ラズとリドの大冒険

大森かおり

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「じゃあ、今度からは、もうすこし茹でることにするわね」
「頼む」
 ルビットは、それだけ言うと、操舵室の中から、これまで自分がため込んできた、何枚かの汚れた皿を重ねたものを、ラズに素早く渡して、また勢いよく、扉を閉めた。
 それからラズは、自分の手に、ルビットから受けとったばかりの、何枚かの汚れた皿を持ちながら、しばらく呆然と立ちつくした。
 そして、なんの前触れもなしに、急に我に返ると、
「ねえ、ネルーピー。信じられる?」と、放心状態になって言った。
「いま、ルビットが、あのルビットが、私に向かって、ふつうに話しかけたのよ。それって、いまのいままで、なかったことよ」
 これまでにない、ルビットの対応に興奮しながら、ラズが言った。
 その様子のラズを見たネルーピーは、呆れた顔をすると、
「ああ、どうやらそうみたいだね」と、ラズとは反対に、冷静になって言った。
「でも、あいつが言ったことは、お礼なんかじゃなくて、ただの文句だったよ」
「文句は文句でも、これまでだったら、その文句ですら、言ってくれたこともなかったわ」
 まるで、夢でも見ているのではないかと思うくらい、大げさにラズが言った。
「それなのに、今日は自分から、私に話しかけてきてくれたのよ」
 ラズは言いながら、あらためて、そのよろこびを噛みしめていた。
「それって、すごい進歩じゃないかしら?」
「ああ、うん、そうだね」
 頬杖をつきながら、すこしいい加減になって、ネルーピーが言った。
「オイラもそう思うよ。あれで、お礼さえ言えばね」
「まあ、そう言わないで」
 ラズが言った。
「さ、これから私たちも、夕食を食べに、一階へ戻りましょう」
 そのあと、ラズとネルーピーは、操舵室から離れて、階段をおりていった。
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