歳の差の花嫁

Katty

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リョウ認められる

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「ねえ、リョウくん昼間何してるの?」
ふと、ミウに聞かれる。
「ん?適当に暇潰ししてるよ。」
「でも、病室にいないって、看護婦さんが言ってたよ。」
「ああ、病院近くで暇潰し場所見つけたんだよ。」
「ねえ、何してるのかな?浮気はダメだよ。」
「浮気じゃないよ!ピアノ弾いてるの。この前ミウのライブの時に弾いたら恥ずかしい出来だったから少し練習もかねて弾いてるの。」
「リョウくん、ついにデビューしてくれるの?」
「いやしないよ。話飛びすぎ、趣味のレベルだよ。今暇な時間が沢山あるから。」
「ねえ、次いつ行くの、私も行きたい。」
「ミウの学校がある時間に行ってるから無理かな~」
「じゃあ、休む。」
「ダメ!勉強頑張りなさい。」
「だって、リョウくんの曲聞きたいもん。」
「退院したら聞かせるから我慢しなさい。」
「むう、録音を希望します。」
「却下します。まだ、上手くないからね。もう少し練習させて。」
「むう、いいもん。でも聞かせてね。」
「上手くなったらね。」

翌日、
「キサクさん、今日も来ました。」
「おーリョウくん、今日も聞かせてくれるよね。」
「いいですよ、でも、作曲中は聞かないでくださいね。」
「それぐらいのデリカシーはあるつもりだよ。あと今日、わしの友人が来るのだが聞かしてやってくれんかね?」
「いいですよ、でも、批判はやめてくださいね。上手くないのはわかってますから。」
「批判なんかはせんよ、というか出来んよ。」
キサクは笑いながら答えた。
「じゃあ、俺はピアノ弾いてますね。」
「あいよ。」
俺は奥でピアノを弾いていた。
しばらくすると、キサクさんが人を連れて入ってきた、
「リョウくん、お邪魔するよ。」
「あっ、キサクさん。そちらの方は?」
「ワシの友人で武藤タツマじゃ。」
「初めまして、キサクからいい曲を弾く若者がいると聞いて聞きにきたよ。」
「キサクさん、ハードル上げないでください。所詮素人の趣味ですから。」
「まあまあ、リョウくん。ワシはそう感じておるだけじゃからな。」
「はぁ、じゃあ、一曲弾きますけど、批判はやめてくださいね。メンタル弱いもので。」
「ありがとう、聞かせてもらうよ。」
俺はミウの歌の定番どころを弾いた。

曲が終わるとタツマさんは立ち上がり拍手をしながら。
「素晴らしい、聞き慣れた曲だが深い味わいが表現されていたよ。」
「ありがとうございます。」
俺は照れながらお礼をのべた。
「リョウくん、最初に、聞かせてもらった曲も弾いてもらえんか?」
「いいですよ。指も少しは動くようになったから、この前よりはいい曲になってるはずです。」 
俺はピアノを弾く。

よし、上手く弾けたな。
自分で満足できる、感じに仕上がっていた。
すると、タツマさんは俺の方に来て。
「リョウくん!この曲は誰の曲かね!」
凄い勢いで問われた。
「昔、友人と一緒に作った曲ですよ。今日は指も動いたし前よりは聞けるようになってましたよね、キサクさん?あれ?キサクさーん。」
キサクは感動して泣いていた。
「リョウくん、この曲を君と友人で独占するのは罪だ!一刻も早く世間に公開するべき曲だ!今すぐにでもボクのレーベルからデビューしないか!」
タツマの興奮はおさまらず、話しかけてくる。
「いや、友人の許可も入りますし。」
「すぐに許可をとろう、何処の誰かね!」
俺は勢いに負けて、
「ミウです、歌手の。既にデビューしてる子だから、あらためてデビューは無理じゃないかと。」
「なに!ミウちゃんか!なら何も問題ない。すぐに許可をとろう。」
タツマさんは土鼓かに電話をしだした。

