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第二章 神器と欲望
21話 ジメリの山
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「こんな山のジオラマ、昨日はなかったですよね。えっと、確かここにあった童話は……」
そう言う瑠斗君に陽翔さんが「ジメリの山だ」と、続く。
「ええと、神楽さん、簡単にで良いからどんな話か教えてもらえるかしら」
と、臼井さん。
「ある所にお金持ちの兄と貧しい弟がいたんだけど、兄は弟に財産を分けてはあげませんでした。弟はある時、一部が禿げた山を見つけるんだけど、盗賊がゾロゾロとやってきて山の禿げた部分にその山の名前を呼びかけて“開け”と言うと山がパカッて割れて盗賊がその中に入っていったんです」
「山がパカッて……」
臼井さんはありえないという表情で山のジオラマを見つめる。
「しばらくしてまた山が開くと盗賊たちが袋を持って満足そうな顔で出てきて、今度は“閉じろ”と言って山を閉じて行ってしまったので、弟も山を開く呪文を言ってみます。すると、山が開いて中には金銀財宝があったので、弟は少しだけ持っていって家族を養ったり、貧しい人を助けたりする事ができました」
「なるほど……」
「弟はその山に何度かお世話になるんだけど、その時に兄に升を借ります。兄は3回目の時に弟を脅してその升の中に何を入れているのか聞き出します。それでその山の存在を知った兄もその山を開いて中の金銀財宝を物色します。でも、兄はその金銀財宝に目移りしすぎて長いこと考え、持てるだけの宝石を持って出ようとします。でも、お宝に目が眩んでしまったせいで、山の名前を忘れて開くことが出来なくなりました」
「もしかしてそのジオラマに閉じ込められているのって……」
「この兄で間違いないかとは思います。結局この兄は、後から山に入って来た盗賊たちに『お前今までも何回も盗ってっただろ!』って弟と勘違いされて、殺される……っていうオチです」
「あらまぁ……。やっぱり童話って不思議な展開が多いわね。だからこそ面白くて、だからこそ色んな人の気持ちがこもっちゃうのね」
と、臼井さん。
「そうですね……じゃぁ、お兄さんを助けてあげよう……“ゼムジ山、ゼムジ山、開け!”」
⸺⸺ゴゴゴゴゴッ⸺⸺
「おぉ、本当に山が開いていきますね!」
と、瑠斗君。
そして、山の動きが止まると開いた隙間からおじさんのヴィランがうにょーんと這い出て来た。
「うわっ、出て来方、ホラー……」
私は思わずそう声を上げる。助けてあげるって言ってもヴィランはヴィラン。黒いモヤモヤをまとっていて、怖い……。
そのヴィランは山から抜け出すと、こっちを見て深く礼をした。
『ありがとう。これからは弟に優しくしようと思います……』
彼はそう言って、白くキラキラと光りながら消えていった。
「これで鎮魂出来たな!」
と、陽翔さん。
「こんな感じで助けてあげていったらいいんだね」
私がそう言ってスサノオの方を見ると、彼は大きく頷いて微笑んでくれた。
「一応山、閉じとく? ……あら? これ何かしら……」
臼井さんは山の隙間を覗き込むと、その中に手を突っ込み、スマホほどの大きさの1枚の石版を取り出した。
「何でしょう、これ……」
そう言う瑠斗君と一緒にその石版を覗き込むと、山の絵が彫られており、その下には『山の根元』と文字が書かれていた。
そう言う瑠斗君に陽翔さんが「ジメリの山だ」と、続く。
「ええと、神楽さん、簡単にで良いからどんな話か教えてもらえるかしら」
と、臼井さん。
「ある所にお金持ちの兄と貧しい弟がいたんだけど、兄は弟に財産を分けてはあげませんでした。弟はある時、一部が禿げた山を見つけるんだけど、盗賊がゾロゾロとやってきて山の禿げた部分にその山の名前を呼びかけて“開け”と言うと山がパカッて割れて盗賊がその中に入っていったんです」
「山がパカッて……」
臼井さんはありえないという表情で山のジオラマを見つめる。
「しばらくしてまた山が開くと盗賊たちが袋を持って満足そうな顔で出てきて、今度は“閉じろ”と言って山を閉じて行ってしまったので、弟も山を開く呪文を言ってみます。すると、山が開いて中には金銀財宝があったので、弟は少しだけ持っていって家族を養ったり、貧しい人を助けたりする事ができました」
「なるほど……」
「弟はその山に何度かお世話になるんだけど、その時に兄に升を借ります。兄は3回目の時に弟を脅してその升の中に何を入れているのか聞き出します。それでその山の存在を知った兄もその山を開いて中の金銀財宝を物色します。でも、兄はその金銀財宝に目移りしすぎて長いこと考え、持てるだけの宝石を持って出ようとします。でも、お宝に目が眩んでしまったせいで、山の名前を忘れて開くことが出来なくなりました」
「もしかしてそのジオラマに閉じ込められているのって……」
「この兄で間違いないかとは思います。結局この兄は、後から山に入って来た盗賊たちに『お前今までも何回も盗ってっただろ!』って弟と勘違いされて、殺される……っていうオチです」
「あらまぁ……。やっぱり童話って不思議な展開が多いわね。だからこそ面白くて、だからこそ色んな人の気持ちがこもっちゃうのね」
と、臼井さん。
「そうですね……じゃぁ、お兄さんを助けてあげよう……“ゼムジ山、ゼムジ山、開け!”」
⸺⸺ゴゴゴゴゴッ⸺⸺
「おぉ、本当に山が開いていきますね!」
と、瑠斗君。
そして、山の動きが止まると開いた隙間からおじさんのヴィランがうにょーんと這い出て来た。
「うわっ、出て来方、ホラー……」
私は思わずそう声を上げる。助けてあげるって言ってもヴィランはヴィラン。黒いモヤモヤをまとっていて、怖い……。
そのヴィランは山から抜け出すと、こっちを見て深く礼をした。
『ありがとう。これからは弟に優しくしようと思います……』
彼はそう言って、白くキラキラと光りながら消えていった。
「これで鎮魂出来たな!」
と、陽翔さん。
「こんな感じで助けてあげていったらいいんだね」
私がそう言ってスサノオの方を見ると、彼は大きく頷いて微笑んでくれた。
「一応山、閉じとく? ……あら? これ何かしら……」
臼井さんは山の隙間を覗き込むと、その中に手を突っ込み、スマホほどの大きさの1枚の石版を取り出した。
「何でしょう、これ……」
そう言う瑠斗君と一緒にその石版を覗き込むと、山の絵が彫られており、その下には『山の根元』と文字が書かれていた。
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