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きっと私はいらない子
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ミーンミーン……と出てくるタイミングを読み間違えたセミが小さく鳴いている。
もう、とっくに他のセミたちは交尾を済ませて、死んでるのに。一人寂しく、鳴いている。誰も、あなたのことを見てないんだけどね。
聞いてもらえないのに、人間たちに迷惑がられるだけなのに、なんで、そんなに鳴いてられるんだろう。私なら、もう……鳴きたくないな。
そんなことを考えて、時計を見る。時刻は、五時。うちの夕食は六時半だから、まだまだ余裕がある。でも一応、さっさと終わらせないとダメだな。
私は、いつものごとく、部屋に閉じこもり、机に学習道具を散らかしていた。
問題はすらすらわかる。だから、鉛筆もすらすら動く。……けれど、気分が乗らない。というか、これくらい、解けて当たり前だから、なんとも思わない。というか、逆にさっさと解かないとって焦る。
いや、歩夢兄さんの場合は別としてだけど(あの人は規格外だし)。
私は、″五代名家″と呼ばれる特殊な家系の五番目にして唯一の女の子として生まれた。
五代名家とは、『天桜』、『桜姫院』、『白鴎』、『彼岸宮』、『宵月』という五つの名家の総称で、私の家は、[白鴎]の本家にあたる。
五代名家の中には、すべての家において、本家と分家が存在する。まぁ、いわゆる富豪みたいな感じだから、仕方ないのかもしれない。そういうことには、詳しくないけれど。
それで、私たち五代名家が持て囃されるのは、地位もそうなんだけど、それ以上に(一:十くらいの比率で、)血筋に所以する。
この世界には、特別な家系がいくつも存在している。
妖と交わった血の家系もそうなんだけど、それ以上に強いとされているのは、妖と交わらずに特殊な力を得た家系だ。
先祖が特別な能力を持って生まれた突然変異だったりするのが由来ではあるんだけど、その力を持つ血筋の人間である=絶対王者的な認識をしている人は少なくない。
全くそんなことはないんだけどね。現に、私は落ちこぼれの部類だし。
血筋がどうであれ、霊力系の場合は別なんだけど、能力系の家系は、それ自体が発動することが本当に稀。何万分の一くらいだし、能力によっては、性別の指定も存在する(女の子だけ、とかね。まぁ、それは巫女限定なんだけど)。
私の家[白鴎]は、能力系の家系で今のところ誰も発動してはいない。当たり前だけど。
まぁ、あれには指定もないし、そのうち兄たちに発動すると思うな。だって、私の兄たちは、とても優れているのだから。
一番上の兄、綾は今確か大学院に行っていた気がする。将来はお医者になるらしい。というか、もう働き先は決まってるみたい。
それに、就職せずとも、両親からの信頼でいくつか高校生の頃から会社の経営はしてるから、生きていけると思う。(……あれ、医者って副業ダメな気がするけど、まぁそれはいいか。あの人だし)
二番目の兄、歩夢は単細胞の阿呆で、まぁ、いわゆるおちゃらけムードメーカーの女好き。性格は天真爛漫、物怖じしない。馬鹿って強いよね。って感じ?
