9 / 19
9話 世界樹と工房
しおりを挟む
⸺⸺世界樹の根元⸺⸺
「うわぁ、大きな木……」
私は世界樹の想像を遥かに超える巨大さに圧倒されていた。ただ大きいだけではない、森の神聖な空気は全てこの木から発せられているのだと分かるくらいに、木の周辺にはマナが充満していた。
ただただ呆然と巨木を見上げていると、キラキラと光の球が降りてきた。
『この魔力は……ティニーですね。よく来てくれました』
「わっ、光がしゃべった!?」
「ティニー、彼女が世界樹の意志だよ」
「そっか、世界樹とは、こうやってお話しするんだ」
『驚かせてすみません。さて、私があなたに最後にお会いしたのは今から8年前、あなたがまだフィオナのお腹の中にいる時です。あなたは7つになりましたか……?』
私は「そうです」と相槌を打つ。
『そうですか、大きくなりましたね。ですが、約束の時はまだまだ先です……ここへ来なくてはならなくなった事情があると言う事ですね』
私は頷き、お父様と一緒に一部始終を全て話した。
⸺⸺
『あぁ、フィオナ……そうですか。惜しい人を亡くしました。それにティニーも、辛かったですね』
「お母様が死んじゃったのは悲しいけど、私は叔母様に捨てられた事、全然辛いとは思ってないよ。むしろ、クソババアから解放されて清々してる」
『クソババア……!? なんだか新しい言葉の扉を開いたような気がします。あなたもフィオナ同様、楽しい人柄のようですね』
流石に言葉が汚くて、世界樹、ちょっと引いちゃったかな……一方でタニアは『世界樹にクソって言葉遣いする人初めて見た』と、お腹を抱えて笑っている。お父様は何とも言えないしみじみとした表情を浮かべていた。
「すみません……言葉遣い、気を付けます……」
『ふふふ、良いのですよ。クソババアと言われてしまうほど、エメリーヌが最低の人だと言う事です。事情は分かりました。こちらにフィオナが昔使っていた工房がありますので、案内します』
「ありがとうございます」
⸺⸺フィオナのアトリエ⸺⸺
世界樹の意志に案内されて根元にある洞窟の中に入ると、あちこちにマギア鉱石が散りばめられており、少し開けた場所には人の住めそうな家具が置かれていた。洞窟の中ではあるが、お母さんの魔導照明のおかげでお日様の様な明るさが広がっている。
「ここがお母さんのアトリエ……! ディザリエ王国の家にあるアトリエよりずっと楽しそう!」
『フィオナは毎日ここで楽しく魔導具を作っていました。ティニーも自由に活動して下さい』
「うん、ありがとう!」
私が早速作業に取り掛かった後ろで、お父様とタニアが打ち合わせをする。
「タニア、仲間と連絡は取れたか?」
『はい、ユグドラシアの周辺に10人の仲間がいて、皆喜んで協力すると言って今こちらに向かっています』
「10人か、それは頼もしい。ティニー、ピクシー10人分だ、頼めるかい?」
「うん、作業道具が良いからすぐできるよ! 待っててね!」
「ありがとう。それにしても、楽しそうに作るのだなぁ……昔のフィオナを見ているようだ」
楽しい。今は誰がダメと言う訳でもなく、高いマギア鉱石を買わなくてはいけない訳でもなく、自由に作りたい放題作れる。このままここで魔導具を沢山作って生活出来るのかと思うと、胸が高鳴った。
そして、世界樹が妖精王の嘘を見抜く能力を応用して、録音器にある魔法をエンチャントしてくれた。
『各録音器に相手の思考を録音出来るようにしました。強力な魔法なので、それぞれ1回限り使用出来ます。魔導と魔法の融合で、相手の闇を暴きましょう』
駆け付けてくれたピクシーに魔導具を渡して、使い方を説明する。姿を見られないようにと忠告したけど、ピクシーの本職は“いたずら”であり、一時的に姿を消す事も容易いという。皆ルンルンで空へと飛び立っていった。
さて、叔母様。いや、クソババア。妖精王の娘である私を捨てた事を後悔するお時間です。
「うわぁ、大きな木……」
私は世界樹の想像を遥かに超える巨大さに圧倒されていた。ただ大きいだけではない、森の神聖な空気は全てこの木から発せられているのだと分かるくらいに、木の周辺にはマナが充満していた。
ただただ呆然と巨木を見上げていると、キラキラと光の球が降りてきた。
『この魔力は……ティニーですね。よく来てくれました』
「わっ、光がしゃべった!?」
「ティニー、彼女が世界樹の意志だよ」
「そっか、世界樹とは、こうやってお話しするんだ」
『驚かせてすみません。さて、私があなたに最後にお会いしたのは今から8年前、あなたがまだフィオナのお腹の中にいる時です。あなたは7つになりましたか……?』
私は「そうです」と相槌を打つ。
『そうですか、大きくなりましたね。ですが、約束の時はまだまだ先です……ここへ来なくてはならなくなった事情があると言う事ですね』
私は頷き、お父様と一緒に一部始終を全て話した。
⸺⸺
『あぁ、フィオナ……そうですか。惜しい人を亡くしました。それにティニーも、辛かったですね』
「お母様が死んじゃったのは悲しいけど、私は叔母様に捨てられた事、全然辛いとは思ってないよ。むしろ、クソババアから解放されて清々してる」
