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第3夜、憑き物落とし
18-3、
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「ど、どうしてそこまで……」
してくれるの?
「俺がそうしたいからで十分ではないか?」
僕の口が動いている。
話しているのはクロなのに、今のかすれた僕の声ではなく、僕が記憶している張りのある僕の声であった。
そうして僕は、日に日に全身の筋肉が一筋一筋硬直していく肉体を捨てた。
強くて元気な身体を手に入れたのだった。
俺は、全てを思い出した。
俺自身が、クロに取り憑いた生き霊。
祓われるのは、早坂紫苑、俺自身なのだ。
「……なあるほど。神獣である己自身を人型にして、人間の精神を取り憑かせたのだな。クロ、いや白犬は人が成長するのを計算にいれていなかった。記憶のままの早坂紫苑を再現し、己を封印したから、霊力でもって成長させることができなかったのだな。年月が経つにつれて、生霊は成長しないからだに疑問を抱く。精神と肉体との齟齬が、消耗を誘う。零体の生気を補うために、無意識に女を襲って、生気を吸っていたということなんだな。憑きもの落としとなるとその精神を払うことになるが、さて、取引はどうしたものか」
迷う素振り。
この男はこの状況を楽しんでいる。
「やめる!」
「実行してほしい!」
紫苑は二つのことを同時に叫ぶ。
その目から大粒の涙がほろほろとこぼれおちた。
腕が己の身体をいとおしむように抱きしめる。
「クロが僕に猶予を与えてくれた。自由に動き、夢を追う楽しさを存分に味合わせてくれた。クロ、死にゆく僕に、時間をくれてありがとう。拾ったときからずっと愛してるよ。僕はもう満足したよ、本当にもう十分だよ、クロ、もう目覚めているんだろ?この体の奥に、閉じ込められて動き出したくてうずうずしているクロの熱い塊を感じるよ、体を返すよ、誰よりも愛しているよ……」
そう言い終わるやいなや、早坂紫苑は膝から崩れ落ち形がとろける。
白い塊だけが、残った。
してくれるの?
「俺がそうしたいからで十分ではないか?」
僕の口が動いている。
話しているのはクロなのに、今のかすれた僕の声ではなく、僕が記憶している張りのある僕の声であった。
そうして僕は、日に日に全身の筋肉が一筋一筋硬直していく肉体を捨てた。
強くて元気な身体を手に入れたのだった。
俺は、全てを思い出した。
俺自身が、クロに取り憑いた生き霊。
祓われるのは、早坂紫苑、俺自身なのだ。
「……なあるほど。神獣である己自身を人型にして、人間の精神を取り憑かせたのだな。クロ、いや白犬は人が成長するのを計算にいれていなかった。記憶のままの早坂紫苑を再現し、己を封印したから、霊力でもって成長させることができなかったのだな。年月が経つにつれて、生霊は成長しないからだに疑問を抱く。精神と肉体との齟齬が、消耗を誘う。零体の生気を補うために、無意識に女を襲って、生気を吸っていたということなんだな。憑きもの落としとなるとその精神を払うことになるが、さて、取引はどうしたものか」
迷う素振り。
この男はこの状況を楽しんでいる。
「やめる!」
「実行してほしい!」
紫苑は二つのことを同時に叫ぶ。
その目から大粒の涙がほろほろとこぼれおちた。
腕が己の身体をいとおしむように抱きしめる。
「クロが僕に猶予を与えてくれた。自由に動き、夢を追う楽しさを存分に味合わせてくれた。クロ、死にゆく僕に、時間をくれてありがとう。拾ったときからずっと愛してるよ。僕はもう満足したよ、本当にもう十分だよ、クロ、もう目覚めているんだろ?この体の奥に、閉じ込められて動き出したくてうずうずしているクロの熱い塊を感じるよ、体を返すよ、誰よりも愛しているよ……」
そう言い終わるやいなや、早坂紫苑は膝から崩れ落ち形がとろける。
白い塊だけが、残った。
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