13 / 44
13話 ギルドの仕事に対価を与えよう
しおりを挟む翌日からはボクたちはクレニア鉱石を運ぶことに必死になっていた。
ナーガ率いるギルド『飛竜の翼』だけでは運搬に時間がかかってしまうので、アビスやルナ、それから自警団ギルドの『鷹の眼』にも協力をしてもらった。
城の横には『造幣局』が建設され、なんとか2人いた貨幣職人さんに急いでお金を作ってもらった。
銀色の硬貨“クレド”。単位は“C”だ。銀色の硬貨で、1や100などの数字が刻んであって分かりやすい。
これは全世界共通硬貨であるため、万が一隣国や外と取引をすることになってもこれがあれば安心だ。
なんとか町の住民へ最初に配る量のクレドを確保できたところで、ボクはギルドを1つ1つ回っていく。
⸺⸺緑化ギルド『新芽の集い』⸺⸺
ここではクラフトの素材に使う植物の栽培から、人間の食料になる野菜の栽培まで、植物関係の管理をやってくれている。
「いつもありがとう。はい、お金ができたよ」
ボクは一定額のクレドをギルドリーダーへと手渡す。
「わぁぁ、クレドじゃないですか! 遂に通貨の流行ですね」
ギルドリーダーは嬉しそうに受け取ってくれた。
「うん、そういう訳で、このギルドで作ったものをお店に並べてほしいんだ。八百屋さんとか、花屋さんとかかな。そういう役割分担もお願いね」
「はい、すぐに決めて参ります!」
ギルドリーダーが意気揚々と去っていったので次へ行く。
⸺⸺漁業ギルド『魚魚魚』⸺⸺
ここのギルド名考えたの誰……?
ボクは気を取り直して緑化ギルド同様にクレドを渡し、お魚さんをやってもらうよう頼んだ。
⸺⸺仕立てギルド『赤い糸』⸺⸺
ロマンチックなギルド名だ。ここには服屋さんをお願いした。
⸺⸺武器職人ギルド『鉄は熱いうちに打て』⸺⸺
“鉄は熱いうちに打て”っていうことわざをそのままの意味でギルド名にしちゃってるね……。
ちなみにギルド名が長いから、ギルドのみんなは『テツアツ』って言ってるらしい。
ここでは武器屋さんをお願いした。
それからも防具職人ギルド『堅忍質直』には防具屋さんを、錬金ギルド『等価交換』には道具屋さんを。
その他、素材屋さん、鉱石屋さん、家具屋さん、等々……。あっという間にたくさんのお店が立ち並び、みんなより自由に、より活き活きと町は栄えていった。
⸺⸺
それと同時にボクたちのお城もリフォームが始まり、造幣ギルド『猫に小判』や猫お世話ギルド『猫吸い』の宿舎も城内に収納された。
城は3階建てになり、強固なドラグナ鉱石をより純度の高い物質へと変化させた“ドラグニウム”で城壁が固められ、床全体にふかふかの絨毯が敷き詰められた。
そしてボクたち猫組の夢であった、あるものが実現する。
それは……。
「高級カリカリ!」
ボクの瞳には山盛りのキャットフードが写り、キラキラと輝く。
くんくんと匂いを嗅ぐと、お魚のいい香りがふわんと漂ってきた。
ボクは試作品としてピカピカのお皿に盛られた山盛りのキャットフードにがぶりとかぶりつく。
ボリボリと奥歯で噛み砕き、ゴクンと飲み込んだ。
「う、美味い……!」
ボクのほっぺたは秒で落ち、ボクは絨毯に身体を擦りつけて全身で悶えた。
お魚を素に作られたグレインフリーの高級キャットフード。
どうやらこの島の人たちにはキャットフードという概念がなかったため、猫組で一生懸命に説明を繰り返し、なんとかギルド『猫吸い』でのクラフトに成功したのであった。
「良かったですぅ。こっちはチキン味ですよ」
アンナにそう言われ、もう1つの山盛りフードにもがぶりとかぶりつく。
「これも美味いにゃぁぁぁぁ」
ボクは身体がとろけていった。
「まぁ、猫は液体という噂は本当だったのですね!」
と、アンナ。
液体ではないけどね。
⸺⸺
その後それぞれの仕事から帰ってきた猫組にも食べてもらうと、みんな液体となって溶けていった。
液体ではないけどね。
その後みんなで仲良く全身毛づくろいをした。
これから毎日この高級カリカリがお腹いっぱい食べれると思うと、ボクはこの世界に転移してきて良かったと思うのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
113
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる