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第九章 人魚姫と刻の解放
156話 人魚姫とカエルの王子様
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⸺⸺ヴァルハイム城、玉座の間⸺⸺
クロノらは、連れて来られたカエルの王子様に呆気に取られていた。ポールがひょこっと姿を現し紹介を終えたところで、国綱がボソッとこう言った。
「なんじゃ、この国の王子はワシと同じ妖か?」
エルヴィスが「そんな馬鹿な」と即座にツッコむ。
「ゲコゲコ、あぁ、なんと可愛らしいマキナの姫が……! 良ければこの僕と熱い夜を共に……」
クリストフはカエルの手をミオへと差し出しながら寄ってくるが、クロノが彼の顔面を足の裏で止めて遮った。
「ふざけんな。コイツに寄るな」
引きつった表情のクロノに苦笑するミオ。我が子のその態度を見たアウグストとコルネリアははぁっと深くため息を吐いた。
「クリストフ……あなた全然懲りていないのですね……」
と、コルネリア。
「ゲコ……すみません……可愛らしい女性が居たので、つい……」
クリストフは顔の真ん中に大きな靴跡を残しながらトボトボと引き下がった。
ここで、ケヴィンが玉座の間へと駆け込んで来る。
「船長、報告が……! って、カエル!?」
「ケヴィン? 2人はどうした?」
と、クロノ。エルヴィスがアウグストらに「ルフレヴェの仲間で……」と説明をしている。
「貴族街の屋敷で元人間の暗黒種を確認。2人はその屋敷に残って事情を聞いてる。どうやらダリアって女性が暗黒種の事を知っているらしく、俺はその報告に戻って来た」
ケヴィンがそう報告を終えると、玉座の後ろからダリアがひょこっと顔を出し「ダリアはあたしでーす」と小さく手を振っていた。
「アンネリーゼは無事であったか?」
とアウグスト。
「アンネリーゼってあのマキナのお嬢様の事か? 元気そうだったぜ?」
ケヴィンがそう答えると、アウグストもコルネリアもホッと安堵の吐息を吐いた。
「ではこの国の現状を説明するとしよう……一体どこから説明したものか……」
アウグストが頭を抱えていると、ダリアが「あたしが説明します……」と申し訳なさそうに玉座の後ろから出てきた。
「あたしは国王陛下に事情を説明して、密かにこの城で匿ってもらっていたの。ほら、姿が人魚で目立つし……。でも、このクリストフって王子にあたしが匿われてる部屋が見つかっちゃってね、めちゃくちゃ口説かれたのよ」
「……なんか茶番の予感がするな」
クロノはそうボソッと愚痴を漏らす。
「まぁ……続きを聞こうよ……」
ミオにそうなだめられ、彼はフンと鼻を鳴らした。
ダリアが続きを話す。
「クリストフ殿下があまりにもあたしと熱い夜を過ごしたいって言うし、あたしも暇だったから一晩だけ付き合ってあげたんだけど……。行為の最中に、そのアンネリーゼってマキナの子が部屋に押し入ってきて……“怒”だったの……」
「アンネリーゼはベルトラム公爵家の令嬢様で、クリストフの婚約者なのよ……」
と、コルネリア。
「えっと……何で俺慌てて戻って来てこんな修羅場の話聞かせらんなきゃなんねーんだ?」
ケヴィンは渋い表情を浮かべる。「それな」と、エルヴィス。しかしダリアはそんな事もお構いなしに続ける。
「あたしも婚約者がいるなんて知らなかったのよ~……。でね、アンネリーゼは私たちにある液体をぶっかけてったの。そしたらクリストフ殿下はこの通りカエルの姿に。で、私はなぜかクラニオの姿になったって訳」
アウグストが口を挟む。
「ベルトラム家は有力な薬師の一族。その中でもアンネリーゼは“変身薬”の研究に力を入れていてね。どうやらクリストフが城のクラニオのメイドらに鼻の下を伸ばしているのを見て、彼女は自分もクラニオの姿になろうとしていたようなのだ」
「なんて健気な……」
と、ミオ。
「アンネリーゼは『万が一あなたが逢瀬をした時の保険で作っていた“カエル薬”を使う事になるとは思っていませんでしたわ!』って泣きながら出ていったの。後から殿下に聞いたら手を出してしまったのはあたしが初めてらしくて……」
ダリアはばつの悪そうな表情でそう付け加える。冷ややかな視線を送るミオ。
「いや、マジでやらかしたって思ってるのよ。あたしがクラニオに変えられたのも人魚の姿じゃなければ殿下も手を出さないと思って、自分が飲もうとしていた分をかけていったのね……。自業自得だって分かってるしすぐに謝りに行こうと思ったんだけど、タイミング悪く暗黒種って魔物が貴族街に突然湧いて出てきたのよ」
ここでポールが口を挟む。
『あのさ、その浮気の話、オイラたち聞く必要あった? 暗黒種はもちろん対処していくとして、君らがクラニオとカエルである事になんか問題でもあるの? 悪いけどオイラたち急いでるんだけど』
「おぉ、ポール君イラついてるねぇ……」
そう言うエルヴィスにクロノも「そうだな……」と相槌を打つ。記憶を取り戻した事と関係しているのだろうか。クロノはそんなふうに考えていた。
「分かってる、早くアルバウスに行きたいのよね? それが……問題大アリなんです……」
