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第三章 打倒、赤ずきん
41話 三度目の正直
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⸺⸺本館1F⸺⸺
私たちが階段から1階の通路へ降り立つと、すぐに赤ずきんちゃんが笑いながら駆けてくる。
『……え?』
しかし赤ずきんちゃんは、フェンリルを見た途端ピタッと動きを止めて、その場に固まった。
嘲笑うような笑みは消え、それどころか引きつっているようにも見える。
『い、嫌……狼、怖い……』
赤ずきんちゃんはズルズルと後退り、その瞬間私たちは勝利を確信する。
すると、フェンリルが急にすごい勢いで赤ずきんちゃんと飛びかかっていく。
「いやぁぁぁっ!」
フェンリルの手綱を握っていた私はそのままフェンリルに引っ張られるように飛び上がり、フェンリルの上へと乗った。
赤ずきんちゃんは全力疾走で逃げ、私はもふもふした毛を握りしめながらその圧巻の光景に少しハイになっていた。
「紫音!」
「紫音さん!」
振り返ると陽翔さんたちも皆必死に追いかけてきてくれる。
「私は大丈夫! このまま赤ずきんちゃんを追うから、ロビーの方へ先回りを!」
「了解! 落ちるなよ!」
「うん!」
フェンリルに乗って1階のフロアを駆け巡る。
ロビーに入る直前辺りでフェンリルが赤ずきんちゃんに追い付き、口を大きく開けた。
すると、案の定お婆さんが飛び込んできて、赤ずきんちゃんの身代わりになり、フェンリルに丸呑みにされた。
その間に赤ずきんちゃんはロビーへ逃れるが、待っていた瑠斗君によって拘束をされ、動けなくなったところで再び追いついたフェンリルが赤ずきんちゃんを丸呑みにした。
フェンリルは2人を丸呑みにして満足をしたようで、その場で伏せて寝てしまった。
「寝た!?」
目の前で緊張気味に見ていた3人が声を揃えてそうツッコミを入れる。
私もフェンリルから降りると、顔の目の前まで行って様子を伺ってみるが、すごい風速の鼻息を飛ばしながら、気持ち良さそうに眠っている。
「フェンリルごと……斬るか?」
陽翔さんがそう言って刀を構える。
私はここで原作の流れを思い出してみた。
原作ではお婆さんと赤ずきんちゃんが丸呑みされた後、猟師が狼のお腹を切って2人を助け出し、赤ずきんちゃんが狼のお腹に石を詰めて終わりだ。
「いや、斬るのはフェンリルのお腹だけにしよう」
私がそう提案すると、陽翔さんもうんと頷いて、まずは皆でフェンリルをひっくり返してお腹を上にした。
「……斬るぞ」
陽翔さんがツーッとお腹へメスを入れるように表面のみを斬っていく。
フェンリルは特に痛がったりもせずに、気持ち良さそうに寝ていた。
少し気持ち悪いが皆でその切り口を開くと、中から黒いモヤの取れた赤ずきんちゃんが這い出て来た。
『お婆さんが危ないの』
赤ずきんちゃんにそう言われて中を覗くと、お婆さんは瀕死の状態で自力で出てこられそうになかったので、皆で協力してお婆さんを引っ張り出す。
確かに原作でも助け出されたお婆さんは元気がなくて、赤ずきんちゃんの持ってきたケーキやワインを食べて元気になるんだ。
私はその息も絶え絶えなお婆さんに、ガルダの羽根をかざす。
するとお婆さんはたちまち元気になり『ありがとう』とお礼を言った。
赤ずきんちゃんは何かをキョロキョロと探しており、私は狼に詰める石を探してるんだと思った。
「赤ずきんちゃん、お願い。このフェンリルはあなたを食べちゃったけど、でもそのおかげであなたの怨念は晴れたはず。フェンリルはこのまま返してあげたいの」
私がそう懇願すると、赤ずきんちゃんは『分かったわ。お腹の傷もその羽根で治してあげましょう』と提案してくれた。
「ありがとう!」
