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おぼろ月夜の春の夢
1、異質な子
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中原は小国がいくつもひしめき合いながら独自の文化と誇りを育てていた。
彼らは次第に近隣諸国と小競り合いを繰り返しながら、より強い国に飲み込まれていく。
40年ほど前から始まった群雄割拠の勢力争いは、次第に二つの強国の元に集約されていく。
一つは豊富な地下資源を利用して強い鋼を生み出したボリビア国。
もう一つは、奴隷を使役し厳格な身分制度の元、命知らずの軍隊を作りだしたパウエラ国。
そしてこの物語は、二強の中原の趨勢が注視される頃に生まれた、パウエラ国の二人の男の物語である。
リヴェールはパウエラ国のディバラ王の最後の子として生まれる。
ディバラ王は妻たちとの間に多くの子を成したが、虚弱で生まれついた子供たちも多く、熱病や感染症などで亡くなり、成人まで成長しても戦場で亡くなるなど不幸が続く。
そしてリヴェールが生まれた時は継承順位は10位であったが、一人、また一人と兄弟たちが身罷るにつれて、ただひとり、本人を取り残しながら変わっていくのである。
毎年夏には王族や貴族の子弟たちは大貴族の邸宅に集まり勉学に励む。
学友たちの中に一人、異質な子がいる。
彼は一見して燃えるような赤毛をしていた。
貴族でもなく、市民でもなく、奴隷に多い赤色の髪。
奴隷の子は通常は学校に通うことなく、親の手伝いを行ない、その職業を踏襲する。
だが、その子は明らかに奴隷の特徴を際立たせながらも、同じ勉学室の最後尾の隅に存在を溶け込ませるかのように潜んでいた。
その子はこの邸宅の持ち主の大貴族の息子。
奴隷に生ませた子である。
彼の燃えるような赤毛に、避暑に集まった貴族の息子たちは色めき立つ。
子供たちは、自分たちと違う異質な匂いに敏感で、彼は何かにつけていじめの標的になっていた。
リヴェールは、彼の机が部屋の外に投げ出され、机がなくなっても地べたで座りながらも、黙々と教師の言うことに耳を傾け、落書きされたテキストをめくる赤毛の少年をちらりと横目でみるが、それだけである。
無視をする。
興味はなかった。
彼も助けを求めていない。
助けを求めないものに差し出すものは何もないのだ。
彼らが夏の間、ここで学ぶ根本には、国を富ますために、国の為に、より強くなるために、そういう大人たちの意図があった。
そんな勉強はリヴェールには不要だった。
なぜなら、リヴェールは国政に入るつもりはないし、権力を持ちたいとも思わない。
国を担うであろう選ばれた子供たちの、その中でもとりわけ高貴な血筋であるはずのリヴェールは、まったく権力や国政に興味がなかったのである。
リヴェールの興味や惹かれたものは、人の手が作り出す美しいものだった。
母の指が魔法のように描き出す美しい刺繍の花や鳥たちであったり、工芸家の薄汚れた男たちが叩き出す、きらびやかな銀細工だったり。
リヴェールは子を産んで後は王城に住まず、下町にひっそりと住む母の元に尋ねては、彼らの作り出す自然を写した美しいものを眺めて誰にも邪魔されない一人の時間を過ごすのが一番の幸せな時間であった。
リヴェールはその日も退屈な勉強の時間を終え昼を食べると、ひとり木陰で手にした本を読み始める。
そこは、戦士たちの修練場があって彼らが馬を操り、剣をくりだし、弓を引く、そういう場を眺めることができる絶好の場所でもあった。
全く興味のないリヴェールだったが、その中に小さな影を見つける。
赤毛の髪の少年だった。
すぐに誰かわからない。
通常は、人と頭を使う上流階級の者たちと、物を作りだし戦で体を張る者たちは厳格に身分により区別されているからだ。
リヴェールの見たその赤毛の少年は、机がなくなっても勉強する無口な少年だった。
剣を振り、汗を流す。
馬を駆り、弓を引く。
つい、リヴェールは本から顔を上げて彼の姿を追ってしまう。
時折、大きな声を上げて気合を入れている。
うまくいけば大声で笑い、失敗すれば悔しがる。
戦場を想定した鍛錬をあんなに生き生きとするものなのかとリヴェールは初めて知る。
少なくとも、教室で見る一言もしゃべらない学友はそこにはいなかった。
見ているうちに、リヴェールは自分がまるでその鍛錬の場にいるかのように体を緊張させ、弓を引いてみる。
そのうちに疲れて、うつらうつらとし始めた。
だが、その午睡も不意に起こされる。
顔に伏せていた日よけの本がひょいっと取り上げられたからである。
「やあ、王子さまは優雅にお昼寝かよ?」
