異形たちの行く道は

ちあ

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試練、受けますか?

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道を進んでも、進んでもまったくどこかにつく気配がない。
それどころか、より一層あたりが暗くなっていく気さえする。
「白鴎さん」
「綾辻ちゃんも、思う~?」
「はい、そろそろ何か、まずいかと」
デスヨネー。
いや、あの記憶のないあっちの試練は置いといて、こっちはどうなるんだろーね?うん。
そして、いまだに掴めない綾辻ちゃんとの距離感よ!
もう、行ったら2、3時間歩いてるとは思うんだけども、会話は弾まないし、なんか気まずいし……。
おい、精霊。
あんたの選んだメンバーどうなってんだよ。
我が物顔でここをとっとと進んでいつの間にか退場していたやつと、こっちに興味ない零度の空気感を纏った冷静沈着だよ、今のとこ!
あんた……もうちょいマシなメンツいなかったの?

ああ、もうめんどくさいな!
歩いても歩いてもつかないし、見当たらないじゃない!
出てきてさっさと説明しなさいよ、光の精霊!

『お呼びかなー?』

「えっ?」
「なんですか」
自称、光の精霊とやらのなんかしゃくに触る声が聞こえた気がした。
うん、歩きすぎて幻聴が聞こえたのかも。綾辻ちゃんは聞こえてなくて、私の声に驚いてるみたいだし。
気のせいか。

『ちょっと、ねぇ、なんなのその態度! 君から呼び出したんでしょ?!』

あぁ、幻聴がやけに現実味を帯びつつ、聞こえてきて喧しいなぁ。
何に対して焦ってんだか。

『ちょっと君さぁ!』

そう言って目の前に、光るモヤが現れた。
あ~、これ、あの胡散臭い人にあったときのだー。
綾辻ちゃんも見えているらしく、目を開いている。
お、綾辻ちゃんが動揺した!すごい!
『動揺した!じゃないから! 人のこと呼び出しておいて完全スルーはなくない?』
「は?呼び出す?」
『君言ったでしょ、説明しろって』
「言ってない」
『いや、言っーーー』
「心の中で暴言と共に呟いていただけで」
『それも聞こえるんですー』
わぁ、なんと不便な。自分に対しての悪口丸聞こえだね。悲しいー。
(あぁ、私、疲れすぎてちょっとへんになってきたなぁ……)
『君たちがさ、試練完全スルーするから、僕から出る羽目になったんだけど』
それ、私の呼び出しと関係なくない?
「というか、試練……?」
「それはなんです?」
初耳だぞ、一応。
『え、君は一回クリアしたじゃん』
そう言って精霊は、私のこと指差すけど、そんな覚えない。
何言ってんだろう、変なことしすぎて頭おかしくなったのかな?
『おかしくないから』
あ、聞こえてんのか。
『ほら、光の扉のとこで』
まったく何を言ってるか本当にわからないんですが。
光の扉ぁ?
なにそれ。
見たことないよ。光り輝く扉ですか?そんなのあるの?
『ほら、桜姫院の子と一緒に開けた扉』
……あ、アレ?
あのー、いつの間にか夜姫芽が消えてて、そのとき私がもたれかかってた壁(こと扉)のこと?
あれ、開かなかったんだけどなぁ。
『それを開けるのが前回の試練! 今回の試練は、【妖たちを平伏させること】』
……は?
「……は?」
「なに言ってらっしゃるので?」
私は思ったことがそのまま言葉に出て、絢辻ちゃんは、流石に「は?」と内心思っているであろう雰囲気を漂わせる。
『わっかんないかな?』
それでわかったら、ほんっとにその人頭いいんだね。私にはわからないや。
でも、絢辻ちゃんにはタイムリミットないし、ここでのんびりしたとて、綾辻ちゃんを送って、その後、次の扉の人に話さえ出きれらそれでいい気もするからいーけどね。
『ちょっと、諦めないでくんない?』
「は?嫌だ」
『嫌だ、って……』
「ここに強制的に来させられているんです。その中の自由すら許されないなんて飛んだ地獄ですね」
……綾辻ちゃん、むっちゃ言いますね。
まぁその通りだと思うし、事実その通りですが。
『いやぁ、それもこれも全部この子のせいだから~』
そう言いながら私を指差す。
あ~!人のこと指さしたら、いーけないんだ、いけないんだー、せーんせいに言ってやろー。
『……なにそれ』
え、知らない?!
あの、小学生とか(主に女子)がよくやる、告げ口の歌ですよ!
大抵の低学年男子が、これでバカげたことをするのをやめる煽り歌。
そして、ほとんど誰も告げ口することがないやつ!
『君さ、心の中では饒舌だよね』
そりゃ、もう半分精神崩壊だから。
『……って、それはいいから!試練受けて!受けたら、綾辻くんは帰えしてあげる!』
あ、やっぱり私は無理なんだ。
「帰る、ですか……」
冷たい目を精霊に向ける。
『そ、その目はやめてよ……』
いや、なにいきなり弱腰になってんの、あんた。
私には強腰で、綾辻ちゃんには弱腰って……。
冷たい視線を送られただけでアウトとかどんだけ弱いの?
『帰る時には、持っていきたいもの、持っていっていいから! 妖退治手伝って!』
そうやって言い放つ。
おい、待て?
少し待て?
いま、本音言ったな?
言ったよな?
『妖退治手伝って』って。
それが本音だな?それが目的だな?
そのために絶対的に綾辻ちゃんの力がいるんだな?
だから、弱腰なんだな?
そうか、そうか。
よーくわかったよ。
『……ひゅぅ~、ひゅっ、ひゅぅ~』
「誠に私事で恐縮ですが、その、とてもお上手とお世辞にも言うことのできない、なんならできてすらいないとも思うことができる口笛なるものをできればやめていただきたいと思っている次第です」
綾辻ちゃん、丁寧な言葉使って微笑みかけつつ放ちますけど、それ要するに、『その下手な口笛と思ってすらいいのかわからないナニカをいますぐやめろ』。
そーゆーことでいーんだよね?
『妖退治してくれたら、その名札と布持って帰っていいから!消えるから!ね?!』
なに精霊(自称)が頭下げてんの?
精霊なら、せめてプライドは持ちましょうよ。
「白鴎さん」
「うーん、どうする?好きにしてくれていーよ」
「……では、受けましょう」
『ほんとっ?!』
「いつまでもついてこられてはこちらの尊い時間が削られ、とても有害なので」
さらっとひどいこと言いましたね。

まぁそんなこんなで妖退治が決まりました。
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