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2024/03/30
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「ちょっと小難しい話をするんだけど」
増殖する白髪に耐えて耐えて耐えかねて、「髪を染めてくれ」と頼んだ旦那が、薬液を髪に塗り込みながら鏡越しに目を合わせてきた。
「ほん。どうぞ?」
これは、きっと経済的な話だ。私は本能的に直観した。
それでなくても先月私はストレスに負けてアホみたいに電子書籍を買い漁って、軽く血の気が引く程度の料金請求が来ていたのを旦那に白い目で見られた所だ。本当にごめんなさい。
それについての言い訳は、まぁ、しかるべき時にしよう。
「来年、第三次世界大戦になるよ」
だいさんじせかいたいせん…。
突然そんなことを言われた私の脳裏には何故か2021(2020予定だったのだが)のオリンピックの開会式の様子が過っていた。がーまるちょばがピクトグラムをやったやつ。
あれは私の好きな演出家さんが演出したやつで、でも直前に防衛大臣がアホなこと言ったせいで責任問題になって、演出家さんは開催式の前日に辞任したんだ。
その後開会式は絶賛されて、何だか腹立たしかったのを覚えている
そんなことを思い出していた私は
「はん?せんそう?たいへんだ」
そう返すのが精いっぱいだった。
第三次というと、第二次、第一次とあったわけで…。いや、あったな。うん。
原爆の地に近しい所に住んでいる身として、世界大戦とは穏やかではない。
確かに世間は不穏な雰囲気に包まれてはいるけれど、世界大戦だなんて、そんな。
鏡越しに伺った旦那は至極真面目な顔をして私の髪に白髪染めを塗り込んでいる。
どう返していいのか、言葉を選んでいると、旦那は「これには」と大学教授のような前置きを置きながら薬液に塗れた私の髪を引っ張った。
くん、と引かれて私の頭が後ろに揺れる。
「僕はね、「支配者層」って存在してると思ってて」
旦那が語るには、こうだ。
僕は世界をコントロールするだけの力を…それが経済力だったり権力だったりと言うのは色々だけど、力を持った人達が居ると思っていて、今彼らが何をしたいかと言うと「世界統一」なんだと思ってるんだ。ふふ、ワンピースみたいな話だろ?
残念ながら、ワンピースは100巻近辺からついていけなくて読んでいない。
SDGsて、わかる?まぁ、調べてよ。17の項目。これを世界的に推進していきたい、と言うのがその人達の今の考えなんだよね。
話は少し変わるけど、トランプさんとバイデンさんの話。
あれはさ、支配者層の人たちが「いいやつ」と「わるいやつ」を用意して争わせて、最終的にわるいやつの支配下がいかに大変かを思い知らせるような結果をまず僕たちみたいな下の人間に見せつけたわけ。
それを解消するにはどうしたらいい?って誘導して、最終的に自分達が求めている結果を選ばせるんだよ。
それでSDGsの話に戻るんだけど、調べた?うん、いい言葉が沢山並んだ、何だかいい世界だ。
その世界を僕たち下の人間に「こういう世界が素敵だ」「こういう世界にしていかないと」と思わせるために、一度その真逆の世界が来るよ。もう感じてる部分も大いにあると思うけど。
それで、第三次世界大戦だ。今回、もちろん戦いに行く人達もいるだろうけど、血が沢山流れる、と言うよりは、僕らがしっかり苦しむようになってる。
それで最終的には、SDGsの掲げてる「すべての人々にとってよりよい、より持続可能な未来」に向けて、戦勝国不在で終戦する。
これから物価はまだまだ上がるから、備えとかないとね。君にも協力して欲しいんだけど。
私の集中力が持ったのはここまでで、あとは「ふぅん」「ほぉん」と曖昧な相槌を打ちながら、旦那の白髪頭を鏡越しに眺めていた。
旦那こそ、白髪を染めればいいのになぁ、と。
曰く
どこかの橋がこの前落ちたから、また運送が滞るね。
どこかの海域で悪いことをしている人たちが沢山の輸送船を狙っているから、その海は避けて、遠回りをしてものを運ばないといけない。
どこかとどこかで戦争が始まるから、どこかの海に軍艦が停留するようになる。そんなところは民間の輸送船なんて通れないからまた遠回りをしないといけない。輸送コストがまた跳ねあがるわけだ。(国の名前や海の名前も言っていたけど、そんなもん覚えれるわけがない。)
僕たちエンドユーザーは上乗せに上乗せされたコストを払わないといけなくなる。
最終的に、トイレットペーパーがメルカリで5000円で売れるようになるかもしれないよ。
とりあえず3年分くらいは店の2階にストックしとくつもり。
だから生活必需品、無くなると困るもの、特に僕が分からない炊事関係のものを教えてくれる?
