集団就職の星

ハリマオ65

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20話:子供たちのアメリカ留学2

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 その後1998年も7月を迎えて、智惠さんが和子さんに、アルバイトで、いくら貯まったと聞くと金額は言えないけど、30万円の補助で大丈夫と笑いながら言った。それなら宜しいと言い30万円を直接渡した。自分で電車に乗り出かけて行った。もちろん、その後も毎週1~2回、日本時間の朝7時頃に電話をかけてきた。その話によると今年はサンディエゴのアメリカ人家に、同じ年の女の子がいた。

 そのため楽しく、ホームステイしていると話した。今年の授業も、そんなに、みっちりと組まれていないのでシアトルからロサンゼルスまで、アムトラック・列車の旅をしてくると言った。7月18日に今回は、自分で行けると言い目黒駅まで送って手を振って電車の乗り込んで行った。海藤和子は、留学の前に、シアトルからロサンゼルスへの列車旅を計画した。

 シアトル駅近くに宿を取り1泊し昼食をとった。シアトルのキングストリート・ステーションに到着したのは出発1時間半前。荷物を預けて、出発30分前に並び始めたが、「停電により遅延」とスピーカーから聞こえた。日本の様に「お急ぎのところ申し訳ありません」的な話しはなく、むしろ駅員のオバさんはピリピリ怒っていた。アムトラックは幸い15分遅れで乗車。「ようこそ!」、良い声の客室乗務員のサムが迎えてくれた。

 個室は向かい合わせのシートをスライドするとフルフラットのベッドになる。2人利用の場合は、車窓の上に畳んであるベッドを倒して2段ベッドになるが、頑丈そうだった。アムトラックが動き始めたら、早速車内を探検。寝台車には、個室の他にシャワールームやトイレがある。コーヒーや水、氷、タオル類は自由に使えるように常備。

 隣のパーラーカー・寝台車・一等車乗客専用特別車、ラウンジカー・展望車では、ワイングラスを傾ける人、新聞や本に読み入る人、ゲームに興じる親子連れなど、それぞれに楽しんでいる。 客層はシニアのカップルが多いのだけど、シニア男性グループ、女性同士、若いカップルなどさまざま。ご機嫌で個室に戻った。2階建ての寝台車の車窓を、ワシントン州の風景が時速30マイルで流れる。

年中温暖でカラッとしてるロサンゼルス、サンディエゴが気候なら世界で一番だと思っているけど、風景の美しさはワシントン州、オレゴン州の方が良い。みずみずしい緑と清らかな水と空。眺めているだけで心が洗われる。ワシントン州には、親切な人が多いけど、こんな風景の中で生きていると心まで優しくなれるのだろうか。1日目の昼食、ポートランドからエメリーヴィルを抜けサンフランシスコ。

食堂車での食事は相席で、多くの人の話し声が聞こえて、面白かった。しかし会話に参加せず、話しかけられたと答える程度で、こちらから話すことはなかった。乗客の話の内容はと言えば、ティムは、シアトル在住でトーランス育ち。10日間の滞在で、トーランスの父親とラグナビーチに住む母親を訪ねる。ふと、このアムトラックに乗っている、全ての乗客に、おもいをめぐらせた。

 笑っていたり、平気な顔をしているけど、何の悩みも痛みも抱えてない人なんていないんだろう。ジェフは場を盛り上げるように
「この国の列車は日本より50年遅れている、日本の新幹線は大したもんだ」と笑った。
「新幹線は時速200キロで正確に着くけどアムトラックは時速100キロで到着するでも時間は正確じゃない」と言うわけだ。

 出発前にスタッフや家族から「えっ、36時間」と驚かれたけど、ちょっと違うんだな。1週間のクルーズに「えっ、168時間」とは言わない。アムトラックは、目的地に正確に最短時間で到着するための手段ではない。2日目は個室から車窓の景色を楽しんだ。車窓からは、サンフランシスコの橋の橋脚だってくっきり見える。
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