無頼・証券マン、哲二

１８話：やばいよ、大手証券２

　１９９２年に三木淳夫が社長に就任した後も、事実上の決裁権限は全て会長の行平が握っており、山一證券が簿外債務を処理することはなかった。簿外債務は日本で１５８３億円、世界で１０６５億円あった。日本の簿外債務の分を飛ばすためにクレディ・スイス信託銀行で特定金銭信託口座を開設し２千億円分の日本国債を購入させている。

　山一証券は、これを子会社のペーパーカンパニーへ貸し出しつつ買い戻して、これらの子会社へ損失補填用資金を流した。世界の分は外国債券を損失補填した含み損であり、その外債を山一オーストラリアへ、買い戻す約束で売却したものである。

　１９９７年３月２５日、野村證券に対して、東京地方検察庁と証券取引等監視委員会の家宅捜索が入った。容疑は総会屋・小池隆一への利益供与であった。１９９２年７月２０日朝、ホンダ株を１１２０円で３万株買いを入れ、３３６０万円で買えて投資残高が８６４０万円となった。

　１９９２年８月１９日にソニー株を３４００円で２万株を６８００万円で買い投資残高が１７６０万円となった。１９９３年８月に兄の健一は今度は米国西海岸のカリフォルニア州立大学のサンディエゴ校に１ケ月の留学した。今回は費用が寮に入ることもあるのか２百万円だった。

　翌年１９９４年は妹の小百合と共にカリフォルニア州立大学サンディエゴ校に１ケ月の留学。小百合はセキュリティの良い、ボディガードが常駐する特別の寮に入るため２５０万円の留学費用がかかった。

　もちろん、翌年も出かけた。この年、両親も一緒にサンディエゴとラスベガスへ１週間の旅行に出かけて、特にラスベガスの高級ホテル・シーザースパレスホテルとミラージュホテルに泊まり、そのスケールの大きさに驚かされた。もちろん、お決まりのグランドキャニオンへ飛行機で出かけその壮大な景色を見て、多くの写真を撮って帰って来た。

　１９９５年での３年満期のスポットファンドが６２７５万円となり今年で運用が出来なくなり、販売を中止するという話が起きた。１９９６年３月に健一は早稲田大学理工学部電子工学科を卒業してソニーに入社して２年目には留学経験を生かすためソニーアメリカに移動した。

　１９９７年３月小百合は早稲田大学商学部を卒業し、新しくできたユニクロという奇妙な名前の会社に入社して行った。その後、１９９９年にアメリカに出店すると言う事でその仕事のために１０人のチームでアメリカへ行き、そのまま米国支社で働くことになった

　１９９７年４月１７日、週刊東洋経済が『山一證券を襲う重大疑惑の真相』という、山一證券が優良顧客への損失補填と簿外債務を抱えている「追及第1弾記事」を掲載。１９９７年４月２８日に発表された山一の１９９７年３月期決算は１６４７億６３００万円という過去最大の当期損失となった。

　山一はこの危機をメリルリンチとの提携で乗り切ろうとする。１９９７年６月２１日、東洋経済新報社の週刊東洋経済６月２８日号が続報を詳細に調べた「追及第２弾記事」を掲載した。この記事により金融機関に動揺が広がる。総会屋利益供与問題の責任を取って、１９９７年８月１１日に行平・三木を始めとする取締役１１人が退任した。

　後任として社長に野澤正平、会長に五月女正治の両専務が昇格することが発表された。１９９７年９月２４日に、前社長の三木が総会屋利益供与事件で逮捕された。１０月６日、常務の渡辺と前副社長の沓澤龍彦が富士銀行を訪れて、「飛ばし」と呼ばれる簿外債務の存在を明らかにすると共に、再建計画を説明し、支援を求めた。１０月２３日は、山一證券の中間決算発表日だった。

　しかし、当日、東京地方検察庁特捜部が「昭和リースに対する損失補填容疑」で家宅捜索に入った。記者会見は２７億円の経常赤字の発表と利益供与事件拡大の謝罪で終わった。１１月１１日、富士銀行から最終回答があった。劣後ローンは富士からは２５０億円程度が限度で、あとは他行から借り入れて欲しい過去に無担保で融資した分について早急に担保を差し入れて欲しいという内容であった。