そんなんだけど、体術において右に出るものはいないかも。剣道、柔道、フェンシング、バスケ……ありとあらゆる体育系競技は賞を獲得するほどの腕前とセンスがある。
三番目の兄、蒼は弱虫、泣き虫、気弱。でも、なんかーすごい人気なんだよね。母性本能くすぐられるって誰か言ってた。
そんな弱気のダメ兄も、美術のセンスはずば抜けておりまして。今度、個展か何かを開くとか言ってた。
四番目の兄、円華は甘え上手で、末っ子キャラ。まぁ、私以外が結構年齢近いのもあるかもしれない。
円華兄さんはこれといって目に見えてすごっ!という成績はないけど、好きな子ができた途端、あらゆる分野でたけてたようになる。努力の才能ってやつがあるんだと思う。
さぁ、そんなこんな優れた兄たちです。絶対この人たちの誰か発動寸じゃん、って思わずにはいられないんだよね。
まぁ、兄に比べて、私といえば、勉学とかいろいろ頑張ってはいるんだけど……これと言った成果も、才能もないんだよね。いや、努力は寝る間も惜しんで毎日続けてますからそこそこの成績は取れるよ。でも、才能ないし、全国テストでも、一位は取れないんだよね。不動の一位がいるから。
そんな感じで、結構家の中では落ちこぼれ、的なポディション。
ちなみに言うと、歩夢兄さんを除くと、みーんな全国テストの成績は三位以内をキープしてる。
歩夢兄さんは、もう、五分の三の中に入ってればいーみたいな扱いだけどね。
だから、今もこうして勉学に励んでいるわけです。今日出された宿題、あとちょっとで終わりそうだし(宿題は貯めとかずにさっさと片付ける派だから)。
まぁ、どれだけ頑張ろうが、届くわけないし、見てもらえるわけもないんだけどね。
物心ついた時から私は、いつも兄たちに劣等感を抱いていた気がする。
綾兄さんとは歳の差が離れすぎているから、嫉妬というよりは……羨ましさみたいなのだったんだけど、両親から頼ってもらえてていいな、ってずっと思ってた。
歩夢兄さんは馬鹿だったけど、体力面で優れてたから、頑張ってね、とか特別見てもらえてる感じがしてて、特別扱いずるいって思ってた。
まぁ、蒼兄さんも右に同じく。
円華兄さんについては、可愛がられてる感じがしてて、末っ子なのは私なのにってずっっと思ってた。私が下なのに、円華兄さんばかり可愛がられてる。ずるいってね。
私はと言うと、自分で言うのもなんだけど、結構いい顔したがりなんだよね。
だから、勉強とか頑張って見てもらえるようにしたし(でも見て、とか、兄さんばっかりずるい!とかは言わない)、大変な時とか、苦しい時とかも平気って抱え込んだ。
まあその結果が、何もしなくてもできる子。見てなくても大丈夫っていう最悪の認定なんだけどね……。
私は、普通の人間ができる範囲が限度だし、みんなほど優秀にはなれっこない。
だから、いてもいなくても特に変わらない、いらない五番目。
ここにいても、あんまり、意味、ないんだよなぁ……。
っていうキャラかな。
「……まずい」
自分語りが長すぎた。え、もう二十分もたってんじゃん。私、回想に二十分かけてた???ヤバ。
ここからは無言で勉強していきます。はい。
٩( 'ω' )و スキーップ
さてさて、勉強もギリッギリ夕食前に終わりまして。
今は、ダイニング……でいいのか?まぁ、食堂でみんな揃っての夕ご飯の最中でございます。
「なぁなぁ、りょー兄、聞いてくれよ~」
「はぁ、歩夢。マナーに気を付けろと言ってるだろ」
「そーだそーだ!歩夢兄は、ほんっとダメだなぁ」
「えぇ、ムズイじゃん。てか、算数の公式わかんねーの、教えてにーちゃん」
「なんの公式?」
「えーっとね、プラスとかーマイナスとかの」
「そ、それって加法と減法じゃないですか。歩夢兄さん、入学一年の範囲です、それ」
「え?マジ?」
歩夢兄さんを中心に、軽いやりとりが行われる。
「それで、みんな。最近はどうだい?」
「俺は~、特に変わったことねーかな。次はなんの競技しよーか迷ってるとこ!」
「ぼ、僕は……個展の準備に追われてるけど、楽しいです。今回できなかった展示も、次の機会にできるように、準備をしてます」
さすが、蒼兄さん。内容がちゃんとある。(比較対象、歩夢兄さん)
「俺はね~、どうやって箏波に振り向いてもらおうか模索中」
とっても嬉しげに、楽しげに兄さんは言う。本当に、コトハさんのことが好きらしい。円華兄さんは、あまり他人に興味を持つことがなかったから意外だな。
「澄芭留はどうだい?」
「私は、変わったことないです。次の学力テストで、一位を奪えるかどうかの悩みどころって感じです」
「ふふっ、そうかい。次は取れるといいね」
「はい」
「で、にいちゃんはどーなの?」
「確かに気になる!」
「面白い話はないよ」
「き、になります……」
「邪魔な企業を買収したりしかしてないからなぁ」
「「「……ごめんなさい」」」
「わかればいいんだ」
私は基本的に兄たちの会話に参加することはない。話しかければ答えるけど、それ以外はあまりしない。