私は早速フェンリルの傷をガルダの羽根で治すと、フェンリルは眠りから覚め、私の顔をクンクンと嗅ぎ、頬をペロッと舐めるとそのまま光の粉となって消えていった。
私たちが階段から1階の通路へ降り立つと、すぐに赤ずきんちゃんが笑いながら駆けてくる。
『……え?』
しかし赤ずきんちゃんは、フェンリルを見た途端ピタッと動きを止めて、その場に固まった。
嘲笑うような笑みは消え、それどころか引きつっているようにも見える。
『い、嫌……狼、怖い……』
赤ずきんちゃんはズルズルと後退り、その瞬間私たちは勝利を確信する。
すると、フェンリルが急にすごい勢いで赤ずきんちゃんと飛びかかっていく。
「いやぁぁぁっ!」
フェンリルの手綱を握っていた私はそのままフェンリルに引っ張られるように飛び上がり、フェンリルの上へと乗った。
赤ずきんちゃんは全力疾走で逃げ、私はもふもふした毛を握りしめながらその圧巻の光景に少しハイになっていた。
「紫音!」
「紫音さん!」
振り返ると陽翔さんたちも皆必死に追いかけてきてくれる。
「私は大丈夫! このまま赤ずきんちゃんを追うから、ロビーの方へ先回りを!」
「了解! 落ちるなよ!」
「うん!」
フェンリルに乗って1階のフロアを駆け巡る。
ロビーに入る直前辺りでフェンリルが赤ずきんちゃんに追い付き、口を大きく開けた。
すると、案の定お婆さんが飛び込んできて、赤ずきんちゃんの身代わりになり、フェンリルに丸呑みにされた。
その間に赤ずきんちゃんはロビーへ逃れるが、待っていた瑠斗君によって拘束をされ、動けなくなったところで再び追いついたフェンリルが赤ずきんちゃんを丸呑みにした。
フェンリルは2人を丸呑みにして満足をしたようで、その場で伏せて寝てしまった。
「寝た!?」
目の前で緊張気味に見ていた3人が声を揃えてそうツッコミを入れる。
私もフェンリルから降りると、顔の目の前まで行って様子を伺ってみるが、すごい風速の鼻息を飛ばしながら、気持ち良さそうに眠っている。
「フェンリルごと……斬るか?」
陽翔さんがそう言って刀を構える。
私はここで原作の流れを思い出してみた。
原作ではお婆さんと赤ずきんちゃんが丸呑みされた後、猟師が狼のお腹を切って2人を助け出し、赤ずきんちゃんが狼のお腹に石を詰めて終わりだ。
「いや、斬るのはフェンリルのお腹だけにしよう」
私がそう提案すると、陽翔さんもうんと頷いて、まずは皆でフェンリルをひっくり返してお腹を上にした。
「……斬るぞ」
陽翔さんがツーッとお腹へメスを入れるように表面のみを斬っていく。
フェンリルは特に痛がったりもせずに、気持ち良さそうに寝ていた。
少し気持ち悪いが皆でその切り口を開くと、中から黒いモヤの取れた赤ずきんちゃんが這い出て来た。
『お婆さんが危ないの』
赤ずきんちゃんにそう言われて中を覗くと、お婆さんは瀕死の状態で自力で出てこられそうになかったので、皆で協力してお婆さんを引っ張り出す。
確かに原作でも助け出されたお婆さんは元気がなくて、赤ずきんちゃんの持ってきたケーキやワインを食べて元気になるんだ。
私はその息も絶え絶えなお婆さんに、ガルダの羽根をかざす。
するとお婆さんはたちまち元気になり『ありがとう』とお礼を言った。
赤ずきんちゃんは何かをキョロキョロと探しており、私は狼に詰める石を探してるんだと思った。
「赤ずきんちゃん、お願い。このフェンリルはあなたを食べちゃったけど、でもそのおかげであなたの怨念は晴れたはず。フェンリルはこのまま返してあげたいの」
私がそう懇願すると、赤ずきんちゃんは『分かったわ。お腹の傷もその羽根で治してあげましょう』と提案してくれた。
「ありがとう!」
私は早速フェンリルの傷をガルダの羽根で治すと、フェンリルは眠りから覚め、私の顔をクンクンと嗅ぎ、頬をペロッと舐めるとそのまま光の粉となって消えていった。
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