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1 迷い込んだ少女
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「ごめん、あとで明日の時間割、ラインで送っておいてくれない? 写真撮るの忘れちゃって」
両手を合わせて唇をしまい込み、上目づかいになりながら乙葉が言った。この乙葉の唇をしまい込む動作は、京一になにかをお願いする時に、必ずやってしまう癖なのだ。
「またかよ……」
京一がわかりやすく、顔をしかめた。
「お前、これで何回目だ? 一年生の時からずっとじゃねーか。俺にばっかり頼ってないで、少しは自分で時間割を把握できるようになれよな」
「えへへ。京一が送ってくれるって思ったらつい、写真撮るのも、まあいっかってなっちゃうのよね」
頭に片手を置き、悪びれもせず笑っていう乙葉に、京一は心底呆れたように乙葉を見た。
「俺、来年こそはお前と別のクラスになることを祈るわ」
「まあ、ひどい」
ふくれっ面になった乙葉が言った。
「そんなこといわなくてもいいじゃない」
「そう思うんだったら、これからはもう俺に二度と、時間割なんて聞いてくんなよな」
全ての商品をスキャンし終えると、京一は袋詰めし始めた。
それから乙葉がなにか言い返してくると思っていたのか、京一はいぶかしそうに、なにもいってくることがない乙葉を見た。すると、当の乙葉は急にしょぼくれて、悲しそうな目を床に向けていた。
「あー、もう、わかったわかった」
観念したように京一が言った。
「送ればいいんだろ? ったく、本当に世話がやける」
結局、京一は毎回このパターンで、乙葉のことを許してしまうのだ。優しいのか甘いのかよくわからないが、乙葉にとっては、この上ない喜びであった。
「おわびに今度、アイス一本でもおごるから、許してよ」
「アイス一本だ? うそつけ」
袋詰めをしながら、京一は冷めた目で言った。
「おごるとか言っても、どうせまた俺が出すはめになるんだろうよ。だからもう期待しない」
「ちがうわ、今回は本当よー。だから、ねえ、京一は何味のアイスが食べたい?」
両手を合わせて唇をしまい込み、上目づかいになりながら乙葉が言った。この乙葉の唇をしまい込む動作は、京一になにかをお願いする時に、必ずやってしまう癖なのだ。
「またかよ……」
京一がわかりやすく、顔をしかめた。
「お前、これで何回目だ? 一年生の時からずっとじゃねーか。俺にばっかり頼ってないで、少しは自分で時間割を把握できるようになれよな」
「えへへ。京一が送ってくれるって思ったらつい、写真撮るのも、まあいっかってなっちゃうのよね」
頭に片手を置き、悪びれもせず笑っていう乙葉に、京一は心底呆れたように乙葉を見た。
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それから乙葉がなにか言い返してくると思っていたのか、京一はいぶかしそうに、なにもいってくることがない乙葉を見た。すると、当の乙葉は急にしょぼくれて、悲しそうな目を床に向けていた。
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「ちがうわ、今回は本当よー。だから、ねえ、京一は何味のアイスが食べたい?」
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