それに、本当に急いで仕上げないと、今回も負けちゃいそう。いつも一位をとる五代名家の一つ『桜姫院』の子は、ほとんど満点。ミスをしても、スペルのほんの少しのミスだし、私も似たミスをするから点差は埋まらない。
満点を、取らないと……。
私はそんなことばかり考えていて、兄たちや両親の会話は耳に入ってこなかった。
食事を食べ終わった後は、「おやすみなさい」と一言家族に言い残し、お風呂に入って、即座に部屋へ。
休憩室というか、みんなのたまり場には赴くことはない。そこでは各々やりたいことをしていいんだけど、私は兄たちとできるだけ接触を避けてるから。劣等感感じてるの、バレると空気が悪くなってしまいそうだしね。
「んー……疲れた」
兄弟の劣等感もそうなんだけど、それは慣れたからいーや。まぁ、心は結構ズタボロになるけどね、毎回。
それよりも、成績。最近伸び悩んでるんだよね。体育はまぁまぁいいけど、美術とか音楽とか、そーゆー奴は、平均より少し上くらいしか取れない。センス、ないのかなぁ……。
数学とか、国語もコツを掴めばなんとかなるし、理科社会はもう暗記は詰め込めばOKだからいい。
でも、センスがいるのは無理だ……。
なんで私だけ、こんな才能なしで出来損ないなんだろーな……。
そんなことを考えていると徐々に目蓋が下がってくる。あぁ、朝早かったからなぁ、もうおねむか、私。高校生になっても、夜更かしできないとか脆いだろ、私。
はぁ~……なんで見てくれないのかなぁ、母さんも父さんも。いや、認めてくれてるのはわかる。というか、私という存在を認識して、ちゃんと見ててくれてるはずなんだけどさ。
いや、自業自得ではあるものの、兄さんたちみたいにちゃんと目に見える形で認めてほしいというか、黙認みたいなの、わからないから嫌だし……別にいなくても変わんないんだろーな、私って。
こんなのなら、永遠に明日なんか来なきゃいーのに。認めてもらえないなら、別に何があったってそんな変わんないのになぁ……。
そんなことを思いながら、私はいつのまにか意識を手放していた。
『明日が来なければ』、そんな心の声を誰かが聞いているだなんて思いもせずに。
もう、とっくに他のセミたちは交尾を済ませて、死んでるのに。一人寂しく、鳴いている。誰も、あなたのことを見てないんだけどね。
聞いてもらえないのに、人間たちに迷惑がられるだけなのに、なんで、そんなに鳴いてられるんだろう。私なら、もう……鳴きたくないな。
そんなことを考えて、時計を見る。時刻は、五時。うちの夕食は六時半だから、まだまだ余裕がある。でも一応、さっさと終わらせないとダメだな。
私は、いつものごとく、部屋に閉じこもり、机に学習道具を散らかしていた。
問題はすらすらわかる。だから、鉛筆もすらすら動く。……けれど、気分が乗らない。というか、これくらい、解けて当たり前だから、なんとも思わない。というか、逆にさっさと解かないとって焦る。
いや、歩夢兄さんの場合は別としてだけど(あの人は規格外だし)。
私は、″五代名家″と呼ばれる特殊な家系の五番目にして唯一の女の子として生まれた。
五代名家とは、『天桜』、『桜姫院』、『白鴎』、『彼岸宮』、『宵月』という五つの名家の総称で、私の家は、[白鴎]の本家にあたる。
五代名家の中には、すべての家において、本家と分家が存在する。まぁ、いわゆる富豪みたいな感じだから、仕方ないのかもしれない。そういうことには、詳しくないけれど。
それで、私たち五代名家が持て囃されるのは、地位もそうなんだけど、それ以上に(一:十くらいの比率で、)血筋に所以する。
この世界には、特別な家系がいくつも存在している。
妖と交わった血の家系もそうなんだけど、それ以上に強いとされているのは、妖と交わらずに特殊な力を得た家系だ。
先祖が特別な能力を持って生まれた突然変異だったりするのが由来ではあるんだけど、その力を持つ血筋の人間である=絶対王者的な認識をしている人は少なくない。
全くそんなことはないんだけどね。現に、私は落ちこぼれの部類だし。
血筋がどうであれ、霊力系の場合は別なんだけど、能力系の家系は、それ自体が発動することが本当に稀。何万分の一くらいだし、能力によっては、性別の指定も存在する(女の子だけ、とかね。まぁ、それは巫女限定なんだけど)。
私の家[白鴎]は、能力系の家系で今のところ誰も発動してはいない。当たり前だけど。
まぁ、あれには指定もないし、そのうち兄たちに発動すると思うな。だって、私の兄たちは、とても優れているのだから。
一番上の兄、綾は今確か大学院に行っていた気がする。将来はお医者になるらしい。というか、もう働き先は決まってるみたい。
それに、就職せずとも、両親からの信頼でいくつか高校生の頃から会社の経営はしてるから、生きていけると思う。(……あれ、医者って副業ダメな気がするけど、まぁそれはいいか。あの人だし)
二番目の兄、歩夢は単細胞の阿呆で、まぁ、いわゆるおちゃらけムードメーカーの女好き。性格は天真爛漫、物怖じしない。馬鹿って強いよね。って感じ?