ダリアがそう言ってずーんと落ち込むと、ポールも『えぇ……マジ?』と、いつもの調子に戻ってダランと脱力した。
クロノらは、連れて来られたカエルの王子様に呆気に取られていた。ポールがひょこっと姿を現し紹介を終えたところで、国綱がボソッとこう言った。
「なんじゃ、この国の王子はワシと同じ妖か?」
エルヴィスが「そんな馬鹿な」と即座にツッコむ。
「ゲコゲコ、あぁ、なんと可愛らしいマキナの姫が……! 良ければこの僕と熱い夜を共に……」
クリストフはカエルの手をミオへと差し出しながら寄ってくるが、クロノが彼の顔面を足の裏で止めて遮った。
「ふざけんな。コイツに寄るな」
引きつった表情のクロノに苦笑するミオ。我が子のその態度を見たアウグストとコルネリアははぁっと深くため息を吐いた。
「クリストフ……あなた全然懲りていないのですね……」
と、コルネリア。
「ゲコ……すみません……可愛らしい女性が居たので、つい……」
クリストフは顔の真ん中に大きな靴跡を残しながらトボトボと引き下がった。
ここで、ケヴィンが玉座の間へと駆け込んで来る。
「船長、報告が……! って、カエル!?」
「ケヴィン? 2人はどうした?」
と、クロノ。エルヴィスがアウグストらに「ルフレヴェの仲間で……」と説明をしている。
「貴族街の屋敷で元人間の暗黒種を確認。2人はその屋敷に残って事情を聞いてる。どうやらダリアって女性が暗黒種の事を知っているらしく、俺はその報告に戻って来た」
ケヴィンがそう報告を終えると、玉座の後ろからダリアがひょこっと顔を出し「ダリアはあたしでーす」と小さく手を振っていた。
「アンネリーゼは無事であったか?」
とアウグスト。
「アンネリーゼってあのマキナのお嬢様の事か? 元気そうだったぜ?」
ケヴィンがそう答えると、アウグストもコルネリアもホッと安堵の吐息を吐いた。
「ではこの国の現状を説明するとしよう……一体どこから説明したものか……」
アウグストが頭を抱えていると、ダリアが「あたしが説明します……」と申し訳なさそうに玉座の後ろから出てきた。
「あたしは国王陛下に事情を説明して、密かにこの城で匿ってもらっていたの。ほら、姿が人魚で目立つし……。でも、このクリストフって王子にあたしが匿われてる部屋が見つかっちゃってね、めちゃくちゃ口説かれたのよ」
「……なんか茶番の予感がするな」
クロノはそうボソッと愚痴を漏らす。
「まぁ……続きを聞こうよ……」
ミオにそうなだめられ、彼はフンと鼻を鳴らした。
ダリアが続きを話す。
「クリストフ殿下があまりにもあたしと熱い夜を過ごしたいって言うし、あたしも暇だったから一晩だけ付き合ってあげたんだけど……。行為の最中に、そのアンネリーゼってマキナの子が部屋に押し入ってきて……“怒”だったの……」
「アンネリーゼはベルトラム公爵家の令嬢様で、クリストフの婚約者なのよ……」
と、コルネリア。
「えっと……何で俺慌てて戻って来てこんな修羅場の話聞かせらんなきゃなんねーんだ?」
ケヴィンは渋い表情を浮かべる。「それな」と、エルヴィス。しかしダリアはそんな事もお構いなしに続ける。
「あたしも婚約者がいるなんて知らなかったのよ~……。でね、アンネリーゼは私たちにある液体をぶっかけてったの。そしたらクリストフ殿下はこの通りカエルの姿に。で、私はなぜかクラニオの姿になったって訳」
アウグストが口を挟む。
「ベルトラム家は有力な薬師の一族。その中でもアンネリーゼは“変身薬”の研究に力を入れていてね。どうやらクリストフが城のクラニオのメイドらに鼻の下を伸ばしているのを見て、彼女は自分もクラニオの姿になろうとしていたようなのだ」
「なんて健気な……」
と、ミオ。
「アンネリーゼは『万が一あなたが逢瀬をした時の保険で作っていた“カエル薬”を使う事になるとは思っていませんでしたわ!』って泣きながら出ていったの。後から殿下に聞いたら手を出してしまったのはあたしが初めてらしくて……」
ダリアはばつの悪そうな表情でそう付け加える。冷ややかな視線を送るミオ。
「いや、マジでやらかしたって思ってるのよ。あたしがクラニオに変えられたのも人魚の姿じゃなければ殿下も手を出さないと思って、自分が飲もうとしていた分をかけていったのね……。自業自得だって分かってるしすぐに謝りに行こうと思ったんだけど、タイミング悪く暗黒種って魔物が貴族街に突然湧いて出てきたのよ」
ここでポールが口を挟む。
『あのさ、その浮気の話、オイラたち聞く必要あった? 暗黒種はもちろん対処していくとして、君らがクラニオとカエルである事になんか問題でもあるの? 悪いけどオイラたち急いでるんだけど』
「おぉ、ポール君イラついてるねぇ……」
そう言うエルヴィスにクロノも「そうだな……」と相槌を打つ。記憶を取り戻した事と関係しているのだろうか。クロノはそんなふうに考えていた。
「分かってる、早くアルバウスに行きたいのよね? それが……問題大アリなんです……」
ダリアがそう言ってずーんと落ち込むと、ポールも『えぇ……マジ?』と、いつもの調子に戻ってダランと脱力した。
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