巻き込まれ幼女召喚〜無人島を拠点に自由気ままな異世界ライフ〜

るあか@12/10書籍刊行

文字の大きさ
95 / 98
第五章 社会の形成と勇者マコト伝

95話 ホワイトウルユマス

しおりを挟む
 ウルユ城の部屋を提供して仮住まい中だった聖獣たちは、それぞれアパートで1匹暮らしをしてみたり、数匹集まって同居したり、また、他の島民たちの家族となったりして全員が仮住まいを卒業することができた。

 そして、マコちゃんたちがこのウルユ島に引っ越してきてから1ヶ月ほどが経ったところで、このウルユ島には冬が訪れていた。

 たまに冒険者ギルドへ出かけるルキちゃんももこもこのローブを羽織って出かけていっている。最初からもこもこの毛皮を着ているのに。寒いものは寒いのか。

 同居獣のルキちゃんとウルは冒険者ギルドへ出かけており、私ユノとアメちゃんは今日はお休み。
 そのため、ミミズクの長老を連れて3人でウルユの城下町へ出かけていた。

 すると、銀行員のディーナさんとマコちゃんが噴水広場で話しているのに遭遇をした。
 クマ耳の小人とイヌ耳の子どもが話しているのは何だか癒やされる。

⸺⸺ウルユ島、噴水広場⸺⸺

「マジでリベルトって国にはクリスマスはないのか? 隣の国には?」
 と、マコちゃん。何やら必死で訴えている。

「うーん、クリスマス……聞いたことないわねぇ。隣の国にそういうイベントがあるって言うのも知らないわ……」
 困ったようにそう返すディーナさん。

 これは何やら割って入った方が良さそう。そう思った私は2人に声をかけた。

「こんにちは。2人はもうお仕事終わり?」
「あらユノちゃんこんにちは。ええ、私の業務は15時までだから」
 
「俺は今日は休みの日だ。毎日働いてもいいっつってんだけど、ジェシカが定期的に休みを入れてきやがるからさぁ」

「ニシシ、良い職場ではないか。休息は重要じゃぞ?」
 と、アメちゃん。

「おぅ、そうなんだけどよ……仕事、楽しいからさ」
「それも良いことだね」
 私がそう言うと、マコちゃんは「だろ?」と相槌を打った。

「つーかさ、ユノ、聞いてくれよ。この世界、クリスマスがないかも……!」
「うーん……確かに、キリスト教ってのもないし、キリストもこの世界では生まれてないからねぇ……」

「はて、クリスマス、とは?」
 と、アメちゃん。
 私はディーナさんとアメちゃんへクリスマスとはなんぞやを説明した。

「へぇ、そのイエス・キリストっていう人の誕生日をお祝いするイベント……なのに、子どもがプレゼントをもらえるの?」
 ディーナさんは首を傾げる。

「あはは……正直日本では、12月25日に家族や友人とお祝いをしたり、プレゼントを贈ったりする習慣だけが残ってて、イエス・キリストさんの誕生日を本当に祝っている人はどのくらいいるんだろう……って感じ」

「なるほど、あんまり深く考えずに、お祭りみたいだと思えば良いのかしら?」
 そう言うディーナさんに私は「そうそう」と返す。
 
「ふむ、プレゼントを贈り合ったり、親がサンタなる者にふんして子どもにプレゼントを贈る祭りとは……楽しそうじゃのう」
 アメちゃんはニシシと笑う。
 
「ほっほー……マコトは、そのクリスマスとやらが恋しいのじゃな?」
 と、長老。

「いや、恋しいっつーか……親からも友だちからももらったことないんだ、クリスマスプレゼント。だから、この島でならもらえるかもって思ったけど……クリスマス自体がなきゃ、諦めるか」
 
 マコちゃんは、はははっと無理して笑っているようだった。
 そうか、日本での家庭環境が複雑だったんだ。

⸺⸺それなら。

「だったら、この島でも12月24日の夜から12月25日にかけて、クリスマスのお祝いをしようよ」
 私がそう提案をすると、マコちゃんは「そんなことできるのか!?」と表情が明るくなった。

「さすがにイエス・キリストの誕生日を祝うって言っても、誰……? て、なると思うから、単純に日本であったイベントを再現したいって言えばみんなノッてくれると思う。他でもない、勇者マコトのお願いだし」

「良いではないか。クリスマスという名ではなく、この島独自の名前を付けようぞ」
 そう言うアメちゃんに、ディーナさんも「良いわねぇ♪」と続いてくれた。

⸺⸺

 ウルユ島でのクリスマスは、“ウルユマス”と名付けられた。
 
 私とマコちゃんは協力をして島中の家々を回り、ウルユマスという行事を説明した。
 そして、ウルユマスの開催に賛成してくれる人は噴水広場に設置した投票箱へ“賛成”の紙を入れてほしいと伝えて紙を渡す。

