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第6話 顔のない女
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「著作物の盗作ともいえないし、倫子さんがほっぺにハートを描いたぐらいでそれを窃盗といわれたってぴんと来ないんだけどなあ」
その視線は答えを求めて、いつものように隣に坐るわたしに向かうが、視線が合う前に華蓮の隣に友人代表のように坐っていたサイラスに向かう。
気まずい。
わたしは神坂のメールを既読無視をしたのに、華蓮が困っているので助けて欲しいというメールひとつで、タクシーを飛ばして来てくれた神坂に、このままでは愚痴のはけ口に利用してしまっている。
「あのロケハン、倫子がヒロインの映画撮影デスね」
花蓮の顔がゆがむ。
「そうよ、倫子演じるぶっ飛んだ教師が、いろんな問題を抱える高校生とぶつかりながら、教師は持ち前の明るさでひとつにまとめ上げて、いちからはじめた合唱コンクールで優勝するという映画よ。わたしも、わたしも生徒の一人としてキャスティングされていたのに。わたしとイメージがかぶるからって、わたしが外されたのよ……」
華蓮の目から大粒の涙がこぼれ出す。
「華蓮……」
わたしはどう慰めたらいいかわからない。
「先ほども思ったのだけど、倫子さんがぶっ飛んだ教師で君が高校生?
どうしてだい? ああ、それが演技っていうわけか。それに君と倫子さんのイメージがそもそもかぶりそうもないけど、それも演技なのか……」
神坂は自問自答し、妙に納得している。
「神坂さん、直接見に行きませんか。ちょうど撮影をしているようですし、カレンがリンコを泥棒呼ばわりするワケがわかるのかもしれまセン。興味がありマス」
「それもそうだな」
「わ、わたしは嫌よ、絶対にいかない。確認するのならわたしの替わりにミーナが見て証人になってよ、お願い」
神坂は依頼人を見下ろした。
「これで下見をすることになり着手金が発生する。依頼人はどうしてほしい? 公的には無理かもしれないけれど、私的に彼女を罰してほしいのか、やめさせるだけでいいのか、やめさせた上で、精神的苦痛の賠償を個人的にさせたいのか」
「いますぐ止めさせて、人の努力を涼しい顔して盗むようなヤツ、芸能界から追放して!」
「追放!?」
華連の激しさに驚いたのはわたし。「了解」と言ったのは神坂。
花蓮を残し、わたしたちは撮影現場に向かったのである。
その視線は答えを求めて、いつものように隣に坐るわたしに向かうが、視線が合う前に華蓮の隣に友人代表のように坐っていたサイラスに向かう。
気まずい。
わたしは神坂のメールを既読無視をしたのに、華蓮が困っているので助けて欲しいというメールひとつで、タクシーを飛ばして来てくれた神坂に、このままでは愚痴のはけ口に利用してしまっている。
「あのロケハン、倫子がヒロインの映画撮影デスね」
花蓮の顔がゆがむ。
「そうよ、倫子演じるぶっ飛んだ教師が、いろんな問題を抱える高校生とぶつかりながら、教師は持ち前の明るさでひとつにまとめ上げて、いちからはじめた合唱コンクールで優勝するという映画よ。わたしも、わたしも生徒の一人としてキャスティングされていたのに。わたしとイメージがかぶるからって、わたしが外されたのよ……」
華蓮の目から大粒の涙がこぼれ出す。
「華蓮……」
わたしはどう慰めたらいいかわからない。
「先ほども思ったのだけど、倫子さんがぶっ飛んだ教師で君が高校生?
どうしてだい? ああ、それが演技っていうわけか。それに君と倫子さんのイメージがそもそもかぶりそうもないけど、それも演技なのか……」
神坂は自問自答し、妙に納得している。
「神坂さん、直接見に行きませんか。ちょうど撮影をしているようですし、カレンがリンコを泥棒呼ばわりするワケがわかるのかもしれまセン。興味がありマス」
「それもそうだな」
「わ、わたしは嫌よ、絶対にいかない。確認するのならわたしの替わりにミーナが見て証人になってよ、お願い」
神坂は依頼人を見下ろした。
「これで下見をすることになり着手金が発生する。依頼人はどうしてほしい? 公的には無理かもしれないけれど、私的に彼女を罰してほしいのか、やめさせるだけでいいのか、やめさせた上で、精神的苦痛の賠償を個人的にさせたいのか」
「いますぐ止めさせて、人の努力を涼しい顔して盗むようなヤツ、芸能界から追放して!」
「追放!?」
華連の激しさに驚いたのはわたし。「了解」と言ったのは神坂。
花蓮を残し、わたしたちは撮影現場に向かったのである。
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