真顔である。怖い。
この人は、うん、やる。
先だっての大きな災害の際、1週間と経たず我が家のストックヤードは缶詰で一杯になったのだ。知らずに開けて変な声が出てしまった。やる時は一言言って欲しいものだ。
店の裏に積み上げてあるコンテナにも、水とか、即席米とか、何やらそのようなものが入っているのを私は知っている。そういえばあれそろそろローテーションさせなくていいんだろうか。
床屋の2階に300ロールのトイレットペーパーが積み上げられた光景を想像する。シュールだ。
「うぅん…。さしすせその調味料は絶対ないと困るなぁ。あとは出汁類もできれば…。それ以外は、なくてもなんとかなるかな。あとは…洗剤?備蓄するってんならウタマロとかオキシクリーンとかの固形洗剤がいいかも」
家事大嫌い主婦として、ぱっと思いつくのなんてその程度で、鏡の中の旦那が「もっとないの?」と呆れたような顔をしている。まぁ、考えときますよ。覚えてたらね。
曰く
大きい病気ももう一度来るよ。プランデミック。今度のはアレみたいなしょぼいのじゃなくて、ペスト級の、死亡率がヤバイ奴。
それで一番危ないのは日本だよ。みーんな例のワクチン打ったからね。免疫情報はぐちゃぐちゃ。それに同調圧力でマスクもばっちり着けてたから、免疫力は下がりに下がってる。
君は「瓶の処理が面倒くさい」って僕が調味料を買うのを嫌がるけど、あれは僕なりに、悪いものの入っていない、自然のものをしっかり身体に取り入れて、免疫力を上げて欲しいっていう考えがあってのことだから、物があるうちは我慢して欲しい。買えなくなったら我慢するからさ。
そう、旦那は砂糖を除く「しすせそ」と味醂は何故か自分で用意するのだ。どれもこれもしっかり一升瓶なもんで、詰め替えるのも面倒だし空いた時に捨てるのが面倒だとぼやいたことが、確かにある。
そういう拘りがあったとは。そうですか。まぁ、それならなんでもいいですよ私は。何とかマンだろうが何とか醸造だろうが。
色々と詰め込まれて、私の酒焼けした脳みそはなんだか飽和状態のようになっていた。
髪の染まり具合を見るためにぴんぴんと毛を引っ張られる刺激が不愉快だ。
他にも旦那は「最終的にはアメリカと中国になるよ」とか「ドルはそろそろ引き上げないとね」とか色々言っていたけど、私はその時にはもう一つの考えに至っていたので、大して聞いていなかった。
だってさ、どんな世の中になったってそれなりに生きてくしかないじゃないの。暗黒金持ちみたいな人達が居るとして(まぁ、居るんだろう)、その人達が「SDGsしたいから君ら一回ど貧乏になりな!」って言うなら、我々はなるしかないんだからさ。
まぁ、旦那が色々と考えて色々と家族の為に動いてくれているのはとても感謝している。いつも頑張ってくれてるわけだし、くらくらするような話を白髪染めの1時間半の間興味ありげに聞くくらい、しますよ。
その話をこうやって残すのは、もし本当にそうなった時小気味いいだろうなと思う私の性格の悪さによる。
増殖する白髪に耐えて耐えて耐えかねて、「髪を染めてくれ」と頼んだ旦那が、薬液を髪に塗り込みながら鏡越しに目を合わせてきた。
「ほん。どうぞ?」
これは、きっと経済的な話だ。私は本能的に直観した。
それでなくても先月私はストレスに負けてアホみたいに電子書籍を買い漁って、軽く血の気が引く程度の料金請求が来ていたのを旦那に白い目で見られた所だ。本当にごめんなさい。
それについての言い訳は、まぁ、しかるべき時にしよう。
「来年、第三次世界大戦になるよ」
だいさんじせかいたいせん…。
突然そんなことを言われた私の脳裏には何故か2021(2020予定だったのだが)のオリンピックの開会式の様子が過っていた。がーまるちょばがピクトグラムをやったやつ。
