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11話 戸惑いと決意-オスカーside-
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フローラがうちに来てから、驚くことばかりだ。
特に初めての食事の時は、衝撃を受けすぎて思わず手が止まってしまった。
あのアーレンス城侵攻で会った時に、小さなパンをかじりやせ細った身体を見て、王女としての扱いなど受けていないことは一目瞭然だった。
それでも俺には関係のないこと。そう思ったのに、なぜか俺は彼女を殺すことも捕らえることもできずに、気付いたら彼女の部屋に結界を張り、彼女の気配が外に漏れないようにしていた。
戦場で非情になれなかったのは、あれが初めてだった。
そして皇帝陛下のありがた迷惑なお節介によりエリーゼとかいう女が嫁いでくることが決まる。あの時『殺すならフローラを殺して』と喚いていたクズ女だ。
いくら政略結婚とは言え生理的に受け付けなかったため、客室に住まわせて生涯会わないようにしようと思っていた。
だが、実際に来たのはフローラだった。きっと身代わりで差し出されたのであろう。
レベッカが『王女の様子がおかしい、頬を火傷している』そう血相を変えて報告をしてきてくれたおかげですぐにフローラだと気付くことができた。
実際にフローラの顔を見た瞬間、俺の中で何かがこみ上げてきた。俺は嬉しいのだろうか。ホッとしているのだろうか。
なぜ?
俺は一体彼女に対して何を感じている?
親の愛情を知らない俺よりも悲惨な状況にあることに対しての同情か?
その環境から彼女を救い出せたことによる良心か?
それともあの時魔法杖もなしに発動した白魔法に対する興味か?
どれもあるような気がするが、そのどれでもないような気もする。
その初めて芽生えた正体の分からない感情に戸惑っていると、隣の寝室にフローラの気配を感じた。
そうだ、今晩からフローラもあの部屋で寝るのか。
フローラを公爵夫人の部屋に移動させたのは俺の判断だが、もう少し時間が経ってからでも良かったかもしれない、と、今になって怖気づく自分がいることに気付いた。
それにしてもフローラは部屋でウロウロして一体何をしているんだ?
彼女が寝入ってから俺も寝室に向かおうとしたのに、これでは全然俺が寝にいけないではないか……。
23時を回ったところでようやく彼女の気配が落ち着き、寝入ったことが推測出来た。
そのため俺も寝室へと足を踏み入れる。
⸺⸺寝室⸺⸺
ん? フローラの気配は確かにあるのに、ベッドが使われている形跡が全くない!?
一体どういうことなんだ。フローラは一体どこにいる?
俺は恐る恐るフローラの気配がする方へ歩いてみる。
「なっ……!?」
フローラは、ベッドのすぐ下の床で小さくうずくまって寝ていた。
なぜベッドで寝ない!?
まさかベッドが1つしかないから、俺に気を使っているのか?
俺は布団を捲り、うずくまっている彼女をそっと抱き上げる。細く軽くて冷たい身体。まさかアーレンス城でも毎日こうやって、ベッドで寝られない事情があったのか……?