そんなんだけど、体術において右に出るものはいないかも。剣道、柔道、フェンシング、バスケ……ありとあらゆる体育系競技は賞を獲得するほどの腕前とセンスがある。
三番目の兄、蒼は弱虫、泣き虫、気弱。でも、なんかーすごい人気なんだよね。母性本能くすぐられるって誰か言ってた。
そんな弱気のダメ兄も、美術のセンスはずば抜けておりまして。今度、個展か何かを開くとか言ってた。
四番目の兄、円華は甘え上手で、末っ子キャラ。まぁ、私以外が結構年齢近いのもあるかもしれない。
円華兄さんはこれといって目に見えてすごっ!という成績はないけど、好きな子ができた途端、あらゆる分野でたけてたようになる。努力の才能ってやつがあるんだと思う。
さぁ、そんなこんな優れた兄たちです。絶対この人たちの誰か発動寸じゃん、って思わずにはいられないんだよね。
まぁ、兄に比べて、私といえば、勉学とかいろいろ頑張ってはいるんだけど……これと言った成果も、才能もないんだよね。いや、努力は寝る間も惜しんで毎日続けてますからそこそこの成績は取れるよ。でも、才能ないし、全国テストでも、一位は取れないんだよね。不動の一位がいるから。
そんな感じで、結構家の中では落ちこぼれ、的なポディション。
ちなみに言うと、歩夢兄さんを除くと、みーんな全国テストの成績は三位以内をキープしてる。
歩夢兄さんは、もう、五分の三の中に入ってればいーみたいな扱いだけどね。
だから、今もこうして勉学に励んでいるわけです。今日出された宿題、あとちょっとで終わりそうだし(宿題は貯めとかずにさっさと片付ける派だから)。
まぁ、どれだけ頑張ろうが、届くわけないし、見てもらえるわけもないんだけどね。
物心ついた時から私は、いつも兄たちに劣等感を抱いていた気がする。
綾兄さんとは歳の差が離れすぎているから、嫉妬というよりは……羨ましさみたいなのだったんだけど、両親から頼ってもらえてていいな、ってずっと思ってた。
歩夢兄さんは馬鹿だったけど、体力面で優れてたから、頑張ってね、とか特別見てもらえてる感じがしてて、特別扱いずるいって思ってた。
まぁ、蒼兄さんも右に同じく。
円華兄さんについては、可愛がられてる感じがしてて、末っ子なのは私なのにってずっっと思ってた。私が下なのに、円華兄さんばかり可愛がられてる。ずるいってね。
私はと言うと、自分で言うのもなんだけど、結構いい顔したがりなんだよね。
だから、勉強とか頑張って見てもらえるようにしたし(でも見て、とか、兄さんばっかりずるい!とかは言わない)、大変な時とか、苦しい時とかも平気って抱え込んだ。
まあその結果が、何もしなくてもできる子。見てなくても大丈夫っていう最悪の認定なんだけどね……。
私は、普通の人間ができる範囲が限度だし、みんなほど優秀にはなれっこない。
だから、いてもいなくても特に変わらない、いらない五番目。
ここにいても、あんまり、意味、ないんだよなぁ……。
っていうキャラかな。
「……まずい」
自分語りが長すぎた。え、もう二十分もたってんじゃん。私、回想に二十分かけてた???ヤバ。
ここからは無言で勉強していきます。はい。
٩( 'ω' )و スキーップ
さてさて、勉強もギリッギリ夕食前に終わりまして。
今は、ダイニング……でいいのか?まぁ、食堂でみんな揃っての夕ご飯の最中でございます。
「なぁなぁ、りょー兄、聞いてくれよ~」
「はぁ、歩夢。マナーに気を付けろと言ってるだろ」
「そーだそーだ!歩夢兄は、ほんっとダメだなぁ」
「えぇ、ムズイじゃん。てか、算数の公式わかんねーの、教えてにーちゃん」
