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第3話 精霊の力
14.ノアールの誘惑1
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お昼は吟遊詩人ノアールの熱狂的なファンのアーシャによって、ルージュ、リリアスともに食堂へ連れ込まれた。
アーシャは食堂の経営者で、ノアールがエディンバラに訪れる度に、食事と宿を独占的に提供する権利を勝ち取っているようだった。
遊牧民のテントを模した個室のスペースで、気の向くままにあぐらをかいて寛ぐところだった。
こういう個室スペースがいくつか集合し、お互いにプラシバシーが確保されている。
大小さまざまなクッションがあり、伝統模様の刺繍が美しい。女将は次々と郷土料理をはこびいれされて、ごゆっくりと三人を残していった。
逢い引き用にも利用されそうな造りだ。
空調が効いていて、大変快適である。
このまま午睡でもしていきたい気分になる。
「昨日のお礼をいいたかっただけなのだがな」
ノアールはいえいえ~、お代はあなたの体で~、なんていうのを目線でだまらせる。
「ゆっくり話してみたかったので、ご一緒できてうれしいのですよ」
とノアールは目元を綻ばせて、ルージュを見て、視線を少年に写す。
好奇心がくすぐられる二人組である。
ノアールは独自の情報網から、二人が樹海の方向から突然あらわれた事実を仕入れていた。
しかしながら樹海を冒険するような、若者特有の無謀さを感じさせない二人組だ。
青年はいかにも高貴な血筋の雰囲気を持っている。
パリス国の貴族のようにも思われたが、駆け落ちの話は聞かない。
豪奢な顔立に不釣り合いな標準旅行服がわざとらしいのだ。
パリス国がらみの気になる噂話といえば、とノアールは思い出す。
パリスの高齢の国王が伏せていて、代替りが間近かとささやかれていること。
しかも第一王子と第二王子で水面下で跡目相続争いが起こっているかもしれないこと。
第二王子は若くから軍部に所属し、国境の小競り合いにも積極的に参加し成功を納めている。
王妃や王様からも、制圧の途中で命を落とすことを期待されたが生き残り、かえって軍部との繋がりが深くなり、大きな勢力となっていること。
さらに国民の第2王子人気は高い。
どちらが次期国王となるかは、パリス国内だけではなくバラモンを含め、隣接する国々の注目を集めていた。
第2王子の名前は確か、ルシルか何かだったか?
「元気になって良かったです」
連れの子は更に興味を掻き立てられる子だ。
「お連れ様が上手くやってくれたのですね」
優しく笑いかけると??の顔がかわいらしい。
「あなたは死にかけていて、彼に助けられたのですよ」
隣で青年がかあーっと顔を赤くしている。
くすり、とノアールは大人の余裕をただよわせ笑った。
「ルージュ君はどちらのご出身ですか」
「パリスの田舎町だ」
とルージュは即答する。
もっともらしく田舎町の名前をあげて詳細に説明するところが、彼の標準旅行服のように、ノアールにうそだと教えてくれる。
青年も気になる存在であることに違いなかったが、今は黒髪の少年に集中したかった。
少年の歌声の余韻がまだノアールの体に残っている。
ノアールは女将の差し入れの発酵酒を受けとると、気づかれぬようによく眠れる薬草の粉末をさらっと入れ、ルージュにすすめる。
「僕も飲みたいな」
「お子さまは駄目ですよ」
といいながらふふっと妖艶に笑って、黒牛の角の器の半分だけ注ぎ入れた。
別の薬も忍び込ませる。
「彼は病み上がりだから、お酒はすすめないでくれ」
といいながらルージュはリリアスに渡される器を奪った。
「味見だけだから」
と奪われた器ごと、顔をつっこんでリリアスは飲み干す。
「仲がよろしいのですね。身分違いの駆け落ち説があたりですか??」
吟遊詩人はいった。
料理は香辛料がふんだんに使われ、羊の肉の臭みを消している。