「リョウくん、以前君が腕が錆びついてたと言った意味がわかったよ。ホントの曲はこんなに素晴らしかったんだね。」
キサクさんは泣きながら絶賛してくる。
「あのキサクさん?落ち着いて、あくまで趣味ですからね。」
「何を言うんだい!この曲を仕舞い込むのは音楽家の1人としてはするせない。頼むから公開してほしい。この通りだ!」
キサクは土下座して頼み込む。
「頭を上げてください。たぶん、この曲はミウが歌って公開されますから。」
キサクは顔をあげ、
「ホントかね!」
「ええ、ただ秘密にしてくださいね。ミウが各所に調整してると思いますので。」
「もちろんだとも!それでいつ発売される!」
キサクも興奮が止まらない。
俺は折れた足を見せ、
「いや、まだ先です。俺がこの通り重症ですから。実際アバラも折れてますし、そういう意味ではまだ完璧な曲じゃないか。」
「そうだったね、君は入院してるんだった。あれで完璧じゃないとは・・・しかし、そのケガはどうしたのかね?」
「いや、車ではねられまして。」
「なに!何処の誰だ!人類の宝が公開されず失われる所だったじゃないか!」
キサクさんは興奮冷めぬまま、今度は怒りだした。
「まあまあ、車の方は悪くありません。俺が道路に突き飛ばされただけですし。」
「突き飛ばされた?君は殺されかけたのかね。」
「まあ、そうともいいますね。」
俺は事情をキサクに話した。
「あり得ない、そんな事は許されていい訳がない!」
事情を知ったキサクが怒ってくれたのは少し嬉しかった。
すると、電話をしていたタツマがやって来た。

「リョウくんも人が悪いな、すでにデビューの予定があるじゃないか。」
笑顔で話かけてくる。
「はい?」
「しかし、事故がなければ今頃CDになっていたかと思うと残念でならない。」
「あの~何処まで話がいってるのですか?」
「ん?予定だとすでに録音終えて、生産してたはずだと聞いたかな。録音前にケガとはついてなかったな。」
俺が知らないところで話は進んでいたみたいだった。

「おい、タツマ!それどころじゃないぞ!」
キサクは怒りのまま、タツマに話しかける。
「どうしたキサク?何をそんなに怒ってる?いい曲聞いたのだから怒る事なんかないだろ。」
「いや、お前も聞けば怒るはずだ!」
キサクは事故の経緯を話した。
「よし、始末しよう。科学者ゴトキが人類の宝に手をだすとは!許しがたき!」
怒れる爺さんが1人増えた。
「二人とも落ち着いて!体に悪いですよ。」
俺がなだめるが聞いてくれない。
言葉の節々に、
「おい、ーー組とは連絡つくよな。」
「おう、海に・・・」
「バカを言うな簡単に・・・」
不穏な言葉が飛び交っていた。

俺は仕方なくピアノを弾いた。
この二人なら曲を聞けば落ち着くだろうと。
そして、俺はコツコツ作ってた曲を奏でる。
いろんな人に助けられて生きてる今に感謝の気持ちを込めた、バラード曲だった。

曲が終わると二人は泣き出していた。
「「リョウくん、まだこんな曲があったのかね。」」
シンクロしてる二人はよく似ていた。
「二人とも落ち着きましたか?あまり非合法な事は良くないと思いますよ。」
キサクは頭をかきながら、
「申し訳ない、年甲斐もなく怒りに身を任せるなんて。」
タツマも恥ずかしそうに
「いや、キサクの言う通りだ。若い者にさとされるとは・・・しかし、今の曲は?」
「さっきの曲は最近一人で作ってたやつです。まだ、未完成ですが・・・」
「なに!というと此処で作ってたのか!」
「はい、キサクさんのお陰で出来たようなものですね。」
キサクは泣きながらかたりだした。
「ワシは子供の頃から名のある曲を作りたかった。しかし、才能が足りず夢破れ。ならばと教え子に期待して始めた教室でこんないい曲が生まれるなんて・・・ワシの人生無駄ではなかったんだな・・・」
キサクは泣き崩れ、会話にならなかった
「あの、期待されすぎなような・・・」
「リョウくん、キサクの気持ちはよくわかる。なぁ、この曲は今後どうするつもりかね?」
「うーん、あまり考えてないんです。でも、今回の入院で世話になった人には聞いてもらいたいかな?」
「レコーディングする予定は?」
「ないですね。そもそもレコーディングってどうやるかも知りませんし。」
「リョウくんは何処か事務所に所属してるのかね?」
「いえ?普通のサラリーマンですよ。そういう意味なら会社に所属してます。」
「よし、うちに来ないか。うちの事務所から世界を目指そう!」
「いや、話が大きくなりすぎてるような・・・」

