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17話 永遠の悪夢-タニア視点-
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⸺⸺ディザリエ城、王太子の部屋⸺⸺
仲間の情報で国王が王太子の部屋にいる事は分かっていたから、ウチとタナトス君は姿を消したまま王太子の部屋の前に先回りして密猟者が来るのを待った。
彼が衛兵にあちこちたらい回しにされてこの部屋へと辿り着くと、ウチらも一緒に部屋へと入る。
「こっ、国王陛下……!」
「貴様は……一体何があったと言うのだ……?」
ボロボロの密猟者を見てドン引きする国王。しかし密猟者から例の紙を渡されて、その表情は一変した。
「……お前の雇った密猟者に狩られた魔物の数だけ、お前に天罰を下そう……!? き、貴様これをどこで!」
密猟者はここで国王へ森での一部始終を話した。
⸺⸺
「オベロン陛下だと……! ピクシーは確かにそう言ったのだな……!?」
「はい……」
密猟者が頷くと、国王はガクッと膝を突いた。
「あぁ……マズいぞ……。余がこやつを魔の森に放った事がオベロン陛下にバレておる……。もう、この国はおしまいかもしれん……」
「えぇっ!? でも父上、エメリーヌがあの餓鬼を連れて帰って来れば……餓鬼が無事ならきっとオベロンってやつも許してくれるのでは……?」
「そう、願いたいが……」
よし、密猟者も役目を果たしたし、タナトス君、出番よ!
透明なタナトス君の背中をポンと軽く押すと、彼は覚悟を決めたのか、透明化を解いて密猟者の背後を陣取った。
そして、城の入り口でモジモジしていた頃の声とは打って変わって低く不気味な声で、タナトス君のお芝居が始まった。
『役目を果たしたようだな、ニンゲンよ……』
「っ! うわぁぁぁっ!」
密猟者は振り向き尻餅をついて後退る。
「ぎょっ! ま、魔物!?」
王太子は国王の背中へと隠れ、国王もまた王太子の背後へ回ろうと揉みくちゃになっていた。
「なぜここに魔物が!? 結界が機能しておるはずだぞ!?」
ふふん。ウチらみたいな邪心が浄化された組は結界も普通に通り抜けられるんだな、これが。
「ま、待ってくれ……! 命だけは助けてくれるって、書いてあっただろ!?」
密猟者は声をブルブルと震わせながら必死にそう訴える。
『命だけは助けるというのは、その言葉通り命だけは取らないと言う事。ソナタには死よりも辛い苦痛を与えてやる』
「そ、そんな……! 話が違う!」
いやいや、あんたが文面の解釈を間違えただけでしょ?
『これからソナタの魂は永遠に地獄を彷徨うことになる。奈落の底でソナタの犯した罪を悔い改めるが良い』
タナトス君のローブが激しく揺れると、密猟者は「ぎゃあぁぁぁぁっ!」と断末魔を上げ、口から白い煙を吐いてその場に倒れた。
白い煙がタナトス君のフードの中へと吸い込まれると、密猟者は驚いた表情のままピクリとも動かなくなった。
「ひぃぃぃぃっ、あいつ、殺されたのか!?」
と、王太子。命だけは取らないって言ったのに、馬鹿なの?
仕方がないのでウチも姿を現し、抱き合ってガタガタと震えている親子の目の前へと飛んでいった。
「うわぁ、また魔物だ!」
『あの男は死神に魂を吸い取られた。謂わば仮死状態。心臓こそ動いてはいるが、もう二度と目を覚ますことはない。直に生命活動を維持できなくなり死に至るが、その間その男は何度も殺される悪夢にうなされる事になる』
ふふん、我ながら知的に話せたんじゃない?
「な……なんでそんな事……」
王太子は目に涙をためながら尋ねてくる。
『なぜだと? あの男が殺した我らの仲間の数だけ、死の苦痛を与えている。そう言えば、そこのクソ国王があの男に命じたのだったな』
ウチがそう言って国王の方を見ると、彼は歯をガチガチと震わせながら「ま、まさか余にも同じ事を……!?」と言った。
『さぁ、それはオベロン陛下次第だ。まぁ、この男より軽くなる事はまずないだろう』
「あぁぁ……」
密猟者を森で殺さなかったのは国王への見せしめ。目の前で起こっている事を想像させて、これ以上の辛い目に遭うという恐怖を植え付ける。
おっと、クソ王太子にも植え付けておかないと。忘れるところだった、危ない危ない。
『馬鹿息子。お前はティニーをエメリーヌに排除させようとしたな。自ら手を下さなくとも、指示も同罪だ。オベロン陛下の大切なひとり娘。陛下がお許しになるはずがない。あぁ、ちなみにエメリーヌは今頃魔の森で息絶えているだろう』
「ひぃっ……い、嫌だ……ぼ、僕は、死にたくない! もう僕はこんな国出て行くぞ!」
王太子はそう言って何度も転びながら逃げるように部屋を飛び出した。
「なっ、馬鹿息子、余を置いて逃げるのか!? 余、余だって死にたくない……! まて、船を独り占めするな!」
ウチはこの瞬間、録音器の録音ボタンを押した。
『何だ国王。国を捨てて逃げるのか? 民は置き去りか?』
「国も民もどうだっていい! 余は余が一番大事だ! 民は王を庇うもの。余の罪は全て民が被ってくれようぞ! 好きなだけ民の魂を吸い取るが良いわ!」
国王はそう言葉を吐き捨てて、王太子を追いかけていった。
録音器のスイッチをオフにして、通信器でオベロン陛下にコンタクトを取る。
『オベロン陛下! 上手く行きました。密猟者の身体を“王家の船”に転移させて下さい』
「良くやったタニア、タナトス君。うむ、了解した。ではタニアは予定通り城下に潜んでいるピクシーらに国王を煽る合図をしてくれ」
『はい、ただいま!』
ウチはピクシーの念話を使って、仲間の皆に『国王が逃げた』と伝えた。
仲間の情報で国王が王太子の部屋にいる事は分かっていたから、ウチとタナトス君は姿を消したまま王太子の部屋の前に先回りして密猟者が来るのを待った。
彼が衛兵にあちこちたらい回しにされてこの部屋へと辿り着くと、ウチらも一緒に部屋へと入る。
「こっ、国王陛下……!」
「貴様は……一体何があったと言うのだ……?」
ボロボロの密猟者を見てドン引きする国王。しかし密猟者から例の紙を渡されて、その表情は一変した。
「……お前の雇った密猟者に狩られた魔物の数だけ、お前に天罰を下そう……!? き、貴様これをどこで!」
密猟者はここで国王へ森での一部始終を話した。
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「オベロン陛下だと……! ピクシーは確かにそう言ったのだな……!?」
「はい……」
密猟者が頷くと、国王はガクッと膝を突いた。
「あぁ……マズいぞ……。余がこやつを魔の森に放った事がオベロン陛下にバレておる……。もう、この国はおしまいかもしれん……」
「えぇっ!? でも父上、エメリーヌがあの餓鬼を連れて帰って来れば……餓鬼が無事ならきっとオベロンってやつも許してくれるのでは……?」
「そう、願いたいが……」
よし、密猟者も役目を果たしたし、タナトス君、出番よ!