「なんの公式?」
「えーっとね、プラスとかーマイナスとかの」
「そ、それって加法と減法じゃないですか。歩夢兄さん、入学一年の範囲です、それ」
「え?マジ?」
歩夢兄さんを中心に、軽いやりとりが行われる。
「それで、みんな。最近はどうだい?」
「俺は~、特に変わったことねーかな。次はなんの競技しよーか迷ってるとこ!」
「ぼ、僕は……個展の準備に追われてるけど、楽しいです。今回できなかった展示も、次の機会にできるように、準備をしてます」
さすが、蒼兄さん。内容がちゃんとある。(比較対象、歩夢兄さん)
「俺はね~、どうやって箏波に振り向いてもらおうか模索中」
とっても嬉しげに、楽しげに兄さんは言う。本当に、コトハさんのことが好きらしい。円華兄さんは、あまり他人に興味を持つことがなかったから意外だな。
「澄芭留はどうだい?」
「私は、変わったことないです。次の学力テストで、一位を奪えるかどうかの悩みどころって感じです」
「ふふっ、そうかい。次は取れるといいね」
「はい」
「で、にいちゃんはどーなの?」
「確かに気になる!」
「面白い話はないよ」
「き、になります……」
「邪魔な企業を買収したりしかしてないからなぁ」
「「「……ごめんなさい」」」
「わかればいいんだ」
私は基本的に兄たちの会話に参加することはない。話しかければ答えるけど、それ以外はあまりしない。
それに、本当に急いで仕上げないと、今回も負けちゃいそう。いつも一位をとる五代名家の一つ『桜姫院』の子は、ほとんど満点。ミスをしても、スペルのほんの少しのミスだし、私も似たミスをするから点差は埋まらない。
満点を、取らないと……。
私はそんなことばかり考えていて、兄たちや両親の会話は耳に入ってこなかった。
食事を食べ終わった後は、「おやすみなさい」と一言家族に言い残し、お風呂に入って、即座に部屋へ。
休憩室というか、みんなのたまり場には赴くことはない。そこでは各々やりたいことをしていいんだけど、私は兄たちとできるだけ接触を避けてるから。劣等感感じてるの、バレると空気が悪くなってしまいそうだしね。
「んー……疲れた」
兄弟の劣等感もそうなんだけど、それは慣れたからいーや。まぁ、心は結構ズタボロになるけどね、毎回。
それよりも、成績。最近伸び悩んでるんだよね。体育はまぁまぁいいけど、美術とか音楽とか、そーゆー奴は、平均より少し上くらいしか取れない。センス、ないのかなぁ……。
数学とか、国語もコツを掴めばなんとかなるし、理科社会はもう暗記は詰め込めばOKだからいい。
でも、センスがいるのは無理だ……。
なんで私だけ、こんな才能なしで出来損ないなんだろーな……。
そんなことを考えていると徐々に目蓋が下がってくる。あぁ、朝早かったからなぁ、もうおねむか、私。高校生になっても、夜更かしできないとか脆いだろ、私。
はぁ~……なんで見てくれないのかなぁ、母さんも父さんも。いや、認めてくれてるのはわかる。というか、私という存在を認識して、ちゃんと見ててくれてるはずなんだけどさ。
いや、自業自得ではあるものの、兄さんたちみたいにちゃんと目に見える形で認めてほしいというか、黙認みたいなの、わからないから嫌だし……別にいなくても変わんないんだろーな、私って。
こんなのなら、永遠に明日なんか来なきゃいーのに。認めてもらえないなら、別に何があったってそんな変わんないのになぁ……。
そんなことを思いながら、私はいつのまにか意識を手放していた。
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