そっと、彼女をベッドの上へと寝かせる。足を伸ばしてやる時に、わざとではないが太もも部分までがネグリジェからはだけてしまった。
何をやっているんだ俺は、これではまるで夜這いではないか。
慌ててネグリジェを戻そうとすると、薄暗くてハッキリとは分からなかったが、彼女の足が傷だらけだということに気が付いた。
「これは……」
スーッと傷痕をなぞってみる。どうやら古い傷で、昼間の回復薬でも治らなかったようだ。
俺は傷つけるばかりで回復はあまり得意ではないが……少し試してみるか。
自室から魔法杖を持ってくると、彼女の足の上でそれを掲げる。
⸺⸺初級単体白魔法⸺⸺
「ヒール……」
淡い光が彼女の足を包み込む。
「ダメか……」
しかし、心なしか傷が少し薄くなっているような、そんな気もした。
毎日、試してみようと思った。
俺は彼女の寝顔を見て、フローラだけは絶対に手放さないと、そう決意を固めて、彼女の隣へと潜り込んだ。
特に初めての食事の時は、衝撃を受けすぎて思わず手が止まってしまった。
あのアーレンス城侵攻で会った時に、小さなパンをかじりやせ細った身体を見て、王女としての扱いなど受けていないことは一目瞭然だった。
それでも俺には関係のないこと。そう思ったのに、なぜか俺は彼女を殺すことも捕らえることもできずに、気付いたら彼女の部屋に結界を張り、彼女の気配が外に漏れないようにしていた。
戦場で非情になれなかったのは、あれが初めてだった。
そして皇帝陛下のありがた迷惑なお節介によりエリーゼとかいう女が嫁いでくることが決まる。あの時『殺すならフローラを殺して』と喚いていたクズ女だ。
いくら政略結婚とは言え生理的に受け付けなかったため、客室に住まわせて生涯会わないようにしようと思っていた。
だが、実際に来たのはフローラだった。きっと身代わりで差し出されたのであろう。
レベッカが『王女の様子がおかしい、頬を火傷している』そう血相を変えて報告をしてきてくれたおかげですぐにフローラだと気付くことができた。
実際にフローラの顔を見た瞬間、俺の中で何かがこみ上げてきた。俺は嬉しいのだろうか。ホッとしているのだろうか。
なぜ?
俺は一体彼女に対して何を感じている?
親の愛情を知らない俺よりも悲惨な状況にあることに対しての同情か?
その環境から彼女を救い出せたことによる良心か?
それともあの時魔法杖もなしに発動した白魔法に対する興味か?
どれもあるような気がするが、そのどれでもないような気もする。
その初めて芽生えた正体の分からない感情に戸惑っていると、隣の寝室にフローラの気配を感じた。
そうだ、今晩からフローラもあの部屋で寝るのか。
フローラを公爵夫人の部屋に移動させたのは俺の判断だが、もう少し時間が経ってからでも良かったかもしれない、と、今になって怖気づく自分がいることに気付いた。
それにしてもフローラは部屋でウロウロして一体何をしているんだ?
彼女が寝入ってから俺も寝室に向かおうとしたのに、これでは全然俺が寝にいけないではないか……。
23時を回ったところでようやく彼女の気配が落ち着き、寝入ったことが推測出来た。
そのため俺も寝室へと足を踏み入れる。
⸺⸺寝室⸺⸺
ん? フローラの気配は確かにあるのに、ベッドが使われている形跡が全くない!?
一体どういうことなんだ。フローラは一体どこにいる?
俺は恐る恐るフローラの気配がする方へ歩いてみる。
「なっ……!?」
フローラは、ベッドのすぐ下の床で小さくうずくまって寝ていた。
なぜベッドで寝ない!?
まさかベッドが1つしかないから、俺に気を使っているのか?
俺は布団を捲り、うずくまっている彼女をそっと抱き上げる。細く軽くて冷たい身体。まさかアーレンス城でも毎日こうやって、ベッドで寝られない事情があったのか……?
そっと、彼女をベッドの上へと寝かせる。足を伸ばしてやる時に、わざとではないが太もも部分までがネグリジェからはだけてしまった。
何をやっているんだ俺は、これではまるで夜這いではないか。
慌ててネグリジェを戻そうとすると、薄暗くてハッキリとは分からなかったが、彼女の足が傷だらけだということに気が付いた。
「これは……」
スーッと傷痕をなぞってみる。どうやら古い傷で、昼間の回復薬でも治らなかったようだ。
俺は傷つけるばかりで回復はあまり得意ではないが……少し試してみるか。
自室から魔法杖を持ってくると、彼女の足の上でそれを掲げる。
⸺⸺初級単体白魔法⸺⸺
「ヒール……」
淡い光が彼女の足を包み込む。
「ダメか……」
しかし、心なしか傷が少し薄くなっているような、そんな気もした。
毎日、試してみようと思った。
俺は彼女の寝顔を見て、フローラだけは絶対に手放さないと、そう決意を固めて、彼女の隣へと潜り込んだ。
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