ちびっこ錬金術師の恩返し

るあか

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123話 いきなり大チャンス?

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 ――ザイラール城にて。

 初めて入るはずなのに、初めてじゃないザイラール城のロビー。
 前に一度くろすけの過去の夢でこのお城を隅々まで体験していたからだ。

 それにしても、くろすけの夢では鎧やローブをまとった兵士やメイドなど、お城の関係者しかいなかったけれど、今は色んな人でひしめき合っている。
 僕たちみたいに同盟記念祭関係の人たちが訪れているんだ。

 既にこのザイラール城のロビーがお祭りの会場のように賑わっており、僕には大事な使命があるにも関わらず、僕の心はウキウキと踊っていた。

『ノエルよ、分かっておるか? まずはクリスティーナ王女に会わねばならぬぞ』
 そうくろすけの念を受け取り、ハッとする僕。
『あっ、そうだった。えっと、どうしよう。エミリアなら隣国の王族同士、接点があるかな? それとも、元魔道軍大将のパパ?』
 
『む、そうじゃのう。ジルが軍を退いた理由が、とても前向きな理由だとは到底思えん。ここはエミリアにお願いしてみるとしよう』
『そっか、そうだね……。よし、僕にまっかせて』
 僕はくろすけと念話を交わすと、エミリアのワンピースをツンツンと引っ張った。

「ねぇ、ねぇ、エミリア」
「あら? ノエル君、どうしたの?」
「エミリアって、クリスティーナ王女とお友だち?」
 
「クリス殿下……懐かしいわね。もうしばらくお会いしてはいないけれど、もちろんお友だちよ。最後にお会いしたのが前回の同盟記念祭の頃だったから、今はもう8歳か9歳になられているのかしら」
 エミリアはそう言ってふふっと微笑んだ。良かった、彼女の表情を見る限り、仲は良さそうだ。

「あのね、僕もクリスティーナ王女とお友だちになれる? ご挨拶、できる?」
 僕がそう言うと、隣で聞いていたお父さんが「おま……またすごいこと言い出したな……」と呆れた表情を浮かべていた。

「そうねぇ、私も久々にご挨拶したいし、どのみち陛下にはご挨拶をするつもりだったので、ノエル君も一緒に行きましょうか」
「うわーい! やったー!」
 万歳をして喜ぶ僕。国王にも会えるなんて、いきなり大チャンスだ。

「うっ、マジか……ノエルが謁見して俺が謁見しない訳にはいかないよな……。はぁ、気まずいけど俺も行くか……」
 お父さんはがっくしとうなだれた項垂うなだれた。

「あぅ、パパ、ごめん……。おーさまと、喧嘩けんか中?」
「いやいや、陛下とは喧嘩なんてしてないさ。けど、まぁ、軍を抜ける時も会えずじまいだったからな。陛下に黙っていなくなっちまって、申し訳ないっつーか、なんつーか……。なんにせよ、ノエル、お前が気にすることじゃないさ」
 お父さんはそう言って失笑した。

「えっ、おーさまに、お別れしなかったの……?」
「まぁな……。まぁ、これは大人の事情ってやつだ」
 お父さんは気まずそうに言う。

「その件も陛下に一度ちゃんとお伝えしなくてはですね。では、グランキャットのお店の件は……」
 エミリアがそう言うと、アイラが名乗り出た。
「あぁ、アタシ、やっとくよ。グランキャットは、同盟記念祭の間も通常通り営業しますって、申請を出せばいいんだろう?」
 
 そうか、ナダ茶とシラナミ食材の申請だけじゃなくて、グランキャット自体の申請も必要だったのか。
「ええ、ありがとう、アイラさん。では、アイラさんにお任せして私たちは玉座へ向かいましょうか」
「だな。アイラ、ありがとう、頼んだぞ」
「はいよー、いってらっしゃい」

 アイラに手続きの諸々をお願いして、僕とくろすけ、そしてお父さんとエミリア、護衛のリオンの5人でロビーの大階段を上り、2階へと進んだ。

 すると、奥の廊下には2人の兵士が立っていた。
 彼らはお父さんを見るなり目を真ん丸にする。

「あなたは……ジル様……!」
「お久しぶりです……!」

「あぁ、久しぶり。こちら、ラインツ王国のクラウディス公爵家のご令嬢、エミリア殿下だ」
 お父さんがそう言うと、兵士らは更に目を見開き、サッと片膝を突いた。
 僕は思わず「おぉ……」と声が漏れる。

 やっぱりお父さんもエミリアも、すごい人だ……!
「あぁ、良いのです。お立ちください」
 申し訳なさそうに笑うエミリア。

 これなら、ここもきっと顔パスかも……?
 
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