あれは私の好きな演出家さんが演出したやつで、でも直前に防衛大臣がアホなこと言ったせいで責任問題になって、演出家さんは開催式の前日に辞任したんだ。
その後開会式は絶賛されて、何だか腹立たしかったのを覚えている
そんなことを思い出していた私は
「はん?せんそう?たいへんだ」
そう返すのが精いっぱいだった。
第三次というと、第二次、第一次とあったわけで…。いや、あったな。うん。
原爆の地に近しい所に住んでいる身として、世界大戦とは穏やかではない。
確かに世間は不穏な雰囲気に包まれてはいるけれど、世界大戦だなんて、そんな。
鏡越しに伺った旦那は至極真面目な顔をして私の髪に白髪染めを塗り込んでいる。
どう返していいのか、言葉を選んでいると、旦那は「これには」と大学教授のような前置きを置きながら薬液に塗れた私の髪を引っ張った。
くん、と引かれて私の頭が後ろに揺れる。
「僕はね、「支配者層」って存在してると思ってて」
旦那が語るには、こうだ。
僕は世界をコントロールするだけの力を…それが経済力だったり権力だったりと言うのは色々だけど、力を持った人達が居ると思っていて、今彼らが何をしたいかと言うと「世界統一」なんだと思ってるんだ。ふふ、ワンピースみたいな話だろ?
残念ながら、ワンピースは100巻近辺からついていけなくて読んでいない。
SDGsて、わかる?まぁ、調べてよ。17の項目。これを世界的に推進していきたい、と言うのがその人達の今の考えなんだよね。
話は少し変わるけど、トランプさんとバイデンさんの話。
あれはさ、支配者層の人たちが「いいやつ」と「わるいやつ」を用意して争わせて、最終的にわるいやつの支配下がいかに大変かを思い知らせるような結果をまず僕たちみたいな下の人間に見せつけたわけ。
それを解消するにはどうしたらいい?って誘導して、最終的に自分達が求めている結果を選ばせるんだよ。
それでSDGsの話に戻るんだけど、調べた?うん、いい言葉が沢山並んだ、何だかいい世界だ。
その世界を僕たち下の人間に「こういう世界が素敵だ」「こういう世界にしていかないと」と思わせるために、一度その真逆の世界が来るよ。もう感じてる部分も大いにあると思うけど。
それで、第三次世界大戦だ。今回、もちろん戦いに行く人達もいるだろうけど、血が沢山流れる、と言うよりは、僕らがしっかり苦しむようになってる。
それで最終的には、SDGsの掲げてる「すべての人々にとってよりよい、より持続可能な未来」に向けて、戦勝国不在で終戦する。
これから物価はまだまだ上がるから、備えとかないとね。君にも協力して欲しいんだけど。
私の集中力が持ったのはここまでで、あとは「ふぅん」「ほぉん」と曖昧な相槌を打ちながら、旦那の白髪頭を鏡越しに眺めていた。
旦那こそ、白髪を染めればいいのになぁ、と。
曰く
どこかの橋がこの前落ちたから、また運送が滞るね。
どこかの海域で悪いことをしている人たちが沢山の輸送船を狙っているから、その海は避けて、遠回りをしてものを運ばないといけない。
どこかとどこかで戦争が始まるから、どこかの海に軍艦が停留するようになる。そんなところは民間の輸送船なんて通れないからまた遠回りをしないといけない。輸送コストがまた跳ねあがるわけだ。(国の名前や海の名前も言っていたけど、そんなもん覚えれるわけがない。)
僕たちエンドユーザーは上乗せに上乗せされたコストを払わないといけなくなる。
最終的に、トイレットペーパーがメルカリで5000円で売れるようになるかもしれないよ。
とりあえず3年分くらいは店の2階にストックしとくつもり。
だから生活必需品、無くなると困るもの、特に僕が分からない炊事関係のものを教えてくれる?
