【完結】私、妖精王の娘ですけど、捨てちゃって大丈夫ですか?

るあか

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10話 わたくしは勝ち組-エメリーヌ視点-

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 ふぅ、なんとか魔の森から迷わずに出ることが出来ました。大丈夫、誰にも見られていないはず。

 ようやく。ようやくですわ。ようやくあの邪魔な餓鬼を処分する事が出来ました。
「ふふふ……あはははは!」
 王太子と結婚して王族の仲間入りをし、将来は王妃という地位が約束されている。
 勝ち組。これは間違いなく勝ち組ですわ!

 見えてきた城下の城壁を見つめ、ボンヤリとわたくしの今までの苦悩を振り返った。

⸺⸺

 わたくしの家は魔導具の商人の家系で、お父様は伯爵の地位。特に不自由なく生活してきたけれど、わたくしには幼少期より悩みの種があった。
 それは、姉フィオナの存在。姉は幼い頃から変わった子どもだった。たかが魔導具を見るたびに興奮してその構造を確かめたがる。貴族にはとても似合わない、所謂“魔導オタク”だった。
 貴族らしくない振る舞いも多く、両親も手を焼いていた。

 言葉遣いもあまり綺麗ではなく、家の恥だ。みっともないからやめて。そう言おうとも思ったけれど、わたくしにはある考えがあった。
 このまま姉には好き放題させておいて、わたくしはしっかりと貴族としての教養を身に着ける。そうすればきっと大人の女性になった時に長女の姉ではなく、わたくしの方へ伯爵の地位を継ぐための縁談がやってくるに違いない。その後はわたくしが旦那と共に伯爵家を継いで、姉を家から追い出す。

 これこそがわたくしの幼少期より抱く完璧な人生設計だった。

 だというのに!
 両親は姉に対し一見手を焼いているように見えたけれど、同時にとても愛情を注いでいる事に気が付いてしまった。日に日に魔導具の事に詳しくなっていく姉を褒めてすらいる。
 しかもわたくしに寄って来る殿方の友人は、ほぼ全員が姉狙い。天真爛漫で可愛い? あのちゃらんぽらんが?
 わたくしの方が顔も良いし、貴族としての教養も身に着けて品もある。
 だというのに!
 なぜ皆わたくしではなくあのムカつくちゃらんぽらんの方を見ているの?
 しかも、姉は余裕でも見せつけてくるかのように「私が作った魔導具をエメが売って、姉妹仲良く一緒に働けたら良いよね」ですって!? こちとらあんたなんかと一緒に働きたくはないのよ!

 ムカつく、本当にムカつく!
 この怒りをどこへ発散したらいいの。

 そう思っているうちに月日は流れ、私は16歳に、姉は18歳になっていた。
 姉は王立学院魔導科を主席で卒業。一体どんな汚い手を使って成績を上げていたのか。それを暴いてやろうと思い、職員室を訪問すると、先生からとんでもない事実を突き付けられる。
「汚い手なんてとんでもない。彼女が日々コツコツ努力を重ね、自力で勝ち取った主席の座だよ。むしろ……本来入学試験が不合格だったにも関わらず、フィオナさんが毎日土下座をして頼み込みに来て、君の良い所をプレゼンしていったおかげでこの学院に入学する事が出来た君のほうが……君は、どう思うのかね?」
「えっ……わたくしが、本来不合格……!?」
「おや、ご両親から聞いていないのかい。そうか、きっとフィオナさんが口止めしたんだね。君は、同学年の合格者51人中で、51番目の成績だった。本来50人しか入学させる予定はなかったから、ギリギリ不合格だったんだよ。君の家は貴族だったから、通常枠でなくても貴族特別枠という手もある。それをご両親に相談しに行ったらフィオナさんにも聞かれてしまっていてね、貴族特別枠は白い目で見られているから、どうかもう1人合格にしてくれって、毎日頼み込みに来ていたんだよ」
「そ、そんな……」

 絶望だった。まさか自分の入学が、姉に助けられていただなんて……。その後家に帰り両親に問い詰めたところ、その話は事実だった。

⸺⸺余計に、姉が許せなかった。

 何を勝ち誇った気になっているの? わたくしの事、最初から見下していたのね。

⸺⸺

 姉は魔導技師として働き始め、すぐに莫大な富を築いた。だが、もっと自由に開発がしたいと言って家を出て、そのまま帰ってこなくなった。

 きっとどこかで野垂れ死んだんだ。ようやく邪魔者がいなくなった。そう思い清々していると、姉は突然子を身ごもって帰ってきた。
 魔導具の開発研究の旅に出たかと思いきや、まさかの男引っ掛けて遊んでただけ? それで子供が出来ちゃって男にも捨てられて実家に泣きついてきたのね。そんなだらしのない女、誰も受け入れてくれるはずが……。

 何で、両親はそんなに嬉しそうなの!? え、国の王太子と婚約!? 何でそうなった!?

 まさか、国からエイムズ伯爵家への縁談で、本来わたくしが受けるはずだったのに姉が帰ってきたから姉が婚約したのでは……?
 許せない。その座は本来わたくしのもの。

 姉の子も育ってきて、いよいよ姉の王太子との婚姻が結ばれる頃、城下では病が流行っていた。ウイルスによる病で、感染の度合いが酷いと死に至ることも。

⸺⸺姉がそれにかかって死ねば、王太子と婚約するのはわたくしでは?

 そう思ったわたくしは、学院の研究室からウイルスの病原体を搾取。屋敷の皆が寝静まった頃、姉の部屋に忍び込み、ウイルスを体内に注入した……。
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