そういって、膝立ちし、本を手にしてリヴェールをのぞき込むのはその少年。
真っ赤な髪が木漏れ日を透かしてけぶるように燃え上がっている。
汗だくの体からは太陽の匂いがした。
「ガルシア、、、」
リヴェールは焦った。
眩しくて瞬く。
赤毛は破顔した。
「光栄だな。俺の名前知っていたんだ。やあ、こんなところで何しているんだ?」
ガルシアは手にした本のタイトルを目にして、目を丸くする。
それは、勉強とは全く関係のない楽譜だったからだ。
「楽器も持たずに楽譜を読んで午後を過ごすなんて、優雅だな。さすが王族というか」
「わたしを知っているのか?」
そう聞く自分が馬鹿なようである。
ガルシアはその質問がまるで楽しい冗談を聞いたかのように朗らかに笑った。
「ああ、俺はいつも教室では無口を通して馬鹿の振りをしているからなあ。あんただけでなく、俺のところに通う子弟の馬鹿者たちは知っているよ。反撃しないからといって陰湿ないじめをして楽しんでいるような、あんな奴らがこれからのパウエラを担うなんて、この国の将来は真っ暗だと思わないか?」
その陰湿ないじめを受けてるのが自分であるというのに、ガルシアは全く平気であった。
戦士の鍛錬で鍛えた生長途上のその体は、強さの片鱗を見せ始めていた。
リヴェールは聞かずにはいられない。
「どうして戦士の修練に参加しているの?」
「それは、見ての通り俺が奴隷の子で、奴隷から生れた子は奴隷だからだ。父は大貴族だが、自分の手足のように戦に出て働く忠実な部下が欲しい。優秀な戦士は、同時に諸刃の剣だ。だから、俺みたいな妾の子に矛先が向く。
恩に着せ、学ばせ、戦わせる。俺がこうして学び、修練する限り、母たちは安泰だ。だから、あんな馬鹿息子たちとの勉強につきあってやっている。俺は修練だけでいいのだけどな!」
リヴェールは目を丸くする。
修練が本業で、勉強が副なんていうことはまったく想像していなかったからだ。
「俺はあの中に友人もいないし、王族のことは知りたいとも思わないのだが、あんた、もしかして複雑系か?」
「は?複雑系?」
その言葉が理解できず、リヴェールは問い直した。
「複雑系、とか事情有り系というか。王族や貴族たちはみんな、髪色は亜麻色だろ?そして目の色は琥珀な色合いの濃淡が多い。だけど、あんたは近くで日の光を透かしてみると、目の色がなんか違う?」
リヴェールははっとする。
ガルシアの赤銅色の目がリヴェールの心の奥を見透かすように見ていた。
その視線から逃れようとすれば、顔に手を添えられ正面に向けられる。
「、、、あんたの目は赤だ。王族が赤いなんてことはあるのか?そのあたりがあんたの事情有り系の理由なのかよ?」
リヴェールは腕を突っ張り、ガルシアから距離をとる。
簡単に、その距離は広がる。
目の色が赤いということはない。
ただほんの少し、赤味の筋が入った琥珀なのだ。
面と向かって指摘されたのは初めてだった。
赤は奴隷の象徴する色。
厳格な身分制度が社会の基盤となるパウエラでは人でないと言われたのも同然であった。
リヴェールの顔に屈辱で血が上る。
リヴェールの母も奴隷の出で、子を産んで市民権を与えられたものだった。
だから、リヴェールは継承順位が次第に繰り上がっていってはいても、王になることは決してない。
なぜならば、奴隷の血を引く王が誕生するはずがないからだ。
「わたしだって、奴隷の血が流れている。王族でありながら王にはなれないし、なりたいとも思わない。
わたしが王になっても、この国の大貴族たちは誰一人喜ばない。
王位への意欲をみせたとたん、わたしはこの世から消されてしまう。
だったら、勉学はほどほどで木陰で音楽や物語の本でも読み、自然の息吹を感じながら午睡している方が、よっぽど幸せだろう?」
今度はガルシアが目を丸くする。
「王位継承権のあるヤツで王になりたくないヤツがいるなんてびっくりだ。なんだ、あんたの母は俺と同じ奴隷なのか」
「今は市民だ」
リヴェールは慎重に言い直す。
「市民か。まあ、どっちでもいいいか。あの馬鹿たちの国をつくるよりも、音楽や自然を愛する王がパウエラを収めればもっと中原は平和になるんじゃあないだろうか。
ただ、あんたは駄目だな」
自分はなりたくないと言ったのに、他人から駄目だと念押しされるとムッとする。
その反応に、赤毛のガルシアは笑う。
豪快で、生命力弾ける笑顔にリヴェールはどきりとする。
そんな笑顔をしたことも見たこともなかった。
「何がどう駄目なんだ?」
「あんたは白すぎてひょろひょろの発育不良の葱のようだ。もっと体を動かして強くならないと駄目だ!王になるなら戦場で、いざというときは己の身は己で守る必要もあるかもしれないだろ?
