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「でも、いまは私のところにいるから、別にいいじゃない」
励ますように、ラズが言った。
「うん、そうさ」
ネルーピーは、そのことについて安心しているように、笑いながら言った。
「オイラは本当に、世界一幸せな、カヤネズミだと思うよ」
「まあ、そう言ってくれると、なんだか、うれしくなってくるわね」
喜びながら、ラズが言った。
「へっ、別に、なんてことないやい」
ネルーピーは照れているのか、すばやく、ラズの服の中にもぐりこんで、姿を隠してしまった。
しかしよく見ると、ネルーピー自慢の、細長いしっぽだけは、服の中にしまい忘れているようだった。
「ネルーピーったら、しっぽが出ているわよ」
ラズがそう指摘すると、ネルーピーはしずかに、しっぽもラズの服の中に、するっとしまい込んだ。するとラズの着ている服は、肩の部分だけが、不自然に丸く盛り上がった。その中では、ネルーピーが、もぞもぞと動いているのだ。
「おーい! ねえ! そこの君たち!」
突然、どこからか、誰かの声が聞こえてきた。
それでラズはとっさに、左右を見まわし、ネルーピーも、服の中から、そそくさと顔を出した。
しかし、二人の目には、誰の姿も見当たらない。
「おかしいわ。どこにもいない」
けげんに思いながら、ラズが言った。
「空耳かしら」
「きっとそうだよ。ほら、疲れてるんじゃない? だからやっぱり、店番なんかやめて、さ、オイラと、はやめの昼食にしようよ!」
服の中から、完全に外に出たネルーピーが、ラズの肩の上で、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、そう言った。
「ネルーピー。あなたが気にしているのは、私の体調なんかじゃなくて、本当はそれが目的だったのね」
励ますように、ラズが言った。
「うん、そうさ」
ネルーピーは、そのことについて安心しているように、笑いながら言った。
「オイラは本当に、世界一幸せな、カヤネズミだと思うよ」
「まあ、そう言ってくれると、なんだか、うれしくなってくるわね」
喜びながら、ラズが言った。
「へっ、別に、なんてことないやい」
ネルーピーは照れているのか、すばやく、ラズの服の中にもぐりこんで、姿を隠してしまった。
しかしよく見ると、ネルーピー自慢の、細長いしっぽだけは、服の中にしまい忘れているようだった。
「ネルーピーったら、しっぽが出ているわよ」
ラズがそう指摘すると、ネルーピーはしずかに、しっぽもラズの服の中に、するっとしまい込んだ。するとラズの着ている服は、肩の部分だけが、不自然に丸く盛り上がった。その中では、ネルーピーが、もぞもぞと動いているのだ。
「おーい! ねえ! そこの君たち!」
突然、どこからか、誰かの声が聞こえてきた。
それでラズはとっさに、左右を見まわし、ネルーピーも、服の中から、そそくさと顔を出した。
しかし、二人の目には、誰の姿も見当たらない。
「おかしいわ。どこにもいない」
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「空耳かしら」
「きっとそうだよ。ほら、疲れてるんじゃない? だからやっぱり、店番なんかやめて、さ、オイラと、はやめの昼食にしようよ!」
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