透明なタナトス君の背中をポンと軽く押すと、彼は覚悟を決めたのか、透明化を解いて密猟者の背後を陣取った。
そして、城の入り口でモジモジしていた頃の声とは打って変わって低く不気味な声で、タナトス君のお芝居が始まった。
『役目を果たしたようだな、ニンゲンよ……』
「っ! うわぁぁぁっ!」
密猟者は振り向き尻餅をついて後退る。
「ぎょっ! ま、魔物!?」
王太子は国王の背中へと隠れ、国王もまた王太子の背後へ回ろうと揉みくちゃになっていた。
「なぜここに魔物が!? 結界が機能しておるはずだぞ!?」
ふふん。ウチらみたいな邪心が浄化された組は結界も普通に通り抜けられるんだな、これが。
「ま、待ってくれ……! 命だけは助けてくれるって、書いてあっただろ!?」
密猟者は声をブルブルと震わせながら必死にそう訴える。
『命だけは助けるというのは、その言葉通り命だけは取らないと言う事。ソナタには死よりも辛い苦痛を与えてやる』
「そ、そんな……! 話が違う!」
いやいや、あんたが文面の解釈を間違えただけでしょ?
『これからソナタの魂は永遠に地獄を彷徨うことになる。奈落の底でソナタの犯した罪を悔い改めるが良い』
タナトス君のローブが激しく揺れると、密猟者は「ぎゃあぁぁぁぁっ!」と断末魔を上げ、口から白い煙を吐いてその場に倒れた。
白い煙がタナトス君のフードの中へと吸い込まれると、密猟者は驚いた表情のままピクリとも動かなくなった。
「ひぃぃぃぃっ、あいつ、殺されたのか!?」
と、王太子。命だけは取らないって言ったのに、馬鹿なの?
仕方がないのでウチも姿を現し、抱き合ってガタガタと震えている親子の目の前へと飛んでいった。
「うわぁ、また魔物だ!」
『あの男は死神に魂を吸い取られた。謂わば仮死状態。心臓こそ動いてはいるが、もう二度と目を覚ますことはない。直に生命活動を維持できなくなり死に至るが、その間その男は何度も殺される悪夢にうなされる事になる』
ふふん、我ながら知的に話せたんじゃない?
「な……なんでそんな事……」
王太子は目に涙をためながら尋ねてくる。
『なぜだと? あの男が殺した我らの仲間の数だけ、死の苦痛を与えている。そう言えば、そこのクソ国王があの男に命じたのだったな』
ウチがそう言って国王の方を見ると、彼は歯をガチガチと震わせながら「ま、まさか余にも同じ事を……!?」と言った。
『さぁ、それはオベロン陛下次第だ。まぁ、この男より軽くなる事はまずないだろう』
「あぁぁ……」
密猟者を森で殺さなかったのは国王への見せしめ。目の前で起こっている事を想像させて、これ以上の辛い目に遭うという恐怖を植え付ける。
おっと、クソ王太子にも植え付けておかないと。忘れるところだった、危ない危ない。
『馬鹿息子。お前はティニーをエメリーヌに排除させようとしたな。自ら手を下さなくとも、指示も同罪だ。オベロン陛下の大切なひとり娘。陛下がお許しになるはずがない。あぁ、ちなみにエメリーヌは今頃魔の森で息絶えているだろう』
「ひぃっ……い、嫌だ……ぼ、僕は、死にたくない! もう僕はこんな国出て行くぞ!」
王太子はそう言って何度も転びながら逃げるように部屋を飛び出した。
「なっ、馬鹿息子、余を置いて逃げるのか!? 余、余だって死にたくない……! まて、船を独り占めするな!」
ウチはこの瞬間、録音器の録音ボタンを押した。
『何だ国王。国を捨てて逃げるのか? 民は置き去りか?』
「国も民もどうだっていい! 余は余が一番大事だ! 民は王を庇うもの。余の罪は全て民が被ってくれようぞ! 好きなだけ民の魂を吸い取るが良いわ!」
国王はそう言葉を吐き捨てて、王太子を追いかけていった。
録音器のスイッチをオフにして、通信器でオベロン陛下にコンタクトを取る。
『オベロン陛下! 上手く行きました。密猟者の身体を“王家の船”に転移させて下さい』
「良くやったタニア、タナトス君。うむ、了解した。ではタニアは予定通り城下に潜んでいるピクシーらに国王を煽る合図をしてくれ」
『はい、ただいま!』
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