『クソババア……!? なんだか新しい言葉の扉を開いたような気がします。あなたもフィオナ同様、楽しい人柄のようですね』
流石に言葉が汚くて、世界樹、ちょっと引いちゃったかな……一方でタニアは『世界樹にクソって言葉遣いする人初めて見た』と、お腹を抱えて笑っている。お父様は何とも言えないしみじみとした表情を浮かべていた。
「すみません……言葉遣い、気を付けます……」
『ふふふ、良いのですよ。クソババアと言われてしまうほど、エメリーヌが最低の人だと言う事です。事情は分かりました。こちらにフィオナが昔使っていた工房がありますので、案内します』
「ありがとうございます」
⸺⸺フィオナのアトリエ⸺⸺
世界樹の意志に案内されて根元にある洞窟の中に入ると、あちこちにマギア鉱石が散りばめられており、少し開けた場所には人の住めそうな家具が置かれていた。洞窟の中ではあるが、お母さんの魔導照明のおかげでお日様の様な明るさが広がっている。
「ここがお母さんのアトリエ……! ディザリエ王国の家にあるアトリエよりずっと楽しそう!」
『フィオナは毎日ここで楽しく魔導具を作っていました。ティニーも自由に活動して下さい』
「うん、ありがとう!」
私が早速作業に取り掛かった後ろで、お父様とタニアが打ち合わせをする。
「タニア、仲間と連絡は取れたか?」
『はい、ユグドラシアの周辺に10人の仲間がいて、皆喜んで協力すると言って今こちらに向かっています』
「10人か、それは頼もしい。ティニー、ピクシー10人分だ、頼めるかい?」
「うん、作業道具が良いからすぐできるよ! 待っててね!」
「ありがとう。それにしても、楽しそうに作るのだなぁ……昔のフィオナを見ているようだ」
楽しい。今は誰がダメと言う訳でもなく、高いマギア鉱石を買わなくてはいけない訳でもなく、自由に作りたい放題作れる。このままここで魔導具を沢山作って生活出来るのかと思うと、胸が高鳴った。
そして、世界樹が妖精王の嘘を見抜く能力を応用して、録音器にある魔法をエンチャントしてくれた。
『各録音器に相手の思考を録音出来るようにしました。強力な魔法なので、それぞれ1回限り使用出来ます。魔導と魔法の融合で、相手の闇を暴きましょう』
駆け付けてくれたピクシーに魔導具を渡して、使い方を説明する。姿を見られないようにと忠告したけど、ピクシーの本職は“いたずら”であり、一時的に姿を消す事も容易いという。皆ルンルンで空へと飛び立っていった。
さて、叔母様。いや、クソババア。妖精王の娘である私を捨てた事を後悔するお時間です。
1,330
あなたにおすすめの小説
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)
青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、
「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」
だそうだ。
一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。
「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。
両親は妹に甘く私に、
「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。
私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。
私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって……
魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。
⸜🌻⸝姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。
タグはあとから追加するかもしれません。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!
サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。
「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」
飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう――
※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
セントフェアファクス皇国徒士家、レイ家の長女ラナはどうしても持参金を用意できなかった。だから幼馴染のニコラに自分から婚約破棄を申し出た。しかし自分はともかく妹たちは幸せにしたたい。だから得意の槍術を生かして冒険者として生きていく決断をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる