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4話 シュナイダー公爵閣下
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「えっ、エリーゼ様ではないのですか!?」
回復薬を握りしめた先程のメイドさんが彼の背後で驚きを顕にする。
「すみません……私……ごめんなさい……」
どうしよういきなりバレてしまった……。
「とにかく回復薬を飲ませろ。以後こいつの事はフローラと呼ぶように。こいつの世話はバーバラに一任する。すぐに呼んでこい」
彼はそう言うと、すぐにどこかへと立ち去ってしまった。
「はい、かしこまりました! フローラ様、こちら回復薬になります。このくらい飲めば頬の傷は治るはずです」
メイドさんはそう言って目の前で回復薬の栓を開けて、綺麗なグラスへトクトクと注いでくれた。
「ありがとうございます……。あの、フローラでも、飲んでも良いのでしょうか……」
私はグラスを持ったままモジモジする。
「何をおっしゃいますか。オスカー様はフローラ様だとお気付きになられると、すぐにご心配なされていました。その時点でわたくし共は、エリーゼ様よりも丁重に扱うべきだと、心得ております」
「そんな……ことって……。あの、いただきます……」
「はい!」
私は人生で初めて回復薬を飲んでみる。少し甘いような、でも苦いような、不思議な味がした。
「あれ……頬の傷、治りませんね……」
メイドさんが心配そうに私の頬を眺めている。そのため私も自分で擦ってみると、まだ少しヒリヒリしていた。
「本当ですね。あっ、でも、足の傷が治りました。ここ大きく擦りむいてしまっていたのですが、すっかり良くなっています。ありがとうございます!」
傷のない足なんて久しぶりだ。私は嬉しくなって、えへへとはにかんだ。
「フローラ様……わたくし、レベッカと申します! バーバラの補佐役としてお世話を担当することになりましたので、何かありましたら何でもお申し付けください!」
レベッカ様はそう言ってもう一度同じ量の回復薬をグラスへ注いでくれた。
「レベッカ様……ありがとうございます。いただきますね」
「さ、様などお付けにならないでください! レベッカと、お呼びくださいませ」
レベッカ様は酷く慌てていた。
「そ、そんな失礼なことできませんよ……」
私はそう返事をして、再びグラスの回復薬を飲み干す。すると、レベッカ様が安心したような表情をしていた。
「良かった……治りましたね。オスカー様から、フローラ様は第二王女様だとお伺いしましたが……」
「はい、そうです……。偽ってしまい、申し訳ありませんでした。あの、オスカー様とは先程のお方でしょうか……?」
「あなた様のご意思で偽られたのではないことなど一目瞭然ですので、どうかお気になさりませんよう。そうです、あのお方がこのお屋敷の当主であり、あなた様の旦那様になられた、オスカー・シュナイダー公爵閣下です」
「あのお方が、私の、旦那様……」
私は頬がカーッと熱くなるのを感じたが、すぐに嫌なことを思い出す。
「でも、本当はエリーゼお姉様の旦那様になるはずです……。この婚姻は取りやめになるのでは……」
「オスカー様が今その件を対処してくださっているはずです。わたくしから詳しく申し上げることはできないので、もうしばらくこの部屋でお待ちいただいてもよろしいですか? わたくしはバーバラを呼んで参ります」
「分かりました。あ、はい、よろしくお願いします」
「それでは失礼致します」
レベッカ様は丁寧にお辞儀をして、再び部屋から出ていった。
オスカー様は、アーレンス城で会ったときは冷たい目をされていたけど、先程のオスカー様はとても優しい目をされていた。
私、ここに居たい。オスカー様の妻でいたい。23年間生きてきて、こんなにも欲が溢れ出したのは初めてだった。
回復薬を握りしめた先程のメイドさんが彼の背後で驚きを顕にする。
「すみません……私……ごめんなさい……」
どうしよういきなりバレてしまった……。
「とにかく回復薬を飲ませろ。以後こいつの事はフローラと呼ぶように。こいつの世話はバーバラに一任する。すぐに呼んでこい」
彼はそう言うと、すぐにどこかへと立ち去ってしまった。
「はい、かしこまりました! フローラ様、こちら回復薬になります。このくらい飲めば頬の傷は治るはずです」
メイドさんはそう言って目の前で回復薬の栓を開けて、綺麗なグラスへトクトクと注いでくれた。
「ありがとうございます……。あの、フローラでも、飲んでも良いのでしょうか……」
私はグラスを持ったままモジモジする。
「何をおっしゃいますか。オスカー様はフローラ様だとお気付きになられると、すぐにご心配なされていました。その時点でわたくし共は、エリーゼ様よりも丁重に扱うべきだと、心得ております」
「そんな……ことって……。あの、いただきます……」
「はい!」
私は人生で初めて回復薬を飲んでみる。少し甘いような、でも苦いような、不思議な味がした。
「あれ……頬の傷、治りませんね……」
メイドさんが心配そうに私の頬を眺めている。そのため私も自分で擦ってみると、まだ少しヒリヒリしていた。
「本当ですね。あっ、でも、足の傷が治りました。ここ大きく擦りむいてしまっていたのですが、すっかり良くなっています。ありがとうございます!」
傷のない足なんて久しぶりだ。私は嬉しくなって、えへへとはにかんだ。
「フローラ様……わたくし、レベッカと申します! バーバラの補佐役としてお世話を担当することになりましたので、何かありましたら何でもお申し付けください!」
レベッカ様はそう言ってもう一度同じ量の回復薬をグラスへ注いでくれた。
「レベッカ様……ありがとうございます。いただきますね」
「さ、様などお付けにならないでください! レベッカと、お呼びくださいませ」
レベッカ様は酷く慌てていた。
「そ、そんな失礼なことできませんよ……」
私はそう返事をして、再びグラスの回復薬を飲み干す。すると、レベッカ様が安心したような表情をしていた。
「良かった……治りましたね。オスカー様から、フローラ様は第二王女様だとお伺いしましたが……」
「はい、そうです……。偽ってしまい、申し訳ありませんでした。あの、オスカー様とは先程のお方でしょうか……?」
「あなた様のご意思で偽られたのではないことなど一目瞭然ですので、どうかお気になさりませんよう。そうです、あのお方がこのお屋敷の当主であり、あなた様の旦那様になられた、オスカー・シュナイダー公爵閣下です」
「あのお方が、私の、旦那様……」
私は頬がカーッと熱くなるのを感じたが、すぐに嫌なことを思い出す。
「でも、本当はエリーゼお姉様の旦那様になるはずです……。この婚姻は取りやめになるのでは……」
「オスカー様が今その件を対処してくださっているはずです。わたくしから詳しく申し上げることはできないので、もうしばらくこの部屋でお待ちいただいてもよろしいですか? わたくしはバーバラを呼んで参ります」
「分かりました。あ、はい、よろしくお願いします」
「それでは失礼致します」
レベッカ様は丁寧にお辞儀をして、再び部屋から出ていった。
オスカー様は、アーレンス城で会ったときは冷たい目をされていたけど、先程のオスカー様はとても優しい目をされていた。
私、ここに居たい。オスカー様の妻でいたい。23年間生きてきて、こんなにも欲が溢れ出したのは初めてだった。
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