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20話 ちゃんと、夫婦

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「2つ合わせると、ハートになっています!」
 私は嬉しさのあまり、ベッドに座りながらピョンピョンと弾む。
 そんな私をオスカー様は優しく微笑みながら抱きしめて動きを制した。

「分かったから一旦落ち着いてくれ」
「はい、すみません……」

 オスカー様は身体を少し離すと、真剣な表情で私を真っ直ぐに見つめてきた。そして、口を開く。

「フローラ。俺とお前は、皇帝陛下が勝手に決めて、アーレンスの連中が勝手にお前を送り出した、本来とは組み合わせすら違う政略結婚だ」
「はい……」

「それでも俺は、お前のことを心から愛している。生涯ずっと愛し続けると誓う」
「生涯ずっと、ですか……?」
 私はその言葉を聞いて涙ぐむ。

「生涯ずっと、だ」
「おじいさんとおばあさんになっても、ですか?」
「おじいさんとおばあさんになっても、だ」

「そんな、幸せなこと……私なんかにあってもいいのでしょうか……」
 溜まっていた涙がボロボロと溢れ出す。
「“私なんか”ではない。お前だから……フローラだから、愛するんだ。他の誰でも俺はきっとこんな気持ちにはならなかった。他の誰でもない、お前が来てくれて俺の人生は一変した。だからフローラも、俺を、ずっと、愛してほしい。こんなにも愛を求めたのは、お前だけなんだ」

「はい……私、フローラは、オスカー様を生涯ずっとずっと、お慕いすると……愛すると誓います。だから、オスカー様……おじいさんになっても、お仕事が終わったら必ず無事にこのお屋敷に戻って来てください。毎日、毎日、無事をお祈りしています」

「あぁ。必ず毎日戻ってくると、約束しよう。フローラ、俺とお前は形だけの夫婦ではない。ちゃんと、夫婦だからな……」

「はい……! ちゃんと、夫婦です……!」

 お互いに満面の笑みで微笑み合う。
 オスカー様は両手で丁寧に私の涙を拭うと、私の唇へそっと口づけをしてくれた。

 私のファーストキス。
 こんなにも幸せなものだなんて思わなくて、オスカー様がせっかく涙を拭いてくれたのに、またどんどんと溢れてきてしまう。

 オスカー様は一度唇を離し、困ったように微笑むと、再度唇を重ね、そのまま私の身体をそっと押し倒した。

「フローラ、脱がすぞ……」
 オスカー様がそう言ってネグリジェに手をかける。
 その瞬間私はあることを思い出し、慌ててその手を制した。
「ま、ままま待って下さいっ……!」

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