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5話 ばあや
「フローラ様、バーバラが参りました」
コンコンとノックされた後、そうご年配の方のゆったりとした声が聞こえてくる。
「はい」
私が返事をすると、すぐに優しそうなお婆さんと、レベッカ様が部屋へと入ってきた。
「初めましてフローラ様、本日よりあなた様のお世話をさせていただきますバーバラと申します。ぜひお気軽に“ばあや”とお呼びくださいませ」
「ばあや様……とお呼びすればいいのですね。よろしくお願い致します」
私は深く頭を下げる。
「おやまぁ……レベッカの申す通り、謙虚なお方ですね。オスカー様がわたくしめをご指名なさったこと、全てご理解致しました」
ばあや様はそう言って優しく微笑んでいた。何のことか分からず私がキョトンとしていると、ばあや様は再度口を開いた。
「ではフローラ様。いらして早々で申し訳ないのですが、お部屋を移動しましょう。ここは一般様の客間でございますので、公爵夫人用のお部屋へご案内致します」
「え、私がそんな奥様用のお部屋に移動しても良いのですか?」
「はい、もちろんでございます。お疲れでなければ、すぐにでも参りましょう。レベッカ、お荷物をお持ちしなさい」
「はい、バーバラ様」
私はばあや様についていき、公爵夫人の部屋へと案内された。
「うわぁ……もっと広くなりました……」
「こちらは生前のオスカー様の母君がご使用していたお部屋になります。寝室は奥の扉の向こうにございます」
「ありがとうございます……」
私は恐縮しながら中へと入り、ソファにちょこんと腰掛ける。
「オスカー様が戻られるまで、もう少しそのお綺麗なドレスでお待ち下さいませ。胸元がお苦しいでしょうが、今しばしご辛抱下さいませ」
ばあや様は、そう言って私の座っているソファの脇に立っていた。
「分かりました。こんな綺麗なドレスは初めて着たので、もう少し堪能します。ばあや様もレベッカ様も一緒にお待ちになるのであれば座ってください」
「なんとお気遣いいただきありがとうございます。それでは、失礼致します」
「失礼致します!」
ばあや様とレベッカ様は、私を挟むようにしてソファへと腰掛けた。
「フローラ様は、そのようなドレスは初めて着られたとのことですが、普段はどの様なお召し物を着られていましたか?」
と、ばあや様。
「えっと……ドレスはすぐに破れてしまうので、召使さんの着られるメイド服を着ておりました」
「なんと……そうでございましたか。それではこのばあやがフローラ様のためにメイド服のように動きやすいドレスを仕立てましょう」
「ばあや様、お洋服の仕立てができるのですか? すごいです! でも、私なんかのためにすみません……」
「このばあや、オスカー様が幼少期の頃から服を仕立てております、仕立て師にございます。どうかお任せ下さいませ」
「わぁ、すごいです。ありがとうございます!」
「それでは早速、採寸を致しましょう」
「はい、お願いします」
ばあや様とレベッカ様が手際良く採寸してくれる。
「フローラ様……かなりお痩せになっているようですね。食事はあまりお好きではありませんか?」
と、ばあや様。
「えっと……お食事は、好きです……でも、あまり食べられなくて……」
私がそう言って俯くと、ばあや様は採寸を終えて優しく微笑んでくれた。
「では、本日のご昼食は喉を通りやすい柔らかい物に致しましょう。レベッカ、厨房にそう伝えてきなさい」
「はい、おばあちゃ……あぁ、バーバラ様! かしこまりました!」
レベッカ様は慌ててそう言い直すと、急いで部屋から出ていった。
「全くあの子は……すみません。わたくしめの孫娘でございますが、何卒新米なもので……」
ばあや様はそう言ってゆっくりと頭を下げた。
「まぁ、お祖母様なのですね。えっと、お祖母様というのは、お母様のお母様で……えっと、お父様のお母様……?」
お祖母様という私には無縁の単語を、必死に理解しようとする。
「わたくしめはレベッカの父の母になります。フローラ様は、お祖母様がいらっしゃいませんでしたか?」
「はい、お母様も私を産んで亡くなってしまわれたので……」
「そうでございましたか……。オスカー様が必死になられるのも頷けますね」
「オスカー様が必死に……とは?」
「そうですね、あなた様をご安心させるためにもお話ししておきましょう」