真顔である。怖い。
この人は、うん、やる。
先だっての大きな災害の際、1週間と経たず我が家のストックヤードは缶詰で一杯になったのだ。知らずに開けて変な声が出てしまった。やる時は一言言って欲しいものだ。
店の裏に積み上げてあるコンテナにも、水とか、即席米とか、何やらそのようなものが入っているのを私は知っている。そういえばあれそろそろローテーションさせなくていいんだろうか。
床屋の2階に300ロールのトイレットペーパーが積み上げられた光景を想像する。シュールだ。
「うぅん…。さしすせその調味料は絶対ないと困るなぁ。あとは出汁類もできれば…。それ以外は、なくてもなんとかなるかな。あとは…洗剤?備蓄するってんならウタマロとかオキシクリーンとかの固形洗剤がいいかも」
家事大嫌い主婦として、ぱっと思いつくのなんてその程度で、鏡の中の旦那が「もっとないの?」と呆れたような顔をしている。まぁ、考えときますよ。覚えてたらね。
曰く
大きい病気ももう一度来るよ。プランデミック。今度のはアレみたいなしょぼいのじゃなくて、ペスト級の、死亡率がヤバイ奴。
それで一番危ないのは日本だよ。みーんな例のワクチン打ったからね。免疫情報はぐちゃぐちゃ。それに同調圧力でマスクもばっちり着けてたから、免疫力は下がりに下がってる。
君は「瓶の処理が面倒くさい」って僕が調味料を買うのを嫌がるけど、あれは僕なりに、悪いものの入っていない、自然のものをしっかり身体に取り入れて、免疫力を上げて欲しいっていう考えがあってのことだから、物があるうちは我慢して欲しい。買えなくなったら我慢するからさ。
そう、旦那は砂糖を除く「しすせそ」と味醂は何故か自分で用意するのだ。どれもこれもしっかり一升瓶なもんで、詰め替えるのも面倒だし空いた時に捨てるのが面倒だとぼやいたことが、確かにある。
そういう拘りがあったとは。そうですか。まぁ、それならなんでもいいですよ私は。何とかマンだろうが何とか醸造だろうが。
色々と詰め込まれて、私の酒焼けした脳みそはなんだか飽和状態のようになっていた。
髪の染まり具合を見るためにぴんぴんと毛を引っ張られる刺激が不愉快だ。
他にも旦那は「最終的にはアメリカと中国になるよ」とか「ドルはそろそろ引き上げないとね」とか色々言っていたけど、私はその時にはもう一つの考えに至っていたので、大して聞いていなかった。
だってさ、どんな世の中になったってそれなりに生きてくしかないじゃないの。暗黒金持ちみたいな人達が居るとして(まぁ、居るんだろう)、その人達が「SDGsしたいから君ら一回ど貧乏になりな!」って言うなら、我々はなるしかないんだからさ。
まぁ、旦那が色々と考えて色々と家族の為に動いてくれているのはとても感謝している。いつも頑張ってくれてるわけだし、くらくらするような話を白髪染めの1時間半の間興味ありげに聞くくらい、しますよ。
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