そこにミウが駆けつける!
「待ってください!リョウくんはうちの事務所に所属する予定なんです!」
「ちっ!来たか!」
タツマは舌打ちする。
「タツマさん?」
「リョウくん、ダメだからね。リョウくんは私の物です。とらないでもらえますか?」
「しかし、君は既に人気絶頂、君と一緒に歌えばどうしてもリョウくんの存在が消えてしまう。それは君の本意でもないだろ?」
『あの、俺は消えててもいいんですが・・・』
「そうですが、それでも私はリョウくんと一緒に歌いたいんです。」
「では、こうしよう、一度リョウくんが曲をだす。それとコラボする感じで歌えばいいじゃないか!」
『そもそも、一人でデビューなんて考えてもないのですが・・・』
「それも考えましたけど・・・」
『考えたの!』
「リョウくんは私と一緒に歌う夢があるんです!」
『俺にそんな夢あったかな~』
どうやら俺の声は二人に届かないらしい、諦めかけていたら、今度は二人から聞かれる。
「「それでリョウくんはどっちからデビューするの?」」
「いや、俺はデビューしないよ、ミウとの約束だし、同人かインディーズぐらいで一曲出して終わりかな、そうだB面に今の曲入れたら一枚ですむね!」
二人から白い眼を向けられる。
キサクはすがるように。
「頼むから、ワシの夢をB面にしないでくれ~!」
「あっ!すいません。」
俺は思わず謝ってしまった。
「ウーン、なら二枚かぁ~よし、それでいこう。」
「わかりました。リョウがそれでいいなら私は反対しないけど、いつでも追加OKだからね」
「おう、追加予定はないけどね。」
「リョウくん、甘いよ。すぐに貸しを作って歌わしてあげる♪」
「あう・・・何だろう、三枚とかいってる未来が見える。」
ミウはひとまず納得してくれた。
あとの二人は・・・
「タツマよ、なし崩し的にじゃなぁ・・・」
「もちろんだ、絶対逃がす訳ないだろ。」
納得してないのがよくわかったがひとまずこれで落ち着けた。
「じゃあ、俺達帰りますね。」
俺はミウを連れて病院に帰った。

「リョウくん、ついにデビューだね。」
「まだ、早いよ。治ってからだ。」
「でも、あの二人に認められるなんて凄いよ。」
「へっ?有名な人なの?」
「知らなかったの?キサクさんは音楽評論家で世界的に有名だし、タツマさんはやり手のレーベルの代表だよ。」
「へぇー、知らんかったよ。」
「だから、二人に認められたと言うことは成功間違いなしだよ。」
「うーん?成功はどっちでもいいかな?」
「そうなの?」
「俺は聞かせたい相手が聞いてくれたらそれでいいかな?あくまで趣味のレベルだし。」
「もったいないよー二人で世界をとろうよ。半分はリョウくんにあげるから~」
「何処の魔王だ!まあ、ミウが歌うなら伴奏ぐらいはたまにやるよ。」
「ホント!じゃあ次のライブは・・・」
「いつもはやりません!」
「むう、いいもん。私無しじゃいられなくしてあげるんだから♪」
俺の頬に軽くキスをして。
「リョウくん、逃がさないから覚悟してね♡」
ミウの笑顔が可愛くて何も言えなかった。

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