巻き込まれ幼女召喚〜無人島を拠点に自由気ままな異世界ライフ〜

るあか@12/10書籍刊行

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第一章 私たちだけの島

4話 魔導具という代物

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 海岸まで戻る手前でメタの木の枝を少しだけ拾っておいた。
 このメタの木ってのはグネグネウネウネ枝を伸ばしていて、大量にクラフトの素材に出来そうだ。

 そして岩の海岸まで狼に乗せてもらうと、クラフトで“木のおけ”を作って海水を少し入れておいた。
 釣り糸を垂らす前に海を覗いてみると、美味しそうな魚がポツポツと泳いでいるのが確認出来た。よし、これだけ近くにいるなら釣れそう。

 案の定、釣り糸を垂らした瞬間に魚がヒットし、狼に引くのを手伝ってもらってあっさりと3匹の魚を釣り上げた。
「わぁーっ♪ すごい簡単に釣れた! あなた、たくさん手伝ってくれてありがとね。後で名前決めようね」
 そう言って狼の顎をヨシヨシとさする。狼は嬉しそうに「わぉん、わぉん」と鳴いていた。

 魚を桶に入れて狼の背中に乗り、泉のある場所まで戻った。この泉の周辺は少し開けているから、ここを拠点にしようと思う。
 さて、魚を食べるにはまたクラフト様にお願いしなくては。
「クラフト!」
 そう叫ぶと目の前にクラフトパネルが出現する。そこで私はカテゴリーの中に“魔導具”と言う項目があるのに気付いた。
「魔導具って何かな……こうやって長押ししたら、説明が出てきたりして」
 そう言いながら魔導具の文字をスマホみたいに長押ししてみる。
 すると、シュンっと出てきた吹き出しに『魔導具とは、空気中のマナをエネルギー源として動く器具の事である』と書かれていた。
「空気中のマナ……言葉からして魔力みたいなやつのことよね……」
 そして魔導具をタップすると、色んな器具がたくさんリストアップされた。そのリストは“魔導掃除器”や“魔導照明具”など、いわゆる機械、家電だよねと思われる器具がほとんどだった。
 そうか、この世界ではガスや電気ではなく“マナ”って言うのがライフラインなんだ。なんだか一気に異世界にきた実感が湧いてくる。

 私はその中から“魔導浄水器”と言うものを選び、材料を確認した。
「砂、鉱石……魔石?」
 魔石とはなんぞや。分布を見てみると島のそこら中に落ちているようだ。良かった、あんまりレアなものじゃないみたい。
 よし、この辺で狼にお使いを頼んでみよう。
「あなた、魔石って分かる?」
「がう、がう!」
 狼はうんうんと頷く。
「それ、たくさん拾ってきてくれる? 木の桶をもう一つ作るから、その中に入れてきてほしいの」
「わぉん♪」
 木の桶をもう一つクラフトして狼に取っ手をくわえさせると、狼はクンクンと匂いを嗅ぎながらどこかへ走り去っていった。

「さてと私は……」
 クラフトパネルをピピピッと操作し、“木の作業台”を2つ生成した。そこら中にメタの木って言うのが生えているから、家具なんかはほとんど作ることが出来そうだ。

 作業台の1つはクラフト用に。もう1つはキッチン台として使うつもりだ。
 次にクラフト作業台の上でまな板と包丁、そして石の串を生成。更に火打ち石を生成して、キャンプの準備を着々と進めていく。

 ルキちゃんと一緒に焚き火用の枝を集めてこんもりと山にし、火打ち石で点火した。
 パチパチと枝が燃え始め、焚き火の準備は完了だ。ソロキャンプっていうのはしたことがなかったけど、クラフトのスキル付きなら楽しいかもしれない。

「わぉーん、はっはっはっ!」
 狼が桶に紫色の石を山積みにして帰還。これが魔石……不思議な石だ。
「よーしよーし、良い子だね~」
 狼の顎を撫でると嬉しそうに「くぅ~ん」と鳴いた。

 早速狼が持ってきてくれた魔石を使って“魔導浄水器”を生成。淡水でも海水でも20Lを一気に浄水できる。
 見た目はビールサーバーのような注ぎ口の付いた大きなガラスビン。砂はガラスの材料として必要だったのか……だったら、ガラス製の食器やなんかは永遠に量産し放題だな……。

 更にもう一つ、キッチン台の横に石製の“流し”を生成。その上に魔導浄水器を設置して、簡易キッチンの完成だ。
 早速目の前の泉から桶で水をくんで魔導浄水器へザバーッと流し入れると、魔導浄水器はコンセントもないのにひとりでにコトコトと仕事を始めた。すごい、本当に電気もガスもいらないんだ。
 空気中にはマナっていうのがあって、それを勝手に取り込んで動く仕組みの機械……。SDGs過ぎるな……。

 魔導浄水器は数分で飲水へと変えてくれたため、早速キッチン台で魚の下処理をしていく。5歳の手には大きすぎる包丁だけど、長いこと独り暮らしをしてきたから魚をさばくことくらい朝飯前なのよ。
 パパッと3つの魚の串を作って、焚き火の側にぶっ刺す。そして、クラフトで木のベンチを生成して、それに座って魚が焼けるのを待った。

 パチパチと燃える焚き火を見ていると、なんだかホッとしてきて会社であった嫌なこととか全部忘れられそう。
 私、こんなのほほんとしてて良いのかな? うん、良いんだよね。だって、もう社畜は卒業したし、勇者みたいな使命がある訳でもない。
 急に色んなことから解放された気がして、気付けば涙を流していた。

『ユノ? どうしたのですかにゃ?』
 ルキちゃんがベンチにピョンッと飛び乗ってくる。
「なんかね、もう、頑張らなくて良いんだって思うと、安心しちゃって」
『ユノ。今までお疲れ様ですにゃ。僕はユノがいつも高級なご飯をくれていたこと、知っていましたにゃ。だから僕は、ユノには幸せになって欲しいのですにゃ』
「ルキちゃん……賢い猫ちゃんだったんだね。だから、女神様に“男にモテる加護”とか言ってくれたの?」
『はいですにゃ。でも、ユノは今とっても幸せそうな顔をしていますにゃ。男にモテると言うのは、間違えたかもしれないですにゃ』
「あはは、ルキちゃんのその気持ちが嬉しいんだよ。ありがとね。でも、そうだね……私はこうしてルキちゃんと、それから狼君も一緒にここでのんびりできたらそれでいいかな」
『僕もですにゃ。より良い暮らしが出来るようにクラフト頑張ろうですにゃ』
「そうだね……あっ、お魚さん焼けたみたいだよ。ルキちゃんと狼君の分も用意したんだ。お腹空かないって言ってたけど、食べれるなら一緒に食べよ」
『ありがとうですにゃ! いただきますにゃ♪』
「わぉん、わぉーん♪」

 塩も何も付けてない、名前も知らないお魚さんだったけど、なんだか今まで食べた物の中で一番美味しかったような、気がした。

 さて、太陽がてっぺんまで登ってるから、今はお昼くらいかな? お腹も膨れたことだし、クラフトパネルの地図に乗っていた魔法陣のマークのところへ行ってみよう♪
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