集団就職の星

ハリマオ65

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21話:シアトルからロスへの列車旅2

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 2日目の朝、エメリーヴィル、サンフランシスコからオークランド、朝6時過ぎに目覚めたとき、アムトラックはサクラメントの駅に停車していた。まだ辺りはほの暗い。普段より深い眠りを得られた。いれ立てのコーヒーを飲みながら、朝日に彩られていく草原や流れる川の風景をただしばらく眺めている。静かな時間の中で、昨夜の夕食を思い出した。僕と同じテーブルを囲んだのは、一人旅を楽しむアフリカ系アメリカ人女性のトーレンス。

 一昨年まで大学で地学を教えて65歳でリタイア。今は旅やガーデニング、友人との時間を楽しむ毎日を過ごしている。今回の彼女の旅は全てアムトラックで、シカゴからポートランド、サクラメントに寄って、シカゴに戻る。サクラメントからシカゴまで、ロッキー山脈を越える旅は48時間。4から5日の休みが取れたら僕も行ってみたいと話した。食堂車のサーバーをはじめ、スタッフはフレンドリー。

 車内放送もマニュアルと無縁な人間味のある放送が頻繁に流れる。
「ラウンジカーで複数の子どもが勝手に遊んでいます。速やかに保護者は子どもをおとなしくさせてください」、車内に笑い声が響く。草を渡る風まで見えてきそうなほど、アムトラックはゆっくり走っていく。個室の車窓から、オークランドからサンノゼ、ロサンゼルス。

 2日目の午前中。チーズとハムとほうれん草のサンドイッチを食べた後は、本「ドクトルマンボー航海記」を読んでいた。その本のあまりの、おかしさに笑うと、スタッフも同じ様に笑ってくれた。午前11時を過ぎた頃、客室乗務員のロイが「あと10分くらいで、湿原になるから、カメラの用意をしておくと良いよ」と知らせてくれた。しばらくすると、左右の車窓に湿原が広がった。6マイル先のモントレーの辺りまで続いていると、車内放送でもつけ加えた。

 その後に広がるのはアーティチョークの畑。アメリカで一番の生産地で、本場のイタリアよりも生産量が多いそうだ。昼食はルームサービスを頼んだ。田園風景と読書、全部を欲張りたかったから。夕方はずっと個室から海を眺めていた。夕日が少しずつ空を染めていく変化を逃すまいと。列車に向かって手を振る人。

 沖のヨット、ビーチを歩く親子、波を待つサーファー、連なるキャンピングカー、パームツリー、バーベキューをする男性。アムトラックを追い越す車。ゆっくり走るからその分周りがよく見えた。車窓が夜の闇に包まれていき、もうすぐロサンゼルス。ロサンゼルスからサンディエゴ行きのアムトラックでていたので駅でチケット手に入れた。

 列車は2階建ての大型列車だった。出発後、飲み物が配られた。箱にお水、オレンジジュース、ソーダ類が入っていて好きなだけとっていいよ、とのこと。次に、アムトラックの箱に入ったスナックの詰め合わせも配られた。車両の後ろにコーヒーサーバーがあり、コーヒーも飲み放題でした。走りはじめてしばらくは内陸部を走行してた。

 しかし、突然あらわれる太平洋。サーフィンしてる人がたくさんいて、とっても海に近いところを走っていた。約3時間でサンディエゴのサンタフェデポ駅に到着しました。そこから、ホストファミリーの家に電話すると駅まで迎えに来てくれた。これでシアトルからサンディエゴまで3日間の列車の旅が終わった。

 家に帰ると、同じ年のケイティが写真を見せてと言うので、見せると、羨ましいと、多くの写真を興味深げに見ていた。そして、疲れていたのでシャワーを浴びて、パンを少し食べて、床についた。翌日は、朝、7時にカリフォルニア大学サンディエゴ校UCSDエクステンションに出かけて車で送ってもらい、30分程で到着した。
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