その一瞬を自分で守ってくれさえすれば、すぐに俺が駆けつけ、あんたを守ってやる」
「、、、戦場にはいかない。わたしは王にはならないから」
「何事も色んな可能性を考慮して布石を置いておくこと、と先生が言ってなかったか?
万が一、戦場にでるかも知れないときのために、鍛えておいてもいいだろ?
俺は戦場にでるのは決定事項だ。そして、あんたを守るかもしれないから、護衛役の俺からの未来からのお願いだ」
遠くでガルシアを呼ぶ声がする。
ガルシアは手を伸ばし、つられてリヴェールはその手をつかんでしまう。
ひょいと起こされた。
同じ年なのに、体の強さは格段にガルシアが上だった。
そもそもリヴェールはたいして運動もしていない。
その軽さにガルシアは眉を寄せる。
「あんた、ヤバイよ?王族は短命な男が多いが、本当に体を鍛えた方がいいと思う、少なくともここにいる間だけはな!明日からな!」
しぶしぶながらも、リヴェールは首肯いてしまう。
その返事は輝く笑顔だった。
その時、王位継承順位5位のリヴェールと五大貴族の息子ガルシアは15才。
孤独な異質な者同士は、足りない半身を求めるように、惹き付けられたのだった。
彼らは次第に近隣諸国と小競り合いを繰り返しながら、より強い国に飲み込まれていく。
40年ほど前から始まった群雄割拠の勢力争いは、次第に二つの強国の元に集約されていく。
一つは豊富な地下資源を利用して強い鋼を生み出したボリビア国。
もう一つは、奴隷を使役し厳格な身分制度の元、命知らずの軍隊を作りだしたパウエラ国。
そしてこの物語は、二強の中原の趨勢が注視される頃に生まれた、パウエラ国の二人の男の物語である。
リヴェールはパウエラ国のディバラ王の最後の子として生まれる。
ディバラ王は妻たちとの間に多くの子を成したが、虚弱で生まれついた子供たちも多く、熱病や感染症などで亡くなり、成人まで成長しても戦場で亡くなるなど不幸が続く。
そしてリヴェールが生まれた時は継承順位は10位であったが、一人、また一人と兄弟たちが身罷るにつれて、ただひとり、本人を取り残しながら変わっていくのである。
毎年夏には王族や貴族の子弟たちは大貴族の邸宅に集まり勉学に励む。
学友たちの中に一人、異質な子がいる。
彼は一見して燃えるような赤毛をしていた。
貴族でもなく、市民でもなく、奴隷に多い赤色の髪。
奴隷の子は通常は学校に通うことなく、親の手伝いを行ない、その職業を踏襲する。
だが、その子は明らかに奴隷の特徴を際立たせながらも、同じ勉学室の最後尾の隅に存在を溶け込ませるかのように潜んでいた。
その子はこの邸宅の持ち主の大貴族の息子。
奴隷に生ませた子である。
彼の燃えるような赤毛に、避暑に集まった貴族の息子たちは色めき立つ。
子供たちは、自分たちと違う異質な匂いに敏感で、彼は何かにつけていじめの標的になっていた。
リヴェールは、彼の机が部屋の外に投げ出され、机がなくなっても地べたで座りながらも、黙々と教師の言うことに耳を傾け、落書きされたテキストをめくる赤毛の少年をちらりと横目でみるが、それだけである。
無視をする。
興味はなかった。
彼も助けを求めていない。
助けを求めないものに差し出すものは何もないのだ。
彼らが夏の間、ここで学ぶ根本には、国を富ますために、国の為に、より強くなるために、そういう大人たちの意図があった。
そんな勉強はリヴェールには不要だった。
なぜなら、リヴェールは国政に入るつもりはないし、権力を持ちたいとも思わない。
国を担うであろう選ばれた子供たちの、その中でもとりわけ高貴な血筋であるはずのリヴェールは、まったく権力や国政に興味がなかったのである。
リヴェールの興味や惹かれたものは、人の手が作り出す美しいものだった。
母の指が魔法のように描き出す美しい刺繍の花や鳥たちであったり、工芸家の薄汚れた男たちが叩き出す、きらびやかな銀細工だったり。