パリスでの香辛料の相場はいくらだったかな、など思っているうちに、ルージュはうつらつらしはじめる。
その様子を冷ややかな目をしてノアールは見ていた。
アーシャは食堂の経営者で、ノアールがエディンバラに訪れる度に、食事と宿を独占的に提供する権利を勝ち取っているようだった。
遊牧民のテントを模した個室のスペースで、気の向くままにあぐらをかいて寛ぐところだった。
こういう個室スペースがいくつか集合し、お互いにプラシバシーが確保されている。
大小さまざまなクッションがあり、伝統模様の刺繍が美しい。女将は次々と郷土料理をはこびいれされて、ごゆっくりと三人を残していった。
逢い引き用にも利用されそうな造りだ。
空調が効いていて、大変快適である。
このまま午睡でもしていきたい気分になる。
「昨日のお礼をいいたかっただけなのだがな」
ノアールはいえいえ~、お代はあなたの体で~、なんていうのを目線でだまらせる。
「ゆっくり話してみたかったので、ご一緒できてうれしいのですよ」
とノアールは目元を綻ばせて、ルージュを見て、視線を少年に写す。
好奇心がくすぐられる二人組である。
ノアールは独自の情報網から、二人が樹海の方向から突然あらわれた事実を仕入れていた。
しかしながら樹海を冒険するような、若者特有の無謀さを感じさせない二人組だ。
青年はいかにも高貴な血筋の雰囲気を持っている。
パリス国の貴族のようにも思われたが、駆け落ちの話は聞かない。
豪奢な顔立に不釣り合いな標準旅行服がわざとらしいのだ。
パリス国がらみの気になる噂話といえば、とノアールは思い出す。
パリスの高齢の国王が伏せていて、代替りが間近かとささやかれていること。
しかも第一王子と第二王子で水面下で跡目相続争いが起こっているかもしれないこと。
第二王子は若くから軍部に所属し、国境の小競り合いにも積極的に参加し成功を納めている。
王妃や王様からも、制圧の途中で命を落とすことを期待されたが生き残り、かえって軍部との繋がりが深くなり、大きな勢力となっていること。
さらに国民の第2王子人気は高い。
どちらが次期国王となるかは、パリス国内だけではなくバラモンを含め、隣接する国々の注目を集めていた。
第2王子の名前は確か、ルシルか何かだったか?
「元気になって良かったです」
連れの子は更に興味を掻き立てられる子だ。
「お連れ様が上手くやってくれたのですね」
優しく笑いかけると??の顔がかわいらしい。
「あなたは死にかけていて、彼に助けられたのですよ」
隣で青年がかあーっと顔を赤くしている。
くすり、とノアールは大人の余裕をただよわせ笑った。
「ルージュ君はどちらのご出身ですか」
「パリスの田舎町だ」
とルージュは即答する。
もっともらしく田舎町の名前をあげて詳細に説明するところが、彼の標準旅行服のように、ノアールにうそだと教えてくれる。
青年も気になる存在であることに違いなかったが、今は黒髪の少年に集中したかった。
少年の歌声の余韻がまだノアールの体に残っている。
ノアールは女将の差し入れの発酵酒を受けとると、気づかれぬようによく眠れる薬草の粉末をさらっと入れ、ルージュにすすめる。
「僕も飲みたいな」
「お子さまは駄目ですよ」
といいながらふふっと妖艶に笑って、黒牛の角の器の半分だけ注ぎ入れた。
別の薬も忍び込ませる。
「彼は病み上がりだから、お酒はすすめないでくれ」
といいながらルージュはリリアスに渡される器を奪った。
「味見だけだから」
と奪われた器ごと、顔をつっこんでリリアスは飲み干す。
「仲がよろしいのですね。身分違いの駆け落ち説があたりですか??」
吟遊詩人はいった。
料理は香辛料がふんだんに使われ、羊の肉の臭みを消している。
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その様子を冷ややかな目をしてノアールは見ていた。
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