 投票締め切りの日が過ぎたところで、マコちゃんと2人でおそるおそる投開票を行うと、島民全員が賛成を入れてくれていたことが判明した。

⸺⸺12月24日、夜。

 ウルユ島全体がウルユマスムードに包まれて、城下町の大通りにはたくさんの人が行き来をしていた。
 同居人と一緒にライトアップを楽しんだり、サンタやトナカイのコスプレを楽しんだり。

 私の家でも手作りのピザやチキンを食べて、明日はみんなでプレゼント交換をするつもり。
 美味しいものを食べてお腹いっぱいになり、ベランダへと出てライトアップされた街並みを眺める。

 すると、ウルユ食堂から笑顔のマコト家族が出てくるのを発見した。良かったね、マコちゃん。家族みんなで外食したんだ。

 自然とふふっと口元が緩む。その時、頬にヒヤッと冷たいものが当たり、思わず「冷たっ」と声が出る。

 空を見上げると、ふわふわと雪が舞っていた。

「雪が降ってきましたにゃ」
 ルキちゃんがベランダへと顔を出す。
「ね、ホワイトウルユマスだ♪」
 
「懐かしいですにゃぁ。ユノが僕を保護してくれた初めてのクリスマスにも、2人でお祝いをして、雪が降っていたのですにゃ」

「えっ、ルキちゃん、まだ赤ちゃんだったのに、私が勝手にルキちゃんを巻き込んでクリスマスのお祝いしてたの、覚えててくれたの!?」

「覚えていますにゃ。あの頃は何をお祝いしていたのかはよく分かっていなかったけど、とっても楽しくて、温かかったんですにゃ」

「うわぁぁぁん、ルキちゃぁぁん!」
「ユノ、くっ、苦しいですにゃ……」
 私はルキちゃんをギューッと抱きしめて、ひたすら頬ずりをしていた。

 メリーウルユマス♪
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドラゴンともふ魔獣に懐かれて〜転生幼女は最強ドラゴン騎士家族と幸せに暮らします〜

ありぽん
ファンタジー
神様のミスで命を落としてしまった高橋結衣(28)。そのお詫びとして彼女は、様々な力を授かり、憧れだった魔法と剣と魔獣の存在する、まるで異世界ファンタジーのような世界へと転生することになった。 しかし目を覚ました場所は、街の近くではなく木々が生い茂る森の中。状況が分からず混乱する結衣。 そんな結衣に追い打ちをかけるように、ゾウほどもある大きな魔獣が襲いかかってきて。さらにドラゴンまで現れ、魔獣と激突。数分後、勝利したドラゴンが結衣の方へ歩み寄ってくる。 転生して数10分で命を落とすのか。そう思った結衣。しかし結衣を待っていたのは、思いもよらぬ展開だった。 「なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう」 まさかのドラゴンによる救出。さらにその縁から、結衣は最強と謳われるドラゴン騎士の家族に迎え入れられることに。 やがて結衣は、神から授かった力と自らの知識を駆使し、戦う上の兄や姉を支え、頭脳派の兄の仕事を手伝い。可憐で優しい姉をいじめる連中には、姉の代わりに子ドラゴンやもふ強魔獣と共にざまぁをするようになって? これは神様の度重なるミスによって、幼児として転生させられてしまった結衣が、ドラゴンやもふ強魔獣に懐かれ、最強のドラゴン騎士家族と共に、異世界で幸せいっぱいに暮らす物語。

転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。※書籍化に伴い「転生少女は異世界でお店を始めたい」から「転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!」に改題いたしました。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する

ありぽん
ファンタジー
25歳の高橋舞は、気がつくと真っ白な空間におり、そして目の前には土下座男が。 話しを聞いてみると、何とこの男は神で。舞はこの神のミスにより、命を落としてしまったというのだ。 ガックリする舞。そんな舞に神はお詫びとして、異世界転生を提案する。そこは魔法や剣、可愛い魔獣があふれる世界で。異世界転生の話しが大好きな舞は、即答で転生を選ぶのだった。 こうして異世界へ転生した舞。ところが……。 次に目覚めた先は、まさかの海のど真ん中の浮島。 しかも小さな子どもの姿になっていてたのだ。 「どちてよ!!」 パニックになる舞。が、驚くことはそれだけではなかった。 「おい、目が覚めたか?」 誰もいないと思っていたのだが、突然声をかけられ、さらに混乱する舞。 実はこの島には秘密があったのだ。 果たしてこの島の正体は? そして舞は異世界で優しい人々と触れ合い、楽しく穏やかな日々を送ることはできるのか。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...