混沌の赤い薔薇

猫町氷柱

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第一章 異物殲滅部隊

2.亡命の要塞本部ラグナローム

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「お、お止めください。FEU長官ともあろう方が私のためにそんな……あれは私にも非があります。私の実力不足、相手の力量を図り間違えたことも敗北の要因なのですから」
 私は悔しさを改めて痛感し、唇を噛んだ。
「だが、私の気が収まらない。しばらくこうさせてくれ」
 しばらくそのままの空気が続き、ようやく話が進んだ。
「すまないね。さて本題に入ろうか。今回、君のおかげで生存者は無事全員救助された。本当に礼を言おう、ありがとう」
 長官は優しく微笑んだ。
「そして、今回の最大の問題がSSSランクを超える上位種の突然の出現にある。君の片割れの機械獣の記憶チップに保存されていた記憶を辿るに今までにない危険な個体であると言える。自我を持ち、ゼノクリスタルを己の意思で取り込んでいるように見える。そして君の機械獣を破壊した青き光だがあれはゼノクリスタルの中に満たされているイデアの放出に他ならない。限界まで圧縮しているため高速の斬撃となったわけだ」
 あの青マントの少年の見解について述べる長官。ゼノクリスタルの内部エネルギーまで自在に操れるとなるとかなりの脅威になることは間違いないだろう。それに見た目もツノのようなものがある点以外はさして人間と変わらない。
 生けるロボット、アンドロイドのようなその見た目は人間社会に溶けやすくもしかしたらあの個体以外にも同様の個体が既にばら撒かれている可能性がある。
 特にあの忌まわしきターミナルに巣くう赤き薔薇……その美しさとは裏腹にとんでもない毒牙を呼び起こしたものだ。必ずあそこにはあの個体と同様のものがいると私の脳が告げていた。所謂、勘というやつだけれども。つまりあの子を倒せないようであればこれから先、希望はない。
「君も分かっていると思うが今のイデアフォースの出力では太刀打ち出来てもSランク止まりだろう。それより上の相手であっても戦えるだけの出力を得る
必要がある。まずはその機械獣を直す、素材集めに行ってもらうのが先決だろうね。その場所はダストロッド、機械廃棄場だ」
 長官は真剣な赴きで話した。
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