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121話 新たな始まり
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ここはラインツ王国の国境の町ブライア。すぐ隣の大国、ザイラール王国に近いこともあり、たくさんの冒険者が訪れる賑やかな町だ。
僕はノエル・グランヴィル。お家は『錬成堂グランキャット』というお店。
僕のお父さん、ジル・グランヴィルは錬金術師で、ラインツ王国の公爵令嬢であるエミリアと一緒に経営している。
今から3ヶ月後、この町ブライアでとても大きなお祭りが開かれる。
それは――『同盟記念祭』といって、ラインツとザイラールの間で結ばれた友好同盟をお祝いするお祭り。
4年に1度開催されて、1ヶ月続くんだ。
色んなお店が並び、各国で活躍している旅芸人の一座が出し物を披露してくれたり。
ブライアは普段から賑やかな町ではあるけれど、この1ヶ月間だけはどこの王都よりもたくさんの人が訪れて、大陸中で一番賑わうと言っても過言ではないんだって。
僕は日本からの転生者で、前世は病弱で病室で寝たきりのまま人生を終えてしまったから、そんな大きなお祭りなんてもちろん体験したことがない。
だから、僕もめちゃくちゃ楽しみにしているんだ、同盟記念祭。
――だけど、今のままでは3ヶ月後の同盟記念祭では――悲劇が起こる。
隣国ザイラールのローベル・アイズフトっていう宰相がとんでもなく悪いことを考えていて、ラインツ王国の最強聖騎士パーシヴァルの身体を乗っ取り、大衆の面前でザイラール国王を殺害させようとしているんだ。
パーシヴァルはエミリアのお兄様であると同時に、国王直属の聖騎士団の団長でもある。この国にはなくてはならない存在だ。僕もまたパーシヴァルにはお世話になっていて、大好きだし、そんな悲劇は起こしてほしくない。
そんなことを考えながら、僕はお店の2階の自分の部屋からブライアの街並みを眺めていた。
昨日までは普通の町だったのに、今日はいつも見かけない人たちがたくさん来ている。
「わぁ、色んな人がたくさん!」
僕は身体を上下に揺さぶってキャッキャとはしゃぐ。
『ノエルよ、もうすぐ4歳になるというのに、まだまだ落ち着きがないのう。遂に準備が始まったのじゃな、まぁ、お主がはしゃぐのも無理はないか』
そう僕の頭の中に直接語り掛けてきて、僕の隣にちょこんとお座りをしたのは、黒猫のくろすけ。僕は超能力が使えるから、くろすけとは念話で話ができるんだ。
ローベル宰相の企みを知ったのはこのくろすけのおかげであり、ローベル宰相は4年前にも同じことを企んでいたのだけれど、4年前はくろすけが命がけでそれを防いだんだ。
くろすけは偉大な錬金術師だったけれど、そのせいで色々あって黒猫になってしまった。
それでもくろすけはローベル宰相の企みを完全に阻止しようと奮闘しており、僕もそれを手伝うことにしたんだ。
「うん、同盟記念祭の準備が始まったんだね。あっ、見てくろすけ、リオンの父上と母上!」
リオンはアイラ、ジャックと共に〝黒豹〟という冒険者パーティを組んで、お父さんが錬金に使う素材を集めてくれている。今はこの黒豹も一緒にこのグランキャットに住んでいるんだ。
そんなリオンの正体はエミリアの護衛を務める近衛さんで、聖騎士様。
代々聖騎士を輩出しているブラックウェル伯爵家の次期当主だ。
リオンの父上も母上も王都の貴族街で暮らしているはずだけど、同盟記念祭の準備が始まったからその関係でこのブライアの町までやって来たのだろうか。
僕はここで、部屋の掃除をしてくれていた『魔導掃除機くろすけ号』を止めた。
僕が錬金術で作った自作の魔導具。
――そう、僕も錬金術師。師匠はくろすけ。
僕が錬金術を使えることは一部の人たちしか知らない。お父さんがあんまり広まっちゃうと、悪い人たちに狙われるといけないからって。
たくさん錬金術の修業を積んで、僕は『記憶の万華鏡』という難しい魔導具を作った。
この万華鏡を作るためには超能力の力も必要で、僕にしかできない代物。
この記憶の万華鏡は、対象の記憶を、別の対象の脳内に投影することができるというもの。
僕はこの魔導具を使って、ローベル宰相の企みをザイラール国王に告発したいんだ。
そのために必要なのは、くろすけの記憶と、もう1人、ザイラール国王の娘であるクリスティーナ王女の記憶。
クリスティーナ王女に会って、一緒にザイラール国王に謁見する。そうすれば、ローベル宰相の企みを阻止するだけではなく、断罪までしてもらうこともできる。
これは、両国の平和と同盟記念祭の開催を守るだけじゃない――
――くろすけの無念を晴らし、くろすけとお父さんの絆を取り戻すためでもあるんだ。
僕とお父さんには血のつながりはないけれど、お父さんは僕を大切に育ててくれた。
くろすけだって、僕のことをずっと側で見守っててくれる、僕の大切な――おじいちゃん。
――これは、そんな僕の、恩返しの物語。