ばあや様は、そう言って私の方へと向き直った。
コンコンとノックされた後、そうご年配の方のゆったりとした声が聞こえてくる。
「はい」
私が返事をすると、すぐに優しそうなお婆さんと、レベッカ様が部屋へと入ってきた。
「初めましてフローラ様、本日よりあなた様のお世話をさせていただきますバーバラと申します。ぜひお気軽に“ばあや”とお呼びくださいませ」
「ばあや様……とお呼びすればいいのですね。よろしくお願い致します」
私は深く頭を下げる。
「おやまぁ……レベッカの申す通り、謙虚なお方ですね。オスカー様がわたくしめをご指名なさったこと、全てご理解致しました」
ばあや様はそう言って優しく微笑んでいた。何のことか分からず私がキョトンとしていると、ばあや様は再度口を開いた。
「ではフローラ様。いらして早々で申し訳ないのですが、お部屋を移動しましょう。ここは一般様の客間でございますので、公爵夫人用のお部屋へご案内致します」
「え、私がそんな奥様用のお部屋に移動しても良いのですか?」
「はい、もちろんでございます。お疲れでなければ、すぐにでも参りましょう。レベッカ、お荷物をお持ちしなさい」
「はい、バーバラ様」
私はばあや様についていき、公爵夫人の部屋へと案内された。
「うわぁ……もっと広くなりました……」
「こちらは生前のオスカー様の母君がご使用していたお部屋になります。寝室は奥の扉の向こうにございます」
「ありがとうございます……」
私は恐縮しながら中へと入り、ソファにちょこんと腰掛ける。
「オスカー様が戻られるまで、もう少しそのお綺麗なドレスでお待ち下さいませ。胸元がお苦しいでしょうが、今しばしご辛抱下さいませ」
ばあや様は、そう言って私の座っているソファの脇に立っていた。
「分かりました。こんな綺麗なドレスは初めて着たので、もう少し堪能します。ばあや様もレベッカ様も一緒にお待ちになるのであれば座ってください」
「なんとお気遣いいただきありがとうございます。それでは、失礼致します」
「失礼致します!」
ばあや様とレベッカ様は、私を挟むようにしてソファへと腰掛けた。
「フローラ様は、そのようなドレスは初めて着られたとのことですが、普段はどの様なお召し物を着られていましたか?」
と、ばあや様。
「えっと……ドレスはすぐに破れてしまうので、召使さんの着られるメイド服を着ておりました」
「なんと……そうでございましたか。それではこのばあやがフローラ様のためにメイド服のように動きやすいドレスを仕立てましょう」
「ばあや様、お洋服の仕立てができるのですか? すごいです! でも、私なんかのためにすみません……」
「このばあや、オスカー様が幼少期の頃から服を仕立てております、仕立て師にございます。どうかお任せ下さいませ」
「わぁ、すごいです。ありがとうございます!」
「それでは早速、採寸を致しましょう」
「はい、お願いします」
ばあや様とレベッカ様が手際良く採寸してくれる。
「フローラ様……かなりお痩せになっているようですね。食事はあまりお好きではありませんか?」
と、ばあや様。
「えっと……お食事は、好きです……でも、あまり食べられなくて……」
私がそう言って俯くと、ばあや様は採寸を終えて優しく微笑んでくれた。
「では、本日のご昼食は喉を通りやすい柔らかい物に致しましょう。レベッカ、厨房にそう伝えてきなさい」
「はい、おばあちゃ……あぁ、バーバラ様! かしこまりました!」
レベッカ様は慌ててそう言い直すと、急いで部屋から出ていった。
「全くあの子は……すみません。わたくしめの孫娘でございますが、何卒新米なもので……」
ばあや様はそう言ってゆっくりと頭を下げた。
「まぁ、お祖母様なのですね。えっと、お祖母様というのは、お母様のお母様で……えっと、お父様のお母様……?」
お祖母様という私には無縁の単語を、必死に理解しようとする。
「わたくしめはレベッカの父の母になります。フローラ様は、お祖母様がいらっしゃいませんでしたか?」
「はい、お母様も私を産んで亡くなってしまわれたので……」
「そうでございましたか……。オスカー様が必死になられるのも頷けますね」
「オスカー様が必死に……とは?」
「そうですね、あなた様をご安心させるためにもお話ししておきましょう」
ばあや様は、そう言って私の方へと向き直った。
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