ヒロインの娘

めい

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小さな鑑定士

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「では、行ってまいります。」

男爵家に不釣り合いの大きな馬車に、叔父家族、使用人たちに見送られながら乗り込む。

馬車は4人ぐらいが寝れそうほどで、椅子も座り心地が良い。
この馬車はミンテアへの定期便として、従者・護衛込みでカーミラ夫人が用意し、ミンテアと物資や人を無料で往復してくれる。

今日は、私と薬師ギルドの職員夫婦2組が乗っている。
この夫婦、壮絶な戦い(らしい)を勝ち残りミンテア行きを決めただけたあって、ご満悦だ。

あのカオスを極めた会議から、すてに3ヶ月を経過し、
ジーマイ閣下やランバード家の人達も快復に向かっている。
ジーマイ閣下の症状改善にともない、
『江戸病』の治療方法が『船乗り病』にも効果が期待できる事が証明された。

この結果と辺境伯の強い要望もあり、ランバード辺境伯領で大規模な治験を行う事になった。
閣下の元で治療と検証に専念していたトーマス夫婦と今回の夫婦のうちの1組が、ランバード領に向かい。
残り1組がトーマスさんからミンテアでの治療を引き継ぐ。

薬師に対するランバード家の厚待遇は、男爵領で大変な話題になっている。
トーマス夫婦。奥さんも薬師だったが子供を産んで休業していた。
(トーマスさんより10歳以上若いらしい)
ランバード家の借り上げている豪華な屋敷の客間で生活し、専属のナニーを付けてくれ、奥さんも薬師として働くことになった。
商業ギルドから派遣なので、トーマスさんには規定のギルドの給料が支払われているのだが、奥さんはランバード家で直接雇用となり破格の給料を用意してくれた。
ミンテアは高位貴族でも憧れの保養地。
ランバード領も港としてだけでなく海の観光地として有名な場所。
そこで不治の病と思われていた病気の治験に関われるとなれば、皆が目の色を変えて立候補するのも当然。
結果、ランバード領に向かうのはトーマス夫婦の推薦で若いが優秀な薬師のレイト・光魔法の使えるマリ夫婦が決まり。
ミンテアは、3ヶ月ごとの交代制にした。
ミンテアも長く同じ薬師が担当して欲しかったが、あまりに立候補者が多いのと
カーミラ夫人の『船乗り病』のエキスパートを増やしたい。との希望もあり交代制で落ち着いた。

ランバード家では、領地から信頼できる家臣で『船乗り病』を患っている人、研究している人達を呼び寄せ共同で、データーの解析や治験が行われた。
辺境伯領から来た人の中には、残念ながら手遅れの方もおり、緩和ケアに移行している。
死期宣告を受けても、痛みから解放された患者たちはトーマスや母たちに感謝を毎日伝えてくれているらしい。








そして、2年がたった。

治験は予防方法に重点が置かれるようになり、
治療には専用のポーションが作られ、
予防には、予防ポーションの他にお茶の改良と食事の改善で一定の成果を得ることが出来た。
約2年と短い治験の期間であるが、
ランバード家、各ギルドの強い要望と教会の支援にて王家へ報告をあげ国の内外に広めることが決定した。

報告は、ランバード家、ダグラス家、商業ギルド、冒険者ギルド、教会の連盟で行われ、引き続き研究はトーマスを筆頭に商業ギルドが引き継ぐ。

アンドレア家は名前を出すことを拒絶した。

今回の治療、治験の報酬として、ミンテア~ランバード領までの南北に渡る運河を利用した交易路の整備がランバード家の資金提供により行われることが約束される。
ミンテア~アンドレア領までの道の整備は、男爵家が拒絶した。
そのかわり、小さな鑑定士から、思いよらない願いを突き付けられる。

「新鮮な魚介類をください!!」

そう言ってダンジョンから発掘されたであろう一級品の時魔法がかかったマジックバックがランバード家に渡されたのだった。
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