『むむ、ノエルよ、ジークベルト殿とドロテア殿が店に入っていきおったぞ。ワシらも挨拶に行くとするかのう』
「えっ、リオンの父上と母上が!? うん、行こう、くろすけ!」
僕はくろすけと共に部屋を飛び出すと、1階への階段を駆け下りていった。
僕はノエル・グランヴィル。お家は『錬成堂グランキャット』というお店。
僕のお父さん、ジル・グランヴィルは錬金術師で、ラインツ王国の公爵令嬢であるエミリアと一緒に経営している。
今から3ヶ月後、この町ブライアでとても大きなお祭りが開かれる。
それは――『同盟記念祭』といって、ラインツとザイラールの間で結ばれた友好同盟をお祝いするお祭り。
4年に1度開催されて、1ヶ月続くんだ。
色んなお店が並び、各国で活躍している旅芸人の一座が出し物を披露してくれたり。
ブライアは普段から賑やかな町ではあるけれど、この1ヶ月間だけはどこの王都よりもたくさんの人が訪れて、大陸中で一番賑わうと言っても過言ではないんだって。
僕は日本からの転生者で、前世は病弱で病室で寝たきりのまま人生を終えてしまったから、そんな大きなお祭りなんてもちろん体験したことがない。
だから、僕もめちゃくちゃ楽しみにしているんだ、同盟記念祭。
――だけど、今のままでは3ヶ月後の同盟記念祭では――悲劇が起こる。
隣国ザイラールのローベル・アイズフトっていう宰相がとんでもなく悪いことを考えていて、ラインツ王国の最強聖騎士パーシヴァルの身体を乗っ取り、大衆の面前でザイラール国王を殺害させようとしているんだ。
パーシヴァルはエミリアのお兄様であると同時に、国王直属の聖騎士団の団長でもある。この国にはなくてはならない存在だ。僕もまたパーシヴァルにはお世話になっていて、大好きだし、そんな悲劇は起こしてほしくない。
そんなことを考えながら、僕はお店の2階の自分の部屋からブライアの街並みを眺めていた。
昨日までは普通の町だったのに、今日はいつも見かけない人たちがたくさん来ている。
「わぁ、色んな人がたくさん!」
僕は身体を上下に揺さぶってキャッキャとはしゃぐ。
『ノエルよ、もうすぐ4歳になるというのに、まだまだ落ち着きがないのう。遂に準備が始まったのじゃな、まぁ、お主がはしゃぐのも無理はないか』
そう僕の頭の中に直接語り掛けてきて、僕の隣にちょこんとお座りをしたのは、黒猫のくろすけ。僕は超能力が使えるから、くろすけとは念話で話ができるんだ。
ローベル宰相の企みを知ったのはこのくろすけのおかげであり、ローベル宰相は4年前にも同じことを企んでいたのだけれど、4年前はくろすけが命がけでそれを防いだんだ。
くろすけは偉大な錬金術師だったけれど、そのせいで色々あって黒猫になってしまった。
それでもくろすけはローベル宰相の企みを完全に阻止しようと奮闘しており、僕もそれを手伝うことにしたんだ。
「うん、同盟記念祭の準備が始まったんだね。あっ、見てくろすけ、リオンの父上と母上!」
リオンはアイラ、ジャックと共に〝黒豹〟という冒険者パーティを組んで、お父さんが錬金に使う素材を集めてくれている。今はこの黒豹も一緒にこのグランキャットに住んでいるんだ。
そんなリオンの正体はエミリアの護衛を務める近衛さんで、聖騎士様。
代々聖騎士を輩出しているブラックウェル伯爵家の次期当主だ。
リオンの父上も母上も王都の貴族街で暮らしているはずだけど、同盟記念祭の準備が始まったからその関係でこのブライアの町までやって来たのだろうか。
僕はここで、部屋の掃除をしてくれていた『魔導掃除機くろすけ号』を止めた。
僕が錬金術で作った自作の魔導具。
――そう、僕も錬金術師。師匠はくろすけ。
僕が錬金術を使えることは一部の人たちしか知らない。お父さんがあんまり広まっちゃうと、悪い人たちに狙われるといけないからって。
たくさん錬金術の修業を積んで、僕は『記憶の万華鏡』という難しい魔導具を作った。
この万華鏡を作るためには超能力の力も必要で、僕にしかできない代物。
この記憶の万華鏡は、対象の記憶を、別の対象の脳内に投影することができるというもの。
僕はこの魔導具を使って、ローベル宰相の企みをザイラール国王に告発したいんだ。
そのために必要なのは、くろすけの記憶と、もう1人、ザイラール国王の娘であるクリスティーナ王女の記憶。
クリスティーナ王女に会って、一緒にザイラール国王に謁見する。そうすれば、ローベル宰相の企みを阻止するだけではなく、断罪までしてもらうこともできる。
これは、両国の平和と同盟記念祭の開催を守るだけじゃない――
――くろすけの無念を晴らし、くろすけとお父さんの絆を取り戻すためでもあるんだ。
僕とお父さんには血のつながりはないけれど、お父さんは僕を大切に育ててくれた。
くろすけだって、僕のことをずっと側で見守っててくれる、僕の大切な――おじいちゃん。
――これは、そんな僕の、恩返しの物語。
『むむ、ノエルよ、ジークベルト殿とドロテア殿が店に入っていきおったぞ。ワシらも挨拶に行くとするかのう』
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