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第2話アデュラリア女王
9.宝箱
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「なんと大見得きったのですか」
うなだれるリリアスを前に、ノアールは楽しそうだった。
ノアールとリリアスは今までいくつもの呪縛を解いてきている。
今回も女王の心の氷を溶かして春を呼べないかの相談である。
既にらしくなく啖呵を切ったことをリリアスは後悔しているが、ムハンマドを渡すつもりはない。
ムハンマドも大部屋にバラーと共に来ている。
「これとおんなじものが、アデュラリアの意識のなかにもあったように思う。厳重に扉で塞がれていたんだ。
何か関係しているような気がするんだけど」
くるくる廻し、いろんなところを押したりするが、細工もののようで開かない。
よくみると細工のひとつづつに文字が彫られている。適当な組み合わせで押して開けるようだ。
デンドロン、
春、
アデュラリア、
、、
思い付く限りの単語を押すのだが、箱はぴくりとも反応しない。
皆目検討が付かなかった。
ずっと個人的な言葉なのかもしれない。
「その箱に見覚えがあるような気がするのですが、、?」
なぜか作戦会議に参加している第1の騎士ジュード。
「頑張って思い出せ!」
バードがいう。
二年前の出来事も気になる。
アデュラリア女王の恋人だったジュードの兄の滑落事故。
「お前の兄の遺体は見つかったのか?事故の場所は?」
バードはきく。
バード以外の、初耳だった一行のためにジュードはもう一度、第1の騎士でありアデュラリアの恋人であった兄が、二年前に滑落事故で亡くなり、以来デンドロンに春が来ないことを伝える。
「お兄さまの遺体は見つかったのですか?」
ノアールは神妙な顔をしていた。
「兄の遺体は見つかりました。アデュラリアに引き渡しがなされました。
既に口約束ではありましたが婚約しておりましたから」
「王族の遺体安置所に眠っているはずです。わたしはあれから兄にあったことはありませんが、、」
「兄の名前は何ていうんだ?」
ムハンマドは訊ねた。
どうやらジュードの兄がキーパーソンのようだった。
彼は、リリアスが自分をアデュラリアに渡さないと宣言したことを聞いて、死にそうなリリアスには申し訳ないとは思いつつ、ひとり内心ご機嫌だった。
自分ではなく、他人へ自分への執着を示すなんて、愛されてはいないか?
自由をこよなく愛しているリリアスが己を自分のもの宣言をするなんて、それだけで海を渡り遠い冬の国に来たかいがあったようなものではないか?
「兄の名はクリード」
カツン。
リリアスの手の中で、アデュラリアの宝石箱が軽い音を立てて開いた。
驚いて全員の視線がリリアスに、開いた箱に集まった。
「なんて、言葉だったのだ?」
ムハンマドは訊ねた。
「永遠の愛をあなたに クリード」
リリアスは押さえた文字を思い出した。
名前を聞いたときに、指が勝手に動いたのだ。何度も押したことがあるかのように。
リリアスが宝箱からとりだしたのは、
ちいさな鍵と男物の指輪。
白い控えめな石がはまっていた。
それをみて、ジュードは思い出した。
帰らない兄の部屋の机の上にあった同じような寄木の細工箱。
「取りに帰ります!!」
すぐにジュードは戻ってきた。
リリアスに手渡される。
クリードの愛が感じられた。
リリアスの指は勝手に動き言葉を紡ぐ。
「わたしの愛しい人 アデュラリア」
カツン。
中からは同じく白い石の指輪。
「婚約指輪だ、、」
突然の滑落事故により、お互いに交換できなかった婚約指輪。
ノアールはリリアスをみる。
「明日の夜、アデュラリアは歓迎の宴を開きます。わたしは歌いますが、リリアスもご一緒にいかがですか?」
リリアスは、ほとんどのピースが揃った気がしていた。
自分には精霊の力は使えない。
「やめておけ。歌うな」
ムハンマドは止める。
いざとなれば、ムハンマドがアデュラリアを抱けばいいだけだった。
だが、それは、リリアスには絶対に許せないことだった。
「ノアールの歌を聴けるのですね。ご一緒にリリアスさまも??」
空気の変化をジュードは理解できない。
ノアールは歌わせたくて、ムハンマドは歌わせたくない?
バラモンの前王が亡くなり現王バーライトがたったとき、ノアールも参加していたと報告書の記述があったことを思い出す。
吟遊詩人は、前王の業績を称える歌をうたい退位を促した、とあったか?
その場で王子であるムハンマドの隣にいたのは黒髪の娘。
リリアスでなければ、その黒髪の娘は誰だったのだ?
リリアスは覚悟を決めた。
「クリードが最後に歩んだ道を見たいのです。明日の朝、案内していただけますか?ジュード?」
黒曜石の目がジュードを見つめた。
なぜかどきっとした。
うなだれるリリアスを前に、ノアールは楽しそうだった。
ノアールとリリアスは今までいくつもの呪縛を解いてきている。
今回も女王の心の氷を溶かして春を呼べないかの相談である。
既にらしくなく啖呵を切ったことをリリアスは後悔しているが、ムハンマドを渡すつもりはない。
ムハンマドも大部屋にバラーと共に来ている。
「これとおんなじものが、アデュラリアの意識のなかにもあったように思う。厳重に扉で塞がれていたんだ。
何か関係しているような気がするんだけど」
くるくる廻し、いろんなところを押したりするが、細工もののようで開かない。
よくみると細工のひとつづつに文字が彫られている。適当な組み合わせで押して開けるようだ。
デンドロン、
春、
アデュラリア、
、、
思い付く限りの単語を押すのだが、箱はぴくりとも反応しない。
皆目検討が付かなかった。
ずっと個人的な言葉なのかもしれない。
「その箱に見覚えがあるような気がするのですが、、?」
なぜか作戦会議に参加している第1の騎士ジュード。
「頑張って思い出せ!」
バードがいう。
二年前の出来事も気になる。
アデュラリア女王の恋人だったジュードの兄の滑落事故。
「お前の兄の遺体は見つかったのか?事故の場所は?」
バードはきく。
バード以外の、初耳だった一行のためにジュードはもう一度、第1の騎士でありアデュラリアの恋人であった兄が、二年前に滑落事故で亡くなり、以来デンドロンに春が来ないことを伝える。
「お兄さまの遺体は見つかったのですか?」
ノアールは神妙な顔をしていた。
「兄の遺体は見つかりました。アデュラリアに引き渡しがなされました。
既に口約束ではありましたが婚約しておりましたから」
「王族の遺体安置所に眠っているはずです。わたしはあれから兄にあったことはありませんが、、」
「兄の名前は何ていうんだ?」
ムハンマドは訊ねた。
どうやらジュードの兄がキーパーソンのようだった。
彼は、リリアスが自分をアデュラリアに渡さないと宣言したことを聞いて、死にそうなリリアスには申し訳ないとは思いつつ、ひとり内心ご機嫌だった。
自分ではなく、他人へ自分への執着を示すなんて、愛されてはいないか?
自由をこよなく愛しているリリアスが己を自分のもの宣言をするなんて、それだけで海を渡り遠い冬の国に来たかいがあったようなものではないか?
「兄の名はクリード」
カツン。
リリアスの手の中で、アデュラリアの宝石箱が軽い音を立てて開いた。
驚いて全員の視線がリリアスに、開いた箱に集まった。
「なんて、言葉だったのだ?」
ムハンマドは訊ねた。
「永遠の愛をあなたに クリード」
リリアスは押さえた文字を思い出した。
名前を聞いたときに、指が勝手に動いたのだ。何度も押したことがあるかのように。
リリアスが宝箱からとりだしたのは、
ちいさな鍵と男物の指輪。
白い控えめな石がはまっていた。
それをみて、ジュードは思い出した。
帰らない兄の部屋の机の上にあった同じような寄木の細工箱。
「取りに帰ります!!」
すぐにジュードは戻ってきた。
リリアスに手渡される。
クリードの愛が感じられた。
リリアスの指は勝手に動き言葉を紡ぐ。
「わたしの愛しい人 アデュラリア」
カツン。
中からは同じく白い石の指輪。
「婚約指輪だ、、」
突然の滑落事故により、お互いに交換できなかった婚約指輪。
ノアールはリリアスをみる。
「明日の夜、アデュラリアは歓迎の宴を開きます。わたしは歌いますが、リリアスもご一緒にいかがですか?」
リリアスは、ほとんどのピースが揃った気がしていた。
自分には精霊の力は使えない。
「やめておけ。歌うな」
ムハンマドは止める。
いざとなれば、ムハンマドがアデュラリアを抱けばいいだけだった。
だが、それは、リリアスには絶対に許せないことだった。
「ノアールの歌を聴けるのですね。ご一緒にリリアスさまも??」
空気の変化をジュードは理解できない。
ノアールは歌わせたくて、ムハンマドは歌わせたくない?
バラモンの前王が亡くなり現王バーライトがたったとき、ノアールも参加していたと報告書の記述があったことを思い出す。
吟遊詩人は、前王の業績を称える歌をうたい退位を促した、とあったか?
その場で王子であるムハンマドの隣にいたのは黒髪の娘。
リリアスでなければ、その黒髪の娘は誰だったのだ?
リリアスは覚悟を決めた。
「クリードが最後に歩んだ道を見たいのです。明日の朝、案内していただけますか?ジュード?」
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