リヴェールは子を産んで後は王城に住まず、下町にひっそりと住む母の元に尋ねては、彼らの作り出す自然を写した美しいものを眺めて誰にも邪魔されない一人の時間を過ごすのが一番の幸せな時間であった。
リヴェールはその日も退屈な勉強の時間を終え昼を食べると、ひとり木陰で手にした本を読み始める。
そこは、戦士たちの修練場があって彼らが馬を操り、剣をくりだし、弓を引く、そういう場を眺めることができる絶好の場所でもあった。
全く興味のないリヴェールだったが、その中に小さな影を見つける。
赤毛の髪の少年だった。
すぐに誰かわからない。
通常は、人と頭を使う上流階級の者たちと、物を作りだし戦で体を張る者たちは厳格に身分により区別されているからだ。
リヴェールの見たその赤毛の少年は、机がなくなっても勉強する無口な少年だった。
剣を振り、汗を流す。
馬を駆り、弓を引く。
つい、リヴェールは本から顔を上げて彼の姿を追ってしまう。
時折、大きな声を上げて気合を入れている。
うまくいけば大声で笑い、失敗すれば悔しがる。
戦場を想定した鍛錬をあんなに生き生きとするものなのかとリヴェールは初めて知る。
少なくとも、教室で見る一言もしゃべらない学友はそこにはいなかった。
見ているうちに、リヴェールは自分がまるでその鍛錬の場にいるかのように体を緊張させ、弓を引いてみる。
そのうちに疲れて、うつらうつらとし始めた。
だが、その午睡も不意に起こされる。
顔に伏せていた日よけの本がひょいっと取り上げられたからである。
「やあ、王子さまは優雅にお昼寝かよ?」
そういって、膝立ちし、本を手にしてリヴェールをのぞき込むのはその少年。
真っ赤な髪が木漏れ日を透かしてけぶるように燃え上がっている。
汗だくの体からは太陽の匂いがした。
「ガルシア、、、」
リヴェールは焦った。
眩しくて瞬く。
赤毛は破顔した。
「光栄だな。俺の名前知っていたんだ。やあ、こんなところで何しているんだ?」
ガルシアは手にした本のタイトルを目にして、目を丸くする。
それは、勉強とは全く関係のない楽譜だったからだ。
「楽器も持たずに楽譜を読んで午後を過ごすなんて、優雅だな。さすが王族というか」
「わたしを知っているのか?」
そう聞く自分が馬鹿なようである。
ガルシアはその質問がまるで楽しい冗談を聞いたかのように朗らかに笑った。
「ああ、俺はいつも教室では無口を通して馬鹿の振りをしているからなあ。あんただけでなく、俺のところに通う子弟の馬鹿者たちは知っているよ。反撃しないからといって陰湿ないじめをして楽しんでいるような、あんな奴らがこれからのパウエラを担うなんて、この国の将来は真っ暗だと思わないか?」
その陰湿ないじめを受けてるのが自分であるというのに、ガルシアは全く平気であった。
戦士の鍛錬で鍛えた生長途上のその体は、強さの片鱗を見せ始めていた。
リヴェールは聞かずにはいられない。
「どうして戦士の修練に参加しているの?」
「それは、見ての通り俺が奴隷の子で、奴隷から生れた子は奴隷だからだ。父は大貴族だが、自分の手足のように戦に出て働く忠実な部下が欲しい。優秀な戦士は、同時に諸刃の剣だ。だから、俺みたいな妾の子に矛先が向く。
恩に着せ、学ばせ、戦わせる。俺がこうして学び、修練する限り、母たちは安泰だ。だから、あんな馬鹿息子たちとの勉強につきあってやっている。俺は修練だけでいいのだけどな!」
リヴェールは目を丸くする。
修練が本業で、勉強が副なんていうことはまったく想像していなかったからだ。
「俺はあの中に友人もいないし、王族のことは知りたいとも思わないのだが、あんた、もしかして複雑系か?」
「は?複雑系?」
その言葉が理解できず、リヴェールは問い直した。
