俺とアーサー王

しゅん

文字の大きさ
上 下
7 / 24

6日目「騎士王とその仲間 その2」

しおりを挟む
「やべー···」
俺の死亡フラグがビンビン立ってますが。
多分家の押し入れに隠しておいたアーサーの鎧とかが見つかって怪しまれたのか。
そりゃ、アーサーがエクスカリバーを手放すなんて普通おかしいよな。
「ランスロット卿ッ!」
威勢のある大きな声でアーサーがランスロット様に言い出す。
「私は主と主の家が好きだ、これ以上私達の生活に支障をきたすと言うならいくらランスロット卿と言えど容赦しないぞ」
「アーサーぁ!俺も好きだぁー!」
多分周りから見たらかなりやばい絵面だろうがそんなの気にしない。
「ふーん、で?」
かなり情熱的に訴えたのに帰ってきたのはランスロット様の冷ややかな返事だった。
「アーサー王、貴方がいなくなってキャメロットは常に大混乱であります。帰って来てください」
「何度言おうが私は主とあの家へ帰る」
「そうですか···」
ランスロット様は目を閉じるといつの間にかある槍を取り出した。禍々しい外見に槍の先には赤くべっとりとした血が着いている。
あれ?これってやばくね?
俺の前には、無垢そうで幼い少女が身の丈に合わない大きな槍を構えている。
流れ的にアーサーとランスロット様が戦う雰囲気なんだけど巻き込まれて俺も死にそうなんですが···?
ピリッと空気が音を立てた気がした。
逃げなきゃ、これあかん。
俺が猛ダッシュでそこから走り出すと──!
ドンという普通では鳴らない音がどんどん聞こえてくる。
俺がギリギリ目をそちらに向けると、
「うおおおっ!」
やばい!これやばい!映画のCGレベルに凄い!
アーサーがスレスレでランスロット様の槍を避けている。見てるこっちまでヒヤヒヤしてくる。
そしてアーサーが避けつつエクスカリバーの元へ向かう。
上手い!避けながらエクスカリバーの回収に向かうなんて!流石だ俺のアーサー!
アーサーはエクスカリバーを手に取ると、構える。そう、あの山を消し飛ばすアレだ。
「──ッ!」
その衝撃波をランスロット様に向けて放った──!

パラパラと砂煙が待ってる中俺が見えたのは、エクスカリバーを振り切ったアーサーと···
その向かいに白いワンピースをボロボロにしてペタっと座り込んでいるランスロット様がいる。
上手に見れば大きすぎず、小さすぎない乳と何も無い股の部分が見えてしまいそうだ。
そしてランスロット様は口をパクパクしている。そしてその後すぐに目に涙を浮かべ──
「うああああーん!」
まるで産まれたての赤子の様に泣き喚くランスロット様、いや、この状況を見るにランスロットちゃんだろう。
「え、ええっ!ちょアーサーどういう事?」
俺がアーサーに耳打ちすると、
「ランスロット卿はあのように見えてまだ12歳なんです、よく大人ぶって人にマウントをとったり、指図したりするのです」
おい。
アーサーからの急なカミングアウトによってランスロットちゃんが本当に可愛く見えてしまった。まぁ、可愛がる前に俺をコキ使った借りを返してもらうが。
「ここが人通りの少ない河川敷で良かった、とりあえず俺ん家に連れてこう」

とりあえず、あの後家に連れ帰り、アーサーがボロボロの服を脱がせ、風呂に入らせる。
「で、あの子どうすんの」
あの子というのは、ランスロットちゃんの事だ。
「キャメロットに返してしまうと私まで帰れと言われかねないのです」
「もういっそ、一緒に帰ればいいんじゃないかな」
アーサーが凄いスピードで俺の方を向いてきた。
少しビビった。
ヒタヒタ足音が聞こえだした。ランスロットちゃんが出たのだろう。
「おーい、体ちゃんと──」
そこには、タオルも巻かずあらゆる禁忌が見えてしまっている状態で風呂から出てきたランスロットちゃんがいた。

「おい、お前、私の服はどこだ」
なんかそれどころでは無いのだが?
だが、数多のビデオで見てきた俺はたかが幼いアレやコレに心動かされる程馬鹿ではない。
「無いよ、何言ってんの、後その口調やめろよな、ランスロットちゃん」
小さな胸、しかもピンポイントな所をガン見しながら答えた。
「その呼び方やめろ、それにどこ見ながら言ってんだ」
コイツは恥ずかしくないのか。
俺とランスロットちゃんがいがみ合っていると、
「主、買い物をついでに済ませておいたのでご飯を作ってください」
今気づいたがもう夕飯の時間。
「よし、ってお前何勝手に和牛買ってんの?」
俺はアーサーの分の肉の割合を少し減らした。

「「「いただきます」」」
今までこの小さなちゃぶ台を3人で囲む日が来るなんて思わなかった。
俺は箸でアーサーとランスロットちゃんはフォークで肉をつきながら口に運んでいる。
食いながら俺がチラッとランスロットちゃんの方を見ると···
「──モグモグ···」
ニコニコしながら美味しそうに食べる姿があった。
自動的に俺も笑顔になる。
「──モグっ、何だお前、この食事が終わったら早く服買ってこい」
そういやまだ全裸だった。コイツ俺の服を汚いとか言って頑なに着ようとしないからな。
「ハァ、分かったよ」

ランスロットちゃんの服を買ってきて、寝る前のこと
「私はアーサー王を連れ戻してきたのだが最悪監視だけでもいいと言われてるからしばらくこの家に滞在する」
毎回思ってるんだがキャメロットって、どこにあんの?面倒だから聞かないが。
「あぁ、アーサーは人様の金を勝手に使うインチキ野郎って言っといてくれ」
「主、私のことをそんな風に思ってたのですか?」
今日、新しい家族が増えました。
しおりを挟む

処理中です...