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10話:講演会と2次会での出来事

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 それは、非現実的だ。さらに医療関係者が昔の共産党系の医療機関みたいなことを言うなと、丹沢先生は顔色を変えて言った。医療を良くするできるところからしなければ、医療の発展はない。理想的な事を論じてる時間など残されてないと強い口調に述べると会場から割れんばかりの拍手が巻き起こった。これで、終了時間となりました。しかし、この後、近くのホテルのレストランで会場を用意してますと告げた。

 そので、多くの忌憚ない意見や議論をしたい人は、是非、お越し下さいと佐藤がマイクで、伝えた。そして、これで静岡高度臨床検査センター設立委員会総会を終了を宣言しますと言い会議が終了した。すると会場出口には15、16人の人が2次会へ参加するようだった。そして、佐藤さんが丹沢さんに、あなたの泊まるホテルのレストランですと言い、一緒に参加しましょうというと笑いながら、望むところですと言った。

 会場のレストランに着くと全員で泉田誠一を含め14名が参加した。最初にみんなでビールで乾杯した。そして話が始まり泉田誠一が今日の会議は論点がしっかりして議論らしい議論ができ、佐藤さんの議長ぶりもさすがだと持ち上げた。すると佐藤が、そんなに持ち上げても酒代は自分持ちだからなと笑いながら言った。そして他の若手から丹沢先生の資料は貴重な情報で非常に参考になったとほめた。

 そして最後に、政府の補助金を回しても、地方都市でも大都市と同じ医療を受けられるべきだという意見に対して、真っ向反対した時の迫力には驚いたといった。すると丹沢さんが、あの中国共産党の鄧小平でさえ、1985年に先富論を唱え「我們的政策是譲一部分人、一部分地区先富起来、以帯動和幇助落伍的地区、先進地区幇助落伍地区是一個義務」と言った。

 わかりやすく言えば「先に豊かになれる人が豊かになり、豊かになった人は他の人も豊かになれるように助ける」と言ったのだ。あの共産主義の指導者さえ、こう言ったのに自由主義、資本主義の日本の若者が時代錯誤な平等論を言うから、ちょっとカチンと来て言いすぎたと笑っていた。ただ、これから日本の医療をどうすべきかという人達が新しい時代を建設的に作り上げていくべきである。

 その足を引っ張るような意見は、決して言うべきでは無いと言うが私の持論だと言い、この信念があるから今迄もやってきたし、今後もやっていけると思うと言った。決して安易な妥協はすべきではないと考えていると言うと、そんな信念を持っているから若いのだと、若い女性が言うと、そう言ってくれると、うれしいねと笑った。

 次に、丹沢さんが、手の内をばらすようでなんだが、数ヶ月前に佐藤さんから電話をもらって、実はいろいろ検討してみて、静岡で高度臨床検査センターを作るのは、難しいと言う結論に達したのですがどう思われますかと聞かれたときには、さすが、よく調べたと思ったと言った。

 私の首都圏の高度臨床検査センターの稼働率の詳細資料をこの会合で見せる気になったのも佐藤君の電話がきっかけなんだと打ち明けた。佐藤君の立場として最初、静岡にセンターを作ろうと「静岡高度臨床検査センター設立委員会」を作ったわけで、それを確かに理論的に考えればそうなるのだが、なかなか柔軟に、難しいと言う結論に達したとは言えないよ。

 そこが、彼の懐の深い、全国でも十分通用する度量の持ち主だと褒めちぎった。そう言われると照れちゃうなーと言った。丹沢さんが首都圏の検査依頼数と実施状況、開設翌年からの営業時間の延長と土日営業の状況をグラフと図はトップシークレットだから、間違っても写真を引用したりはしないでくれと念を押した。すると、若手から実際、あれだけの費用がかかっていること、それを毎年返済していく事は、数字がわからないと絶対言えない。

 それに、あのグラフを見せられたが、直ぐに、首都圏ほど人口の多くない静岡で高度臨床検査センターを作ろうとは言えなくなるのは、良くわかったと言った。それがわかってくれれば、東京から、わざわざ丹沢先生を呼んできた会があるってものだと佐藤さんが喜んだ。泉田健一が、それでも、折角ここまでやってきたのだから、静岡にと限定するつもりはない。
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