魔法少女のファンな俺

世万江生紬

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魔法少女のファンな俺⑪

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 ここは闇の組織、フィクサーの本部。人通りも多い休憩スペースに俺の悲痛の声が響いていた。

「先輩お願いします!俺、先輩の豚にだってなりますから!」

「なんてことをなんて場所で言いやがるテメェ!」

先輩に首根っこ掴まれて廊下の端に連れていかれた俺は先輩に、かの有名な壁ドンと呼ばれるシチュエーションを体験させられていた。逃げられないという点においてめちゃめちゃドキドキする。

「で?何なんだよテメェは。」

「先輩、昨日魔法少女と対人戦闘やってくれたじゃないですか。」

「そうだな。」

「その時、レモントネールの様子がおかしいことに気づきました?」

「あ?何か恋する女の子みたいだったな。」

「気づいてんじゃないですか!!」

「うるっせぇんだよ...!」

思わず大声を上げた俺に、先輩は極道並みのメンチを切ってくる。

「すんません。でも気づいてるなら話は早いです。先輩、彼女を振って下さい。推しのガチ恋とか耐えられないんですよ...!!!」

「本当に気持ち悪いな、お前...。」

「何とでも言って下さい。俺街の中心部で何体かモンストル作るんで、そこで彼女に会って何かいい具合に振ってください。」

「その何かいい具合に、のところを一番伝授願いてぇんだけどな。」

「それは何か流れでいい感じに!じゃ、行きましょう。」

「ウゼェな...。」


 どうにかこうにか先輩を連れ出した俺は、計画通りに街中でモンストルを3体作り出した。いい感じに負の感情を集めてくれている中、計画通りに魔法少女が現れた。

「今日は3体ね!みんな準備はいいね!?」

「「「「OK」」」」

魔法少女たちはそう言うと、それぞれがモンストルを倒しに向かった。しかし、1人、ポツンとその場を動かないのが1人。

「トネール!ボーっとすんな!危ないだろ!」

「あっ、ごめんアクア...。」

レモントネールはいつもの天真爛漫天使の笑顔、ではなくどこか顔が赤く目の前のことに全く集中していないようだった。まるで恋の病にかかった女の子のように。

「先輩!ほらもう魔法少女の活躍もまともに出来ないようになっちゃってます!」

「フィクサー的にはいいんじゃねぇか?」

「もう!いいから何とかしてくださいよ!ほらライバルが元気ないと調子狂うでしょ!」

「ウゼェな...。」

俺の必死の後押しで魔法少女の元に向かった先輩は、空間魔法を使い、一人でいたレモントネールの元にフッと現れた。その瞬間、クリムゾンフレイムが全力で蹴り飛ばしたモンストルがレモンにぶつかりそうになった。

「トネール!」

「っ!」

「キャッ!」

魔法の発動が間に合わないと判断した先輩はとっさにレモントネールを抱き留め、モンストルとの衝突を避ける様にそのまま自分の体ごと前に投げ出した。そのせいで先輩と彼女はモンストルに隠れて俺の目から見えなくなってしまった。っうぉい!?

「あ...グレイさん!?」

「よぉ。お前、自分の仕事も真面目に果たせねぇ奴だったのか?」

「なっ...!いえ、そうですね...今日も私は全然仕事を果たせていない...うん、グレイさん、聞いてください。私、貴方のこと...」

「何だ?惚れたとかなんとかって話か?悪ぃがそれなら断固拒否する。だが、生意気な後輩の言いなりになるのも癪だからな、お前の好きなようにすればいいんじゃないか?」

「え...。」

「俺はお前の感情だの何だのに振り回されるのは断固拒否する。が、お前の感情の自由までは止めねぇって言ってんだ。まあ、お前が何を言おうとしたのかは知らねぇがな。それ伝えたかっただけだ、後輩がうるさいんでな。じゃあな。」

「...分かりました。ありがとうございます、敵さん。」

「じゃあな、魔法少女。」



先輩と彼女が何を話しているのか聞こえずオロオロとしていると、俺の目の前に空間魔法で移動してきた先輩がフッと現れた。

「先輩!レモントネールとなに話してたんですか!ちゃんと振ったんですか!?」

「あぁ?...そうだな。本人に聞いてみりゃいいじゃねぇか。」

「はぁ!?俺が推しの前に出られないの知ってるでしょ!っていうか今の言い方何か意味ありげ何ですけど!」

「ははっ。ほら、モンストル倒されたみたいだぜ。もう帰るぞ。」

「先輩!~~~!灰かぶり先輩!」

「テメェいい加減殴るぞ?」


この後、先輩の脅しにも屈せず何度もしつこく聞き続けた俺は宣言通り先輩に殴られた。
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