上 下
14 / 32

13話:加藤の苦労話と家の改修工事

しおりを挟む
「うまいことやって大金を稼ごうと思って入学した」
「しかし2年目の5月に体調を崩して病院に行くと結核で隔離病棟に入院と言わた」
「その後、1ケ月が過ぎ3ヶ月が過ぎても、いっこうに良くならない」
「大学2年生の終了時、留年と言われて1年が過ぎると規定により中退となった」

「それが悔しくて世の中、家族を恨み、すさんだ生活を続けた」
「しかし、いくらすねてみても、どうにもならない事を思い知らされた」
「そのため、長い間、納得できず、自暴自棄になっていた」
「それを見て、父が、なけなしの退職金から10万円を渡して好きな所で生活しろと言ってくれた」

「私の事を知る人が1人もいない山奥の藤野に落ち延びたって訳さ」
「その後、家庭教師や音楽、美術の先生をして生活を続けたと語った」
「その時代の事が走馬灯の様に頭の中を駆け巡って自然と涙が出て来たと話した」

「範子さんが、加藤さんに、そんな可哀想な過去が、あるなんて知らなかったわと告げた」
「でも1人だけで、ずっと生きてきたなんて、すごい事だわと驚いた」
「いや、最近、ここの竜二君と出会ったり範子さんみたいな元気な才媛にめぐり逢う事があって人生捨てたもんじゃないと再び希望を持ったと語った」

「すると範子さんが突然、乾杯の準備をしてと言った」
「これから加藤さんに良い人が現れますようにと言って乾杯と元気よく声をあげた」
「照れながら加藤さんが、本当に範子さん元気で明るい良い娘さんだねと笑った」

 これからも宜しくねと握手した。そして範子さんの合格パーティーが終わって、かたづけて、竜二と範子さんは、加藤さんの家を後にした。1970年4月、神奈川県北部も、やっと霜が溶け、暖かくなった。

 そして、竜二の仕事も忙しくなり預金も300万円に増え資産が300万円となった。その後、昔からの友人の木村秀一から電話が入った。用件は、将来生まれてくる子供のために、離れに台所と風呂場を作りたいとから来て欲しいと言われた。

 4月8日に木村の家に行き、台所と風呂場を作るには、新しく10畳以上の大幅な増築が必要だろうという話になった。竜二が、1軒家を作るのは、俺には無理だと打ち明け、地元の工務店に頼めと告げた。

 そして竜二の親戚で長年大工の棟梁をしていて、最近、正式に工務店を立ち上げた伯父の山倉健介を紹介すると話した。そこで、直ぐ電話を入れると、直ぐ来ると言ってくれ15分位でやってきた。そして木村が家を建てたいという話をして木村君を紹介した。

 伯父が、パンフレットと図面を見せて木村と話し始めた。そして打ち合わせを終えて初めての仕事だから、しっかりやれと伯父が話した。その後、竜二も空いている日には、木村の家づくりに協力し、6月15日までに改修工事を終えた。

 そして電気製品を揃えたいと職人に聞くと4、5月は新製品との入れ換え時期だから在庫品が残っていれば、安く買えると言われた。その店も教えてもらい木村と奥さんがついて行った。

「竜二の親戚の店に行き、竜二が、木村に、ここで全部揃えられれば、一括購入で値切れると教えた」
 一緒についてきてと言われ、奥さん冷蔵庫、ガスコンロ、換気扇、エアコン、テレビ、コタツ、石油ストーブ、洗濯機、掃除機、電気釜などの商品を指定。

「総額で、50万円を越えたので、全部でいくらと竜二が聞くと店員が電卓ではじいて65万円と言った」
「そりゃ高い。あんた、ここに書いてある価格を足しただけじゃないかと高圧的に抗議した」

「すると、ちょっと待って下さいというと恰幅の良い販売課長と称する人が来て60万円と話した」
「なんだ、端数切っただけかよと竜二が、大きな声でどなった」
「じゃー仕方ない他の店を探そうと引き上げる素振りをした」

 すると店長らしい男が飛んできた。そして、
「いくらならお買い上げいただけるのですかと聞いた」
「50万円なら自分で運ぶと言うと、そんな殺生な、65万円でも定価の20%以上値引きしてます」
「そう言うので、嫌なら仕方ない店を変えようとドスのきいた声で竜二が告げた」
しおりを挟む

処理中です...