353 / 387
15
6
しおりを挟む
「なるべく落ちないように、もっとみんなで体を寄せ合って、一つのかたまりになるんだ!」
それを聞いたみんなは、どんどん崩れていく岩に追い詰められながら、すぐに、リドの指示通りに動いた。けれども、動きが少しばかり遅くて、リドが、
「急げ! ゆっくりしている暇なんてないぞ!」と、手厳しく、みんなを叱った。
ラズたちはそれから、遅くとも、全員が落ちることなく、無事に、まだわずかに残っていた岩上に移動して、輪になることができた。
やがて、初めはとても大きかったはずの岩は、全員乗っているのがやっとなほどの、小さな岩になってしまった。
「おお、おお。なんと気の毒な人間どもよ」
はるか上空にいるゾルディーネが、自分で攻撃しておきながら、あたかも同情をしているフリをして言った。
「もうそれで終わりなのか?」
ゾルディーネは、そう言いながら、残念そうに肩をすぼめた。
そしてわざとらしく、額に手を当てると、
「お前たち自慢の、持ち前の運も、これまでと言うわけか」と言った。
「つまらない。本当に、実につまらない」
ゾルディーネは同じ体勢のまま、首を左右に、大げさに振った。
「もっと俺を、身も心も震わせるくらいに、楽しませてくれてもよかったのではないか?」
そうやって一方的に、話を止めることのないゾルディーネ。ゾルディーネは、いつだってそうだ。人の話に興味がない。自分のことだけを考える。本当に悲しきかな、ゾルディーネと言うのは、そういう生き物だ。
そんな自分勝手な怪物、ゾルディーネは、
「まあ仕方ない。それしか楽しませることができないのなら、生かしていても意味がない。さっさと始末することにしよう」と、最終的に、そう結論を出したようだった。
同じ時、恐怖で体が凍ったように動かなくなっていたラズたちは、これまで以上に警戒した顔をして、輪になり身を寄せ合いながら、ゾルディーネを見上げていた。
ところがゾルディーネは、恐怖でいっぱいのラズたちにもお構いなしに、おぞましくにやりと笑うと、
「さあ、これで終わりだ」と、緑色の唾液を、ネチャリと、吐き気を感じるほどに、薄気味悪く滴らせながら、そう言った。
それを聞いたみんなは、どんどん崩れていく岩に追い詰められながら、すぐに、リドの指示通りに動いた。けれども、動きが少しばかり遅くて、リドが、
「急げ! ゆっくりしている暇なんてないぞ!」と、手厳しく、みんなを叱った。
ラズたちはそれから、遅くとも、全員が落ちることなく、無事に、まだわずかに残っていた岩上に移動して、輪になることができた。
やがて、初めはとても大きかったはずの岩は、全員乗っているのがやっとなほどの、小さな岩になってしまった。
「おお、おお。なんと気の毒な人間どもよ」
はるか上空にいるゾルディーネが、自分で攻撃しておきながら、あたかも同情をしているフリをして言った。
「もうそれで終わりなのか?」
ゾルディーネは、そう言いながら、残念そうに肩をすぼめた。
そしてわざとらしく、額に手を当てると、
「お前たち自慢の、持ち前の運も、これまでと言うわけか」と言った。
「つまらない。本当に、実につまらない」
ゾルディーネは同じ体勢のまま、首を左右に、大げさに振った。
「もっと俺を、身も心も震わせるくらいに、楽しませてくれてもよかったのではないか?」
そうやって一方的に、話を止めることのないゾルディーネ。ゾルディーネは、いつだってそうだ。人の話に興味がない。自分のことだけを考える。本当に悲しきかな、ゾルディーネと言うのは、そういう生き物だ。
そんな自分勝手な怪物、ゾルディーネは、
「まあ仕方ない。それしか楽しませることができないのなら、生かしていても意味がない。さっさと始末することにしよう」と、最終的に、そう結論を出したようだった。
同じ時、恐怖で体が凍ったように動かなくなっていたラズたちは、これまで以上に警戒した顔をして、輪になり身を寄せ合いながら、ゾルディーネを見上げていた。
ところがゾルディーネは、恐怖でいっぱいのラズたちにもお構いなしに、おぞましくにやりと笑うと、
「さあ、これで終わりだ」と、緑色の唾液を、ネチャリと、吐き気を感じるほどに、薄気味悪く滴らせながら、そう言った。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる