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22話:書いた小説の話題で増刷

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 7月、「帝銀事件編」の本が増刷をして評判になった。8月の休み、伊賀は、長野県の栂池、白馬高原に行き散策し1泊。翌日、大町山岳博物館、大王わさび農場をへ行った。その後、松本城近くの美味しい蕎麦屋で昼食をとり松本城の見学してくの写真を撮った。

 この頃に、伊賀は、すっかり主夫になり炊事、洗濯、買い物も安くてうまいものを仕入れた。一方、伊賀が、出版した3冊の小説の2巻目「帝銀事件編」のスキャンダラスな投書が出版社に送られ騒動になり、その話題で小説が売れて印税が増えた。

 今年は、1巻目の「軍医時代の経験」に同時期を過ごした年代の男性達からの投書が話題を呼んだ。その内容は、小説に書いてある様に人命救助の観点から、日本人の兵隊も中国人も分け隔てなく助けたというくだりについて多くの異論が飛び出した。

 日本軍の肩を持つ発言、行動が多かったとの投書が発表された。このため今年も昨年に続き、「軍医時代の経験」「帝銀事件編」「下山事件編」がワイドショーで取り上げられ中高年に話題を提供したのだった。そのため昨年以上に伊賀の書いた本が売れ続けた。

 その他、この年の日本列島は猛暑。梅雨明け以降、広い範囲で猛暑に襲われた。7月22日に岐阜県多治見市で最高気温となる39.4度を観測。8月の平均気温はほぼ全国で戦後最高を記録。6月から8月の平均気温も平年より1.64度高く過去最高。

 熱中症により高齢者ら多数が死亡。総務省消防庁によると7から9月の3カ月間に熱中症のために救急車で病院に運ばれた人は5万3843人と前年の4倍強。気象庁の異常気象分析検討会は「30年に1回の異常気象」と指摘。北半球中緯度の気温がエルニーニョ現象。

 それに続くラニーニャ現象で上昇した所に勢力の強い太平洋高気圧の影響を受けたのが原因とした。このため首都圏では、クーラー使用による電力不足が懸念された。この年の夏休み、伊賀家の全員で北海道旅行へ出かけた。

 自宅から羽田空港へ行き、千歳空港に昼過ぎに到着。ハイエースのレンタカーを借りて釧路に向かった。数日、涼しさを満喫し帯広に移動して2泊した。千歳空港に戻ってくる時、厚真町の山沿いに広い別荘見つけた。

 その別荘は、千歳空港にも苫小牧も近く便利。サラブレッド牧場で有名なの日高も近く札幌に出るのも便利である。そこの広々とした立派な別荘を見て、伊賀は、欲しくなった。その話をすると奥さんも賛成し家族も夏に涼しい所は良いと言うので買う気になった。

 そこで苫小牧に2泊して土地の価格を聞いてみると、安く、北海道民・富裕層の木造の別荘も数多くあることが分かった。そこで別荘を取り扱っている不動産屋に行、資料をもらった。無指定地域で建ぺい率は小さいが、価格は、安い。

 道外の人には、千歳空港が近いのが一番のメリットと話した。実際に、名前を明かすわけにはいかないが有名人、芸能人も数人、別荘を持っていると教えてくれた。その後、インターネットに伊賀実業で、書籍化の仕事、具体的には、小説を完成させた。

 そして100部製本で10万円で請け負うと宣伝を載せると、問い合わせの電話がかかったり、メールが入ったりし始めた。1998年が終わり1999年を迎えた。1998年1月4日1泊で伊賀は、夫婦で熱海温泉に出かけ15時頃到着。

 翌、1月5日、10時過ぎに来宮神社へ行た。昨年、本の売上げ好調で5千万円印税が入り伊賀の資産が3.3億円となった。来宮神社の大楠の周りをゆっくりと回ると、突然、めまいがした。近くの喫茶店に入ると列車の席に座ってる自分が見え列車が止まり心配そうにしていた。

 その後、車内アナウンスで、停車信号が出たので少し停車しますと聞こえた。その映像が、霧が晴れるような感で、すっと消え、めまいの様な気持ち悪さも消失した。何か変だなと思いつつも初詣をしてた。そして自分と家族の健康と嫌な事が起きない事を祈願していた。

 そして、昼を食べ15時過ぎの上り東海道線に乗った。小田原を抜け太平洋の見える席に座り海を眺めた。大磯を過ぎた所で急に列車が減速し車内アナウンスで停車信号なので停車しますと聞こえた。あれ、これ、さっき頭に浮かんだ映像と同じだと感じ思わず寒気がした。
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