様が助けた。
その喰いっぱぐれたはぐれ人「シンベー・ミチハラ」は、レッドアイのご先祖様に大層恩義を感じ、この二振りの刀と他に数本の刀を渡し、こう言ったのだという。
「好きに使ってもらって構わない。しかし、もし、もしいつかこの二振りを求め、銘を読む事が出来る者が現れたら、その者に渡してやってくれないだろうか?きっとその者ははぐれ人であろうから、この二振りが力になるはず」と。
「と、そういう訳。今まではこれを『刀』と呼ぶ人いなかったし、ましてやこの字を読める人なんて皆無だった。だから君はもしかしたらはぐれ人なのかなと思ってさ。だから、はい」
そう言いながらレッドアイは改めて僕に刀を差しだす。
「確かに、僕ははぐれ人です。だけどこんな簡単に渡して構わないんですか?大事な物では?」
「まあそりゃそうだけど、ずっと伝えられてきた話だしね。でも、まさかあたしの代でこうなるとは思わなかった。それでも約束は護るよ。使ってくれる?」
「それでいいのであれば・・・是非!」
「たださ、条件があるんだ」
「・・・なんでしょう?」
「・・・一緒について行っていい?」
・・・またか。
「理由を聞いても?」
「ああ、実はあたしは未だにその二振りが実戦で使われているところを見た事が無いんだ。それが見たいっていうのと、後は君への単純な好奇心かな。でもメリットはあるよ!あたしは武器屋、武器や防具の手入れが出来る!どう?」
「そうですね・・・。僕としては、まあ、構わないと思うのですが、どちらにしても僕の一存では決められないので・・・」
「お仲間と会って見ろって?」
「そうですね、レッドアイさんが良ければ」
「レッドアイでいいよ!良ければっていうより、願っても無いってとこかな!是非お願い!」
そう言いながら、準備の為かレッドアイは店の奥に走っていく。
それにしてもまさか刀が本当にあるとは。
何かしら使い勝手の良い武器が手に入ればと思って来てみたら、これは何とも幸運だったなとその手にある二振りの日本刀を見る。
「ん?」
見間違いだろうか?ぼんやりと光っている様に見えた。
「おまたせ!道具詰め込んでたら遅くなった、ごめんよ!」
「いえ大丈夫ですよ~」
レッドアイに声を掛けられ、刀から視線を外す。ふともう一度見ると光は出ていなかった。
「気のせいかな・・・」
「? なにが?」
「いえ、なんでも」
****
「うわっ!ほんとに512だっ!すご!」
タラちゃんのギルドカードを見たレッドアイが吃驚したように声を上げる。
王宮で皆に紹介したところ、武器の手入れが出来る仲間が増えるのは頼もしいと大歓迎だった。
まあ、タラちゃんが『タラスク』というのは伏せたままだけどね。
さて、仲間が増えたところで海に行く準備だ。マモン様の口添えもあって今回は馬車で行くことになっていた。
(馬車って、お尻が凄く痛いイメージだけど・・・)なんて事を考えながら僕達は馬車へと向かったのだけど。
「これは・・・馬車なの・・・かな?」
「え、タラちゃん様、これ大丈夫なんですかぁ?」
「というか、エ、エル君は犬じゃなかったんですか?」
「は?何、この魔物?え?え?」
確かに馬車だ。人が乗る部分は所謂幌馬車って奴だ。だけど馬がいない。
本来馬が繋がれているであろうところ、そこには本来の姿に戻った『エルダーネルルク』が繋がれていた。
『『なに、エルダーの奴が運動不足だというもんじゃからな、マモンに言うたらすぐに準備してくれおったわ!のう、エルダー?』』
『オンッ!』
・・・あんまり目立ちたくないんだけどなあ。
****
大きな川に沿った道を馬車が行く。
「ポッカポッカ」と、では無く「ダシッダシッ」、「ワフッワフッ」と馬車?は行く。
思ったより乗り心地は良い。
周りの目を気にしなければ。
実は馬より快適かもしれない。
周りの目を気にしなければ。
のんびりとしたものである。
周りの目を気にしなければ。
「タラちゃん、僕達凄く見られてませんか?」
『『そんなもの気にしてどうする。それよりもユズルよ』』
僕はタラちゃんと二人、御者台の上だ。
「なんですか?」
『『その腰の二振り、見覚えがある刀じゃの』』
そうだった。タラちゃんはこれでも『神代竜』だ、以前のはぐれ人を知っているのが当たり前か。
「はい。はぐれ人が使っていたものだと、レッドアイが渡してくれました。『シンベー・ミチハラ』という人の物だったらしいですけど」
『『やはりか・・・、シンベー・・・、あ奴は自分の事を『サムライ』だと言っておったな。意味は分からぬがまあ騎士の様なものかの?』』
「そうですね。『侍』というのは僕が元いた日本、それも随分古い時代のこちらでいう騎士に近い感じですかね」
『『やはりそうか、まあまっすぐな奴だったの。での、奴のスキルが具現化した武器、刀といっておったか。それがその二振りじゃ。両方に『銘』があると聞いておったが?』』
「確かにありますよ。見てみます?」
『『いや、今は良い。もうすぐ『トライア』じゃしの。日が暮れる前に宿を決めるなり野営の準備をするなりせんとな』』
そう言われて前を見る。
「お~!」
海辺独特の潮の香りが漂う。
異世界に来て初めての海はエメラルドグリーンに輝きながら、水平線の向こうまで広がっていた。
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