俺とアーサー王

しゅん

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6日目「騎士王とその仲間 その1」

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ピンポーン
玄関のチャイムが鳴って、顔をリビングから出す。そこには扉のガラス越しに見える影が、そう、それは昨日の夜の事──。

「聞いてください主!キャメロットに座標がバレて連れ戻されてしまうのです!」
「俺は正直言っていいんだが。勝手にクレカ使われずに済むし、お前の分の食費が浮く」
「主ィッ!」
アーサーが涙目になって抱きついてくる。
「じょ、冗談だわ!で、お前はどうしたいの?」
アーサーは正座し直して、俺の方を真っ直ぐ見直すと、
「明日、キャメロットから、あの人が──」

あの人──そう円卓の騎士の1人、ランスロット卿である。
正直俺はビビっていた。アーサーは多分キャメロットでの生活が嫌になって俺の家にきたんじゃないのか?それに比べランスロット卿の影を見て、ガラス越しのせいか影は少しだけ小さく、長い髪を持っている、それに王がいなくても平気な精神力がある。
もてなし方を調べとくべきだった。下手な敬語使うくらいならもういっその事砕けた感じて言っちゃおうか。嫌、でも死刑とか言われたらどうしよう。警察沙汰になってもワンチャン警察側が全滅する。
俺は恐る恐る玄関の扉を開けた──!

「···へ?」
そこには影と同じ大きさ、言わば白いワンピースを着た、小さな女の子がいた。
それを見て、思った。
「良かったぁー!ランスロットはまだで良かったー」
安堵の息を漏らし、女の子にここに来た理由でも聞こうと思ったら──
「おい、初対面で、それに人間風情がこの私を呼び捨てとは落ちたものだな」
へっ?
嫌な汗が流れてきた。これアレ?ゲームとかでよくある女体化とかそういう──
「我が名はランスロット、このちっぽけな家にいるアーサー王を回収しに来た」
嘘だろー!

改めて見ると、普通に可愛い、ロリコンの俺からすると頭を撫でてやりたくなる。そんなことしたら殴られそうだから止めるけど。
発達最中の小さな体に、白く薄いワンピースに、1つ結びの柔らかい髪型で銀髪、一目見たらただの中1に見える。
だがその中身はアーサーと同じ年齢らしい。
「おい」
「はひぃ!」
声も幼い幼女の声だと言うのに1発で圧をかけるところを見ると本当にランスロット卿なのだろう。こんな幼女に情けない声を出して頭を低くするとかどういう絵面だよ。
「アーサー王はどこだ」
「はいぃ、アーサー···王は今出かけてて···」
本当はランスロット卿がいなくなるまで散歩させているのだがそんなこと言えない。
「いつ帰ってくる」
怖い!この幼女怖い!
「えっと、分からないので、ランスロットさん、また後日──」
「ランスロット様と呼べ」
「ごめんなさいランスロット様ァー!」
見事な土下座をランスロット様に見せる。
「ふむ、後日また来るのも面倒だ、アーサー王が帰ってくるまでここに泊まるとしよう」
えっ···

もちろん、出てけなんて言えるはずもなく、俺の家で優雅にくつろぎながらテレビを見ている。
俺は関心していた。
アーサーがこんな風にしてても優雅もクソもないのに、このランスロット様はこんなボロアパートにいるのにまるで王の一室を再現されているような気品を感じる。
「おい、お茶を出せ」
「ハイっ!どうぞ!」
素早く、正確に、暖かいお茶を渡す。
「あっつい!湯加減も調整できんのか!」
「ごめんなさいランスロット様ァー!」

買い物に行くと言って家を出る、そしてアーサーに散歩してろと言ったルートを辿る。
「おい、あれって···」
そこには拾ったのかボロボロの帽子を被りながら川に釣り糸を垂らす屈強な男が。
「フンフーン」
アーサーが呑気に花歌を歌っている。こっちは地獄だと言うのに。
「おいっ!何してんだアーサー!」
後ろから頭をぶっ叩いてやった。

「おい、ランスロット様が予想外のアレだったんだけどどうしてくれんの?」
「アレ、とは何か分かりませんがやばいのですね、では私はもう少しここにいます」
アーサーがまた川に向かい始めて拾った竿を川にやろうとした所を俺は止めた。
「頼む、帰ってきてくれ」
少しだけイケボで訴えかける。目をウルウルとさせながら。
本当に、まじで、息苦しいよあの家。
アーサーの肩を力強く握る。
「主···」
アーサーは少し悩むと、
「分かりました、主がそこまで言うなら私が話をつけます」
アーサー!いや、アーサー王!
ここまで頼りになるアーサーは今まで無かっただろう。
俺がアーサーの下半身に抱きついているとそこにとてつもない殺気を感じた。

「取り込み中悪いけど、どういう事?」

その声はもちろんランスロット様の物で、手にはアーサーの鎧とエクスカリバーがあった。

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