「複雑系、とか事情有り系というか。王族や貴族たちはみんな、髪色は亜麻色だろ?そして目の色は琥珀な色合いの濃淡が多い。だけど、あんたは近くで日の光を透かしてみると、目の色がなんか違う?」
リヴェールははっとする。
ガルシアの赤銅色の目がリヴェールの心の奥を見透かすように見ていた。
その視線から逃れようとすれば、顔に手を添えられ正面に向けられる。
「、、、あんたの目は赤だ。王族が赤いなんてことはあるのか?そのあたりがあんたの事情有り系の理由なのかよ?」
リヴェールは腕を突っ張り、ガルシアから距離をとる。
簡単に、その距離は広がる。
目の色が赤いということはない。
ただほんの少し、赤味の筋が入った琥珀なのだ。
面と向かって指摘されたのは初めてだった。
赤は奴隷の象徴する色。
厳格な身分制度が社会の基盤となるパウエラでは人でないと言われたのも同然であった。
リヴェールの顔に屈辱で血が上る。
リヴェールの母も奴隷の出で、子を産んで市民権を与えられたものだった。
だから、リヴェールは継承順位が次第に繰り上がっていってはいても、王になることは決してない。
なぜならば、奴隷の血を引く王が誕生するはずがないからだ。
「わたしだって、奴隷の血が流れている。王族でありながら王にはなれないし、なりたいとも思わない。
わたしが王になっても、この国の大貴族たちは誰一人喜ばない。
王位への意欲をみせたとたん、わたしはこの世から消されてしまう。
だったら、勉学はほどほどで木陰で音楽や物語の本でも読み、自然の息吹を感じながら午睡している方が、よっぽど幸せだろう?」
今度はガルシアが目を丸くする。
「王位継承権のあるヤツで王になりたくないヤツがいるなんてびっくりだ。なんだ、あんたの母は俺と同じ奴隷なのか」
「今は市民だ」
リヴェールは慎重に言い直す。
「市民か。まあ、どっちでもいいいか。あの馬鹿たちの国をつくるよりも、音楽や自然を愛する王がパウエラを収めればもっと中原は平和になるんじゃあないだろうか。
ただ、あんたは駄目だな」
自分はなりたくないと言ったのに、他人から駄目だと念押しされるとムッとする。
その反応に、赤毛のガルシアは笑う。
豪快で、生命力弾ける笑顔にリヴェールはどきりとする。
そんな笑顔をしたことも見たこともなかった。
「何がどう駄目なんだ?」
「あんたは白すぎてひょろひょろの発育不良の葱のようだ。もっと体を動かして強くならないと駄目だ!王になるなら戦場で、いざというときは己の身は己で守る必要もあるかもしれないだろ?
その一瞬を自分で守ってくれさえすれば、すぐに俺が駆けつけ、あんたを守ってやる」
「、、、戦場にはいかない。わたしは王にはならないから」
「何事も色んな可能性を考慮して布石を置いておくこと、と先生が言ってなかったか?
万が一、戦場にでるかも知れないときのために、鍛えておいてもいいだろ?
俺は戦場にでるのは決定事項だ。そして、あんたを守るかもしれないから、護衛役の俺からの未来からのお願いだ」
遠くでガルシアを呼ぶ声がする。
ガルシアは手を伸ばし、つられてリヴェールはその手をつかんでしまう。
ひょいと起こされた。
同じ年なのに、体の強さは格段にガルシアが上だった。
そもそもリヴェールはたいして運動もしていない。
その軽さにガルシアは眉を寄せる。
「あんた、ヤバイよ?王族は短命な男が多いが、本当に体を鍛えた方がいいと思う、少なくともここにいる間だけはな!明日からな!」
しぶしぶながらも、リヴェールは首肯いてしまう。
その返事は輝く笑顔だった。
その時、王位継承順位5位のリヴェールと五大貴族の息子ガルシアは15才。
孤独な異質な者同士は、足りない半身を求めるように